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クズはクズらしく  作者: 夕町 迅夜
第三章
30/41

裏切と崩壊

 今から約三年前。

 俺がまだ中学二年生だった頃。

 その頃の俺は実は今のような性格ではなかった。

 今ではクラスではいないも同然の空気でしかない俺だが、中学ではどちらかといえば南谷のような目立っている側の生徒だった。

 べつにグレて不良になっていた訳では無いけれど、少しヤンチャな行動をして生徒指導も何回か受けていたし、今と違って当時の俺は誰とでもすぐに話せるような社交的な性格だったので、昔の俺には友達と呼べる人が何人もいた。

 そして、その中でも四人だけ、親友と言ってもいいレベルで仲の良かった友達がいた。

 男子二人と女子二人。

 小学生の頃からの付き合いで、俺も入れた五人のグループで毎日のように遊んでいた。

 アホなことをやって教師から怒られたこともあったし、青春っぽくみんなで遊園地なんかにも行った。

 あの頃は本当に毎日が楽しかった。

 こんな日常がこれからもずっと続いて欲しいと思っていた。

 けれど、現実はそんなに甘くない。

 現在の俺を見ての通り、そんな願いは呆気なく散ってしまった。

 初めはほんのちょっとしたことがきっかけだった。

 俺も含めたグループの男子三人が喧嘩になったのだ。

 その日は男子だけで集まって話をしていた。

 その話の中で俺以外の二人がちょっとしたことで口論になり、初めは口喧嘩程度だったのだが、次第にヒートアップして、殴り合いの喧嘩になった。

 俺は仲裁に入ろうと間に入ったが、二人とも頭に血が上っていて俺を殴り飛ばした。

 それで俺もキレてしまった。

 最終的には俺も含めた男三人での殴り合いになってしまった。

 三十分ほど殴りあったところで全員怪我を負い、仲直りすることもなく、仲違いをしたままその日は解散になった。

 俺はその時、そこまで喧嘩したことを深く考えてはいなかった。

 三人で喧嘩なんてこれまでもよくしていることだったし、殴り合いもこれが初めてじゃない。

 何度も喧嘩をしてきたけれど、それでもこれまでの七年間、俺たちは仲良くやってきた。

 今回もすぐに仲直りできるものだと思っていた。

 けれど、残念ながらそんなことはなかった。

 次の日。

 学校に行くと、喧嘩した友達の一人が学校を休み、もう一人は左腕を骨折していて、ギプスをはめて腕をつっていた。

 俺が殴ったことで折ったのかは分からないが、喧嘩に参加したのは確かだったので、骨折した友達にはすぐに俺の方から頭を下げて謝った。

 けれど、いつもならそれで許してくれていた友達は俺のことを許してはくれなかった。

 休んだ友達の方は初めは昨日の今日で学校に()ずらくなって休んだだけだと思っていたけれど、それ以降何日経ってもその友達は学校に来ることはなかった。

 友達が学校に来なくなり、自宅に引きこもってから一週間ほど経った頃。

 担任の教師が学校でよく一緒にいた俺たちに「引きこもったことに関して何かなかったか」と聞いてきた。

 今覚えば、これがよくなかった。

 教師のその行動が火種となって、俺と骨折した友達で醜い言い合いが起こった。

 どっちが悪いだの、お前が先にやっただのという責任の擦り付け合い。

 教師のたった一言で俺と友達の関係がさらに悪化した。

 それまでに築いてきた大切な何かがゆっくりと確かに壊れていく音がした。

 しばらく責任の押し付け合いが続き、友人が自宅に引きこもってから二週間ほど経った頃にはとうとうクラス会でその話題が持ち上がってしまった。

 友達が引きこもった理由について何か知っていることはないか、と教師は俺たち生徒全員に問いつめた。

 俺と骨折した友達があの喧嘩によって引きこもったきっかけを作ったのは明らかだったので、俺が手を挙げて名乗り出ようとしたその瞬間。

 俺よりも僅かに先に骨折した友達が席から立ち上がった。

 クラスメイト全員の視線がその友達に向く。

 そして、アイツは言った。

 引きこもった前日に三人で口喧嘩になって、最終的に殴り合いになったことを。

 けれど、アイツは話の中にいくつも嘘を織りまぜた。

 初めに殴りかかったのは俺であると言い、俺が一方的にほかの二人を殴り飛ばしたと言った。

 つまり、俺が一方的に悪いようにクラスメイトと教師に話したのだ。

 もちろん、俺も否定した。

 けれど、俺には喧嘩に入った時点で間違いなく非があり、片方は自宅に引きこもって、もう片方は腕を骨折した重傷を負っている。

 そして、俺が負ったのは数日で治る程度の打撲や擦り傷程度の軽傷だ。

 この状況では俺が喧嘩でやり過ぎたようにしか第三者の目には映らなかった。

 さらに仲の良かった五人グループの女子の一人が事情を詳しく知らないはずなのに骨折した友達を庇うようにして一緒になって俺が全て悪いように言い、責任を押し付けてきた。

 その女子は前から骨折した友達に好意を寄せていたので、それで庇っているのだということはすぐに分かった。

 けれど、どれだけ俺が否定しても二対一だ。

 俺が責任逃れをしようと見苦しい言い訳しているようにしか見えなかったんだろう。

 最終的にそのクラス会で教師は俺が悪いということで結論付け、俺はクラスメイト達の眼前の元、完全に悪者にされた。

 クラス会でそんな事をやったものだから学校中に「春原は他人に暴力を振るって骨折させ、学校に来れないようにする最低な奴だ」という噂が瞬く間に広がってしまった。

 噂が広がる過程で色々と尾ひれがついてはいたが、とにかく俺はこの一件で『クズ』のレッテルを貼られることになった。

 俺だけがそのクラス会で吊るし上げられた。

 俺だけが加害者になって、俺と喧嘩をしたほかの二人は完全に被害者の立場になった。

 お互いに殴り合って俺だって少なからず怪我をしている。

 俺だけが吊るし上げられるのはおかしい。

 そんなことを思ったが、俺の話を聞いてくれる人は誰もいなかった。

 俺だけが悪者になった。

 俺だけが何人もの教師に叱られた。

 俺だけが『クズ』のレッテルを貼られた。

 なんだ……これは……。

 なんで仲裁に入ったはずの俺がこんなことになってる。

 俺には理解ができなかった。

 でも、この時の俺はまだ分かっていなかった。

 本当の地獄が始まるのはこれからだということを――。

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