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クズはクズらしく  作者: 夕町 迅夜
第二章
14/41

約束と静謐

 

 噂が流れ始めてから約三週間が経った。

 南谷に続き、あれから数人の男女が噂について俺に尋ねてきた。

 中には他クラスからわざわざ聞きに来た生徒もいて、そこまで大きな噂になっているのかと驚かされたが、俺はその全員に南谷と同じように誤解だとわざわざ説明し、如月に迷惑だからという名目の元、俺の考えた嘘の説明を広げてもらった。

 そのおかげもあったからか、例の噂はこの三週間で完全に落ち着き、俺のクラス内での存在も空気同然に戻っていた。

 後期中間テストなんてイベントも重なっていたので、みんな噂どころではなくなったのだろう。

 それにしても来た人全員に同じ説明を何度もするのは本当に大変だった。

 普段人と話していなくて、周りからすれば話しかけずらいであろう俺でこれなのだから、普段から社交的な如月の方はおそらくもっと大変な目にあっているのだろう。

 まあ、そんなこんなで俺の学校生活は完全に元の落ち着きを取り戻していた。

 ただ、それはある一点を除けばの話ではあるのだが……。


「おはよう!」


「……」


「お・は・よ・う!」


「……はよ」


 如月だ。

 噂が落ち着いたということはつまりこうなる。

 クラスメイトたちの結論としては俺と如月はただの友達だという認識に落ち着いたらしく、こうして教室で話していても何か言ってくることはなくなった。

 いろんな人に話しかけられるのはもちろん地獄なので噂が落ち着いてよかったとは心底思っているが、俺からしたらこうして如月につきまとわれるのも同じくらいの地獄だ。

 憂鬱さでいえば大して変わらない気がしていた。


「いい加減、挨拶くらい素直に返したら?」


「挨拶してくれなんて頼んでないんだけどな……」


「そもそも頼んでするような事じゃないでしょ……」


 如月は俺の反応にいつもの如く呆れていた。

 まあ、如月に呆れられてもなんとも思わないのでべつにいいのだが。


「で、なにか用なの?」


「用がないと話しかけちゃダメなの?」


「ダメに決まってるだろ」


「決まってるんだ!?」


 強制的にではあるが、如月とこうして話すようになってから約一ヶ月が経った。

 俺の中でこんなどうでもいい会話が次第に当たり前になってきてしまっている。

 これは母さんやこの如月からすればいい変化なのかもしれない。

 けれど、俺にとっては……。


「あ……」


 そういえば、母さんで思い出した。


「どうかしたの?」


「いや……近いうちに空いてる日あるか?」


「基本いつでも空けられるけど……なに?デートにでも誘ってくれるの?」


「じゃあ、次の土曜に家に来てくれるか?」


「まさかの家!?」


「……言っておくが、母さんにあって欲しいだけだからな?」


「親御さんにご挨拶まで!?」


「いい加減にしろ……そんなわけないだろ……」


「冗談だって。分かってるよ」


 そう言って、彼女はふざけた様子でケラケラと笑った。

 三週間ぶりに直接話しても相変わらずだな。


「でも、いきなりどうしたの?」


「母さんがキミに会いたいんだってさ。色々話したいんだと」


 そう答えると、如月の顔が少し歪んだ。

 苦虫を噛み潰したような複雑な表情だ。


「やっぱり、マザコンかぁ……」


「誰がマザコンだ」


 いきなり突拍子もないことを言ってきたので、思わず俺も反射的に突っ込んでしまった。


「だって、お母さんのお願いで普段は関わりたくないと思ってるわたしにわざわざ頼んで家に来てもらおうとしてるんでしょ?完全にマザコンじゃん。お母さん大好きっ子じゃん」


 少し馬鹿にした口調で早口でまくし立ててくる。


「マザコンでは絶対にない。俺はただ親孝行をしたいだけだ」


「親孝行?」


「まあ、とにかく家に来てくれ」


 色々聞かれると面倒なので会話を無理やり切って話を元に戻す。


「待ち合わせはなしで、直接家に来てくれればいいから」


 待ち合わせなんてして、そこを学校の誰かに見られでもしたら、休日に二人出会ってたなんて言われて、また色々と面倒なことになる。

 ようやく噂が落ち着いたのに再燃させたら元も子もない。


「分かったよ。今週の土曜日ね。昼頃行けばいい?」


「ああ、よろしく頼む」


 如月はスマートフォンを取り出して、忘れないようにアプリのメモ帳機能に今の約束事をメモをしていた。

 ちょうど如月に頼み終えた、その時のだった。

 如月の背後からこちらに向かってくる一人の生徒が目に入る。


「おはよう、真冬」


「あっ、おはよう。南谷くん」


 このクラスの優男こと、南谷だ。

 こいつ、毎回登場の仕方が同じだな……。

 いつも如月に挨拶をしている気がする。

 そんなことを思っていたが、今回は少しだけ違った。


「春原くんもおはよう」


 俺にも爽やか気な笑顔を向けてくる。


「ああ、おはよう」


「ちょっと!?」


 俺が南谷に挨拶を返すと如月が驚いたような声を上げた。


「なんで南谷くんには素直に挨拶するの!?わたしにはしてくれないのに!」


「いや、お前がさっき挨拶くらいは素直に返せって言ったんだろ」


「え?いや、確かに……そうなんだけどさぁ……」


 如月はなんか納得できないと言いたげな様子で歯切れが悪そうにしていた。

 南谷は噂のことで話したあの日からやけに俺に話しかけてくるようになった。

 初めは適当に流そうと思っていたが、この優男も如月同様になぜかしつこく俺に絡んできたので、けっきょく如月と同様に俺が折れることになったのだ。

 噂を落ちつけるのにするのに協力してくれたこともあり、無下な態度も取れなかった。


「二人は仲良しだね」


「一方的にこれがやかましいだけだよ」


「これって言うなし!」


「ははっ」


 南谷は言い合いをしている俺と如月を見て笑っていた。

 俺と如月がもめて、南谷がそれを笑いながら見ている。

 今のこんな状況をどこか平和だと感じてしまっている自分が少しだけだが確かにいるのを感じた。


ちょっとリアルが忙しくなってきたので次回から3話ほどは5日間隔であげさせていただきます


何卒、よろしくお願い致しますm(_ _)m

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