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嫌だよ!!
ねぇ、君。教えてよ。
僕が何か悪い事をした?
寄り添うきなこの体温が僕に伝わってくる。体温が上がってる。きなこも同じ事を思ってるんだ。きっと。
そうだよ、君。分かってよ。
僕にだって心があるんだ。
考えてみてよ。君。
心が無かったらああやって鳴かないだろう? それに、舐めたり、擦り寄ったりしないだろう?
────人間が檻を開ける音がガチャガチャと響く。
ああ、終わりだ。
どうせこの世にはハッピーエンドなんて無いんだ。
全てが終わるんだ。
元々、これが僕の運命だったんだ。そうだよ。何も悲しくなんてない。
僕は最期に相棒と別れを告げようときなこの方を見る。
あれっ? おかしいな。お目目からいっぱいお水が出てきてちゃんときなこの事を見れないよ。
でも、まぁいいか。
くっついてるから、きなこの温もりは伝わってくる。
僕達はお互い、あと少しで失われるであろう体温で温め合う。
見つめ合い、そして僕は伝えた。
『今までありがとう。僕の大切な相棒さん。』
と。
僕はきなこが大好きだった。子犬の時からずっと一緒に暮らしていた。
きなこは甘えん坊で、どこに行く時も僕の後ろにちょこちょこと着いてきていた。
2人で色んな場所を探検しに行ったりもした。
お花が沢山ある場所。
大きなお山。
草むらに、一緒に狭い筒に入って遊んだ事もあった。
家では良くご主人様に撫でて......ん? ご主人様?
そんな人居たっけ? まぁ、良いや。
ここに来てからも、2人で支え合って生きてきた。
怖くても、2人で話してなんとか誤魔化した。
寒くても、寄り添いあって温めあった。
でも、まぁ。きなこと死ねるならそれでも良いのかも知れないな。死にたくは無いけどこの檻での生活からは解放されるし。
ん? きなこ、どうしたの?
きなこが急に顔をスリスリしてきた。そして僕に一言こう伝えた。
『あずき。大好きだよ。今まで一緒に居られて幸せだった。死んでもずっと、』
と。
この、きなこの言葉のも死んだら忘れてしまうと思うと悲しくなってくる。
────とうとう檻が開き、人間が入ってくる。
とうとう、お別れか。
短く、あっという間なお別れだったね。
君とも、きなことも、ね?
僕は、薄れゆく意識の中でこう呟いた。
『これは君のせいだよ?』と。
そこで、僕の視界は暗転した。
ふふふ。僕は君を許さないよ?
気付かないのも罪なんだ。