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「グルグルグルグル」
僕は、人間に対して威嚇をする。喉の奥から全力で音を出す。
これで人間も逃げる筈だ。
きなこは僕が守るんだ!
「はぁ。本当に嫌だ。大好きだったわんちゃんには嫌われ、吠えられ、最終的には私が殺さないといけない。もう死にたい......」
......? この人間からも〝死〟の匂いがする。
僕はこの人間の足に体を擦り付けて、頭をこてんと預ける。
僕は何でこんな事をしたんだろう? でも、よく分からないけど放っておけない感じだった。
「よしよし。可愛い子だねぇ? 良い里親が出来るといいわね?」
むむむ、人間が撫でてきた。僕のお目目がとろーんと垂れてきて、なんか心地いいし、喉から「クゥーン」と鳴った。
何て言ってるのか分からないけどこのお姉さんは優しい感じだ。
でも、それは僕の間違いだった。
この女の人間はきなこをいつもの檻よりも更に小さい箱に入れて連れ去った!
やっぱり人間は信用出来ない。
きなこを返せ! きなこが寝ている間に連れ去るとは卑怯者!
僕はきなこを取り返すために全力で走り出す。
待ってろ!
僕が助けてやっ「キュウン!」
ゲホンゲホン......人間め、僕の首を鎖で繋げるなんて卑怯だ! 僕、僕の唯一の家族の様な仲間なんだ! 絶対に取られない!
あの人間の女が戻ってくる。
僕は全身の毛を逆立て「グルルルル」と威嚇した。
威嚇の効果があったのか、人間の女は立ち止まった。
そこで、人間の女はハッとした顔でこう言ってきた。
「あー! さっきの子君のお友達? ならごめんね今すぐ連れてくからね!」
......? この人間は何を言ってるんだろう? ずっと好意的な匂いが消えない。勿論、〝死の匂い〟もだけど。
後、どこが懐かしい匂いがする気がするんだよな......?
僕が立ち止まって考えていると、この人間は僕の鎖を括っている所に行って、それを取った。
む、なんだと! この人間、この僕を立ち止まらせるなんて! もしかして、威嚇の名手なのか?
僕が女の人間の強さに感動していると、人間は鎖を持って「散歩だよ。おいで?」と言ってきた。
さ、散歩!! なんだその楽しげな言葉の並びは!!
どこが聞き覚えがある気がする。なんか、最近こんな事が多いな......なんだろう?
どうやらきなこの所に連れて行ってくれる様だ! きなこの匂いが段々近づいてくるから間違い無い!
僕はきなこの所に行けるという安心感と、散歩という言葉の魅力で尻尾をピーンと立ててふりふりする。
僕は変な箱に4つの丸いのが付いてる物から飛び降り、芝生にダイブした。
でも、人間はつくづく変な物を作るな。
しかも、わざわざ美味しい空気を汚して気持ちいい芝生を無くすんだ。意味が分からない。
僕は人間はここに侵略しに来たおバカさんだと思う。
僕は女の人間の横に立ち、歩きに合わせて付いて行く。
でも、僕はその場で止まってしまった。目の前には驚きの光景が広がっていた。
82902。
君はこれがなんの数だ分かりますか。