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クズはクズらしく  作者: 夕町 迅夜
第二章
18/41

氷菓と差異

 行列に並び始めてから約三十分後。

 ようやく目の前の列がなくなり、前に並んでいるのはあと一組だけになった。

 目の前の列がなくなった代わりに今では俺達の後ろに行列が出来上がっている。


「パフェ以外にも色々あるみたいだけど、どうする?」


 店の上の方にかかっている看板を見ると、例のパフェの写真がデカデカと載っているが、他にもクレープやフルーツ系のジュースなど、どれも女子ウケが良さそうな甘いデザートが載っている。


「俺はいい」


「じゃあ、パフェだけね」


「いや、パフェもいらない」


「えっ、それってもしかしてなにも頼まないってこと?」


「そう」


「本気?ここまで並んだんだし、せっかくだから何か食べなよ」


「言ってなかったけど、俺甘いもの苦手なんだよ」


「そうなの!?」


 俺は実は昔から甘いものが苦手だ。

 だから、この列に並んでいる時も初めから何かを買うつもりなんてなかったし、パフェなんて食べたいとは微塵も思っていなかった。


「じゃあ、なんで並んだの……」


「いや、お前が食べたいって言って並ばせたからでしょ……」


 この列に並んだのは如月が食べたいと言ったからだ。

 特にやりたいこともない俺はただそれに付き合っただけである。

 そんなことを思っていると、俺達の前で注文をしていた客が商品を手に持って横に退()いた。


「ほら、番が回ってきたぞ」


 俺は如月に注文をするように促す。


「んー、じゃあ、悪いけどわたしだけ頼むね」


 後ろに人が並んでいるので揉めている訳には行かず、如月は俺を説得するのを諦めた。

 俺は肩にかけていたボディバッグを手に持って中身を漁る。


「何か探し物?」


 横で注文し終わった如月が聞いてくる。

 俺は返事の代わりにバッグの中から財布を取り出した。


「お金は俺が出す」


「えっ!そんなのべつにいいよ!」


 手を目の前でブンブンと振って断ってくる。


「さっきは忘れてたけど、母さんからお金渡されてるんだよ。女の子にお金を出させるなってさ」


 昼食の時には回転ブランコの気持ち悪さのせいで忘れていたが、俺は出かける前に母さんから三万円ものお金を渡されていた。

 女の子にお金を出させるなというのはいささか古い考えなんじゃないかとも思ったが、母さんが無理矢理渡してきたので、現在俺の財布には元から入れていた二万ほども合わせて合計五万円近くのお金が入っている。

 さすがに使わない訳にはいかない。


「でも……」


「あとから奢らなかったことが母さんにバレたら俺が怒られることになるんだから奢らせてくれ」


 このまま如月を説得していても如月が奢られることに納得するとは思えなかったので、財布からお札を一枚取り出して店員に渡した。


「あっ!」


 如月は不意をつかれたことに声を上げ、奢られたことがやはり納得いかないのか少しムッとしている。


「じゃあ、今度代わりに何かお礼するね」


「お礼はいい。俺の金じゃないし」


「だったら尚更だよ。健一くんのお母さんにも悪いし」


「素直に奢られてた方が母さんも喜ぶと思うけどな」


「じゃあ、今日は奢られる。だけど、次に遊んだ時は同じくらい私が奢るよ」


「……」


 俺はその言葉に黙ってしまった。


「ん?どうしたの?」


 如月は急に黙った俺の顔を覗き込むようにして見てくる。


「いや、なんでもない」


 顔を背けて誤魔化すと、ちょうどその時、注文した名物パフェが出来上がり、如月に手渡された。

 会話はそのままうやむやに終わった。





 俺達は如月がパフェを食べるために近くにあったテーブルに向かい合って座った。


「でかいな……」


 如月の言っていた名物のパフェは写真で見て想像していたよりも豪勢にフルーツやアイスなどが盛られていてかなりの大きさがあるキングサイズだった。

 こんなのを食べたらまた気持ち悪くなること間違いなしだったので、頼まなくてよかったと心底思う。


「そんなに食えるのか?」


「確かにちょっと大きいけど、これくらいなら大丈夫」


 さっき昼食を食べたばかりなのにもうこんなに食べられるのか……。

 その体のどこにそんなに入るんだと思い、パフェをパフェ用の長いスプーンでつつきながら黙々と食べている如月を眺めていると、何を思ったのか如月は食べる手を止めた。


「もしかして、味見してみたい?やっぱり少し食べる?」


 どうやら、彼女には俺がパフェを食べたそうにしているように見えたらしい。

 スプーンにパフェを一口分乗せてこちらに差し出してくる。


「いや、いい。べつに欲しくて見てたわけじゃないし、さっき苦手だって言っただろ」


「そう?美味しいのにもったいない」


 如月は差し出していたスプーンに乗っているパフェを自分でパクリと食べた。

 そして、また黙々と口にパフェを次々と放り込んでいく。

 なぜこの子はさっきのペットボトルのお茶もそうだが、自分が口をつけたものをすぐに人にあげようとするんだろうか……。

 女子同士ならいいと思うが、南谷なんかにも同じような接し方をしているのだとしたら、アイツも大変だな……。

 俺はそんなことを考えながら、如月の食べている様子をじっと見ていた。


「……なに?そんなに見られるとさすがに食べにくいんだけど……」


「べつになんでもない。暇だから見てるだけだ」


「食べ終わるまでスマホでゲームとかしてていいからそんなに見ないでよ」


「ゲームなんてしてない」


「じゃあ、SNSの投稿でも見てて」


「やってない」


 俺はアプリゲームは昔からハマることが出来ないのでやっていないし、SNSも如月と交換したアプリくらいしか入ってない。

 あのSNSアプリは基本的に登録している人と連絡を取り合うものだし、一応タイムラインという機能で友達登録している人の投稿なんかは見れるらしいのだが、俺の場合は友達登録している人がほとんどいないも同然なのでその役割を全く果たしていない。


「……じゃあ、普段何してるの?」


「べつにゲームとSNSが全てじゃないだろ……」


 如月に素で訳が分からないと言いたげな白い目で見られた。

 今の高校生はゲームとSNS以外にはなにもやっていないのか……?

 自分も高校生だが、関わりがなさすぎて普通の高校生がやっていることがわからない。


「読書とかテレビ見たりとか勉強するとか他にも色々ある」


「なんか、現代っ子って感じしないね」


「……」


 確かに……。

 こんなの昭和の時代でもやっていそうだ。

 少しだけショックを受けた。


「とにかく、食べてるところ見ないでよ?」


「わかったわかった」


 俺はやることもなかったので、ちょくちょく如月との雑談もしながら、仕方なくスマートフォンでネットニュースでも読み漁って暇を潰した。

 俺、遊園地で何やってるんだろ……。

 遊園地に来てネットニュースを読み漁っている変人なんて他にいるのだろうか……。

 俺はなんだか虚しくなってきたので考えるのをやめてひたすらニュースを読んだ。

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