【短編版】うちのモフモフこそが最強!
深夜3時くらいに目を覚まして、そのまま思いつきと勢い10割で書き上げた小説。
いろんな意味で荒削りですがどうかお付き合いください。
なお、主人公のキャラクター名が出てきていないのは故意です。
書き忘れたとか未設定だとかではありません。
(予定ではキョウヤ=プレイバード)
それではお読みください。
今より科学技術が進んだ近未来。
ARやVRが当たり前のように使われているその時代では、ゲームの分野でもそのような技術がフル活用されていた。
小鳥遊 響はそんな時代に暮らしている一般的な学生さん。
この春からはそこそこ以上の学力を持つ高校への進学も決まっている。
ボクは中学校の卒業式も終え、一人暇をしていると2つ下の妹に声をかけられる。
何でも、この春から正式スタートする新規VRMMOに参加するらしいのだ。
そんな話をなぜ、姉であるボクに話しかけてきたかというと、もし興味があるなら一緒にプレイしてみないかということだって。
でも、残念ながら、ボクはそのVRMMOに興味はなかった。
なぜならふんわりモフモフという至高の存在が、今の時点では実装されていないからだ!!
しかも、家ではモフモフを飼うことができないという現実の壁。
親友と言うべき友達の家ではモフモフを堪能させてもらえてるけど、やっぱり家でもモフモフは堪能したい!!
でも、妹にVRゲームに誘われたときにボクは気がついてしまった。
VRゲームでモフモフを堪能するなら家でもモフモフを堪能できることに。
VRでペットを飼うなら誰にも迷惑をかけないもんね!!
そんなわけで、妹のお誘いから数日、ボクの部屋にもVRゲームができる環境が整ったわけです。
プレイするVRゲームは、妹が始めるゲームとはやっぱり違って『infini fantaisie』と言うサービス開始から数年経っている中堅どころのVRMMO。
このゲームの特徴は、職業をサマナーかテイマーにした場合にのみ最初からお供と言うべき召喚獣や従魔を手に入れられることなのよ。
そしてボクのお目当ては課金で手に入るワンコ『ライトニングシーズー』!!
この子のフワフワの毛並みに誘惑されてこのゲームを始めようと思ったと言っても過言ではない!!
というか、それこそが全ての動機だし!!
早速、VR機器をパソコンにつないで『infini fantaisie』をダウンロードする。
ダウンロードが終わるまでは1時間ちょっとはかかる予定っぽいから、その間に色々と調べなきゃ。
勢い任せに昨日VRセットをまとめて購入したくらいなので、あまり詳しいことは調べていないんだよね。
なお予算は進学祝いという事でおじいちゃんが出してくれた。
おじいちゃん、太っ腹!!
でも、実際のところ、おじいちゃんは妹にもVRセットをプレゼントしてるからボクにも渡す機会を探ってたみたいなんだよね。
最初からそう言ってくれたら普通に受け取ったのに。
閑話休題。
まずは最初に下調べしていた事の再チェック。
使役系職業と呼ばれる『サマナー』と『テイマー』はパートナーと一緒に戦うことができる。
パートナーは1匹目はパーティメンバーにカウントされないけど、2匹目以降はパーティメンバーの1人としてカウントされるらしい。
ボクはあまり冒険するつもりはないし、この辺は適当に覚えておけばいいかな。
それから、こっちは大事なんだけど事前に調べていたとおり、召喚獣を扱う『サマナー』と従魔を扱う『テイマー』はゲーム開始時に最初の相棒、つまりパートナーをプレゼントされるんだって。
このとき渡されるパートナーは、基本的にゲーム序盤で仲間にできるモンスターから選ぶか、ランダムエッグと言って何がでるかはわからないけど運が良ければ強いパートナーを入手できるものにするかを選べるんだって。
その他にも通常では選べないパートナーをいきなり入手する方法は存在してるけどね。
それが先程紹介した課金によるパートナーの入手!
