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クズはクズらしく  作者: 夕町 迅夜
第二章
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行列と雑談

 俺たちはパラソル付きのテーブルで昼食も兼ねつつ適当に休憩したあと、とある行列の最後尾に並んでいた。

 自分たちの前には二十組くらいの人達が並んでいる。


「これ、なんの列だよ」


 俺は如月に引っ張られてこの行列に並ばされたので、なんの列なのかも分からずに並んでいた。


「これだよ」


 そう言って、如月は俺にスマートフォンの画面を見せてくる。

 画面に表示されていたのはこの遊園地の公式サイトのようだが、なぜか遊園地なのにパフェの写真がデカデカと載せられている。

 フルーツやアイスクリームがこれでもかという程盛られている豪勢なパフェだ。


「このパフェか?」


「そう。この遊園地の名物なんだって。結構、流行ってるらしいよ?」


「へー」


 改めて列に並んでいる人達を見ると、女性比率がかなり高い。

 男で並んでいるのなんてカップルか何人かの集団で来ている人くらいだ。

 やはり、女の人というのはパフェとかクレープとかタピオカティーとかマカロンとかそういう片仮名でなんとなくオシャレそうな雰囲気のある甘いものが好きな人が多いのだろうか。

 正直なところ、わざわざ食べ物の為だけにここまで並ぶのは俺みたいな人間には理解できないが、こんな行列に並んでまで流行りのものを食べてみたいと思うものなのだろうか。


「遊園地ってほとんど並んでばっかりだよねー」


「そうだな」


 待ち時間が暇なのか、如月の方から話しかけてくる。

 確かにここのように比較的人気のある遊園地だと、アトラクションひとつ乗るだけで何時間も待たされることになる。

 遊園地なんてわざわざ行列に並びに来ているんじゃないかと思えてくるほどだ。

 そういえば、前に初デートで遊園地に来ると待ち時間が長すぎて話すことがなくなるから別れるというネット記事を見たことがある。

 本来、楽しむはずの場所で周囲はワイワイと騒いでいるのに、その中で無言の気まずい空気で列に並んでいる二人の姿を想像すると、これ以上ないほどに気まずい地獄絵図だった。

 もしかしたら本当にそういう人達がいるんじゃないだろうか?

 そんなことを思った俺は暇つぶしがてらに周囲を見渡してそういう人達を探してみた。


「なにしてるの?」


 隣に並んでいる如月が聞いてくる。

 頭をキョロキョロとさせていたので気になったのだろう。


「人探し」


「ふーん。美人な人でも見つかった?」


 顔をニヤニヤとさせながら聞いてくる。


「残念ながら見つからないな」


「え……」


 その冗談に乗って返事を返すと、あからさまにひかれた反応をされた。


「遊園地で美人を探してるって健一くんって実はプレイボーイ……」


 如月は軽蔑するような目をしながら俺から物理的にも身をひく。


「違うからな?そもそもそんなの探してないし」


 如月のその反応がわざとやっているものだというのはすぐに分かったので、めんどくさいと思ながらも否定する。


「じゃあ、何を探してたの?」


「……気まずそうに列に並んでるカップル、とか……」


「性格悪すぎでしょ……」


 如月はまたひくような反応をした。

 今回はどうやら冗談などではなく、素でひかれているらしい。


「遊園地でそんなの探してるの健一くんくらいだと思うよ?」


「いいんだよ。俺が性格悪いのは今更だろ」


「まあね」


 如月とは約ひと月ほどの短い間柄でしかないが、少しはお互いのことも分かってきている。

 俺の性格が悪いのなんて、あの病院で出会った時に如月を待たずに家に帰った時から分かっているはずだ。

 もし、分かっていないのなら相当見る目がない。


「でも、健一くんが女の人を探してるんじゃなくてよかったよ」


「なんで?」


「だって、一応にもキミは今同じクラスの女の子と二人で遊園地に遊びにきてるんだよ?それなのにわたし放ったらかしで美人探しなんてしてたら、さすがのわたしでも怒るよ」


 そう言って、怒ったふうに腕を組んでムスッとした顔を背けた。

 俺が見る限り、今日の如月はいつもより化粧がきめ細かいし、服もオシャレをしているように見える。

 そこからなんとなく察するにここまでおめかししているのに横で美人探しをされたら癪に障るということだろうか。


「如月はそこそこ美人だからそんなに心配しなくてもいいと思うけどな」


「へっ……?」


 如月は照れると言うよりも先に驚いた様子でこちらを見てくる。

 徐々に恥ずかしくなってきたのか顔が次第に

 赤く染まっていく。


「アホ、お世辞だ」


「なっ……!」


 そう言うと、顔の赤さが一気に引いていき、不機嫌そうにまた呆れた顔をした。

 表情がコロコロと変わっていくのが、少しだけ面白い。


「最低だね」


「それも今更だ」


「健一くんってお世辞とか言えたんだね」


「またバカにしてるのか?」


「違うよ。健一くんってわたしに暴言とか普通に吐いてくるでしょ?そういうの言わない人なのかと思ってた」


「嘘とかお世辞なんて誰だってつくだろ。あと、暴言を吐くのは如月くらいだ」


「それは他に話せる相手がいないからでしょ」


「……確かに」


 少し癪だが、その回答に自分のことながらしっくりきてしまった。

 俺達はそんな他愛もない話をしながら前の列がなくなるまで時間を潰した。

 余談だが、あまりに暇だったので知りとりなんかもしたのだが、普段から本を読んでいるおかげもあってか、語彙力の差で俺の圧勝だった。

 少しだけ気分がよかった。

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