broken lights
「う…………あ」
目を覚ませば全身に酷い痛みが走る。
辺りを見渡せば一面に続く焦土といまだ燃え続ける木々の姿。
体を起こせば、手にぬるりとした感触があった。
見遣れば赤い液体だ。
それで完全に意識が覚醒する。
自分の身体からの出血ではない。
なら……?
下のほうに目を落としてレイは心臓を鷲掴みにされた様な気がした。
そこに転がっていたのは、制服の脇腹を紅く染めた茶髪の少女。
同時、背後で何かが爆発するような音。
燃え盛る鋼糸を捨てて、異能で砂鉄を操る赤みを帯びた金髪の少年の姿。
ああそうだ、先輩は。
そう思いかけ、瞬時に思考を切り替える。
今は目の前の問題に的確に対処しなくてはならない。
ここで誰かを失う訳にはいかないから。
「リオン!!そっちは僕がやる。お前はエリナの方どうにかしてくれ!!」
あの人の火力に、立ち回りだけで勝てる訳がない。
そもそもリオンの強みは鋼糸を使って“領域”を構築し相手の異能を完全封鎖出来ることにある。
つまりそれが構築できないのなら互角以上には戦えない。
彼女の異能は自分の上位互換であるが故に自分一人でも何とか出来るかは怪しいが。
隣に倒れる少女は、技術を知らぬ自分では如何にも出来ない。
引き下がったリオンを目がけて降り注ぐ焔を、空気を爆発させて迎え撃ち、同時にホルスターからUSPを抜き打つ。
音速を超える速度で連射された超硬合金製の9㎜パラベラム弾が陽炎を貫き“脅威”の腕へと届いた。
同時に赤く、紅く、朱く、赫い焔の壁が目の前へ迫る。
その焔を操ろうとするが、思考が焦る。
計算に集中できない。
気付けば目の前までソレが迫っていた。
火を扱う異能で事故った事は何度もあるからなんとなく判ったが、焼死までは行かないだろうけれど、重い火傷を負うのは必至だ。
直撃はマズい。
そう思って退こうとした所で、唐突に眼前を鮮烈な蒼が横切った。