ゲームスタート時から課金を要求されるのは、まだ高校生にもなっていないボクには痛手だけどそうも言ってられない。
なにせ、ボクのお目当てである『ライトニングシーズー』はフワフワの毛並みを持った最上のモフモフなんだから!
お値段、3,000円はちょっと厳しいけど、お小遣いはため込んでるしこの程度の課金だったらよゆーよゆー。
ちなみに、この『ライトニングシーズー』だけど、戦闘力は現在では微妙な子として認識されてしまっているらしい。
何でもこの子は、雷属性の中級魔法しか最初は覚えておらず、物理攻撃力はその見た目通りにささやかなものしかない。
レベルが低く、MPの少ない間から高火力・高消費の中級魔法しか使えないって言うのはとっても厳しいものがあるとか。
なので、攻略サイトでは『2匹目以降の火力枠としてはそこそこ有効。でも、やっぱり戦闘力は微妙』と評価されてた。
でも、ボクにとって他人の評価なんて関係ない!
ボクはボクの目的であるモフモフ王国を築くために、この子を選ぶんだからね!
他にも色々と調べている間にゲームのダウンロードが終わっていた。
ボクは早速、登録してあったユーザーIDに電子マネーで課金をして、ゲームを始める準備は整った。
待っててボクのモフモフ天国!!
ゲームにログインすると、そこは真っ白な何もない空間だった。
そこに現れた天使様によると、ここは『infini fantaisie』の舞台である『アドラステア世界』で冒険するための体、要するにキャラメイクをする場所らしいよ。
キャラメイクについても事前に調べてどんな感じにするのかは決めておいたのでここはさっくり終わらせてしまう。
え、どんな感じにしたのかって?
目元や口元をちょっぴりいじって、髪を腰まで伸ばしつつ色を白色に変えたくらいだよ。
それだけでも面白い具合に雰囲気が変わるんだよね。
それこそ、よっぽど親しい人間でもない限りはボクだって気付かないくらいに。
それから、種族はハーフリングにしてみた。
元々あまり背が高くなかった事が幸いしたのか、あまり背の高さは変わらなかったけど、やっぱりちょっと悔しい。
そして、ボク的には肝心な部分についてだけど、そっちはいじることができなかった。
……ゲームなんだし少しぐらい盛らせてくれてもいいじゃないのさ。
そしてお待ちかねの職業選択!
ボクは迷わずに『テイマー』を選択したよ。
『サモナー』と『テイマー』の違いだけど、『サモナー』は召喚中にMPを一定値減少させる代わりにパートナーを強化できて、『テイマー』はそれが出来ない事なんだ。
で、ボクが『テイマー』を選んだ最大の理由なんだけど、『サモナー』の初期MPだと『ライトニングシーズー』を呼び出せないんだよね。
『ライトニングシーズー』とモフモフしたくてゲームを始めるのに、それを呼び出せないとか本末転倒過ぎるでしょう……
でも、『テイマー』も育てていけばパートナーを強化できるスキルを覚えるらしいから、そこはあまり気にしていないかな?
何より、ボクにとってはモフモフを楽しむことが一番大切なわけで、戦闘とか冒険なんて二の次なんだからね。
職業が決まったらお待ちかねのパートナー選択!
ボクは一切迷わずに課金枠を選択して『ライトニングシーズー』を選ぶ。
ボクの迷いのない行動に天使様がライトニングシーズーのメリットやデメリットを色々と説明してくれるが、ボクはこの子に会うためにゲームを始めたんだからまったく問題なし!
天使様の説明が終わると、ボクの目の前にボクの頭ほどのサイズがあるタマゴが出てきた。
このタマゴの中に最初のパートナーが入っており、キャラメイクが完了するとタマゴからかえって仲間になってくれるみたい。
2匹目以降のパートナーについては、自力で【テイム】というスキルを使って仲間にしたり、街で買い取ったり、イベントで仲間になったりなど色々な方法で増やせるらしいよ。
あと、今回みたいに課金で手に入れることもできるらしいけど、課金で手に入る子達もゲーム内で普通に入手することが可能らしいし、何よりゲームバランスが崩れるからあまりオススメはしないんだって。
……ボクはカワイイモフモフに囲まれてすごせればそれで満足だからあまり気にしなくてもいいかな。
キャラメイクも無事に終了したところで天使様に見送られながら、ボクは『アドラステア世界』に向かって旅立つ。
もちろん、最初のパートナーが入っているタマゴを大事に抱えながらね。
見渡す限り、結構遠くの方に少し大きめな街が見えるだけの草原に空からゆっくりと降り立つ。
空からの眺めも良かったけど、地面に降り立った後の景色もゲームとは思えないぐらい綺麗だったよ。
地面に降り立つと、大事に抱えていたタマゴが早速震えだした。
ボクはタマゴを地面にそっとおろして、その様子をじっと観察する。
タマゴの震えは少しずつ大きくなり、やがてタマゴがピカッと光って割れたんだ。
光が収まったときに出てきたのは子犬サイズのカワイイワンコ。
その姿はまさしくシーズー。
この子こそボクが待ち望んだライトニングシーズーだよね!
シーズーは可愛らしい瞳でボクを見つめてくる。
システムメッセージが教えてくれるには、正式な契約にはボクが名前をつけなきゃいけないんだって。
でも、ボクはちゃんと名前をあらかじめ決めてあるんだよ。
「君の名前はシズクだよ! これからよろしくね」
名前をつけてあげると大喜びでボクに飛びついてくるシズク。
尻尾も千切れそうなくらいブンブン振り回していて、とっても嬉しそうだ。
できればこのまま時間が許す限りシズクとイチャイチャしていたいけど、そう言う訳にもいかない。
どうやら今はまだチュートリアルの途中という事らしく、まずはチュートリアルをクリアしなくちゃいけないんだって。
……ボクはあまり冒険とかする予定はないから、チュートリアルなんてスキップしてシズクと遊びたいけどそうも行かないらしい。
残念だけど、本当に残念だけど、チュートリアルを進めて街へと向かおう。
ボクの周りを楽しそうに駆け回るシズクに癒やされながら、平原の中に用意されていた道を歩いて行く。
するとクエスト表示が出て、薬草の入手をするように指示されたよ。
薬草がどこにあるのか探そうとしたけれどなかなか見つからない。
そうしている間に、シズクが少し離れた場所で僕を呼ぶようにワンワン吠えだした。
シズクのところに行くと、そこには薬草が生えていて、それを入手することで無事クエストクリアとなった。
「シズクはすごいね。薬草のある場所もわかるなんて」
「ワンワン!!」
薬草の入手が終わったのでまた街の方へ歩いて進むと、今度は戦闘チュートリアルが始まったみたいだよ。
ボク行く手を遮るように、3匹のモンスターが現れた。
鑑定してみるとゴブリンって出てきた。
事前調査によるとゴブリンは序盤では少々強めのモンスターらしいのだが、チュートリアルで出てくるゴブリンは弱体化されたゴブリンらしく、初心者装備でも十分に倒せる程度の強さらしい。
テイマーの武器は鞭か杖なんだけど、魔法はまだ使ったことがないし、鞭だって当然使ったことはないんだよね。
魔法の使い方は誰かに教えてもらわないといけないと思う。
だから、とりあえず鞭を取り出してみたけどどうやって戦おう?
ボクが装備を取り出したのが戦闘開始の合図になったのか、ゴブリン達がゆっくりとだけど近づいてきちゃった。
仕方が無いので、鞭をブンブン振り回して攻撃してみるけど上手く攻撃が当たらないよ……
偶然、当たったとしてもあまりダメージを与えているようには思えないし、どうしよう……
そんな中、颯爽とボクの前に飛び出してきたのはパートナーのシズクちゃん。
走って飛びかかるのかと思いきや、なんと空を飛んで戦闘のゴブリンに襲いかかったんだ。
噛みつきとひっかき攻撃を受けたゴブリンは呆気なく倒されて消えていった。
ライトニングシーズーは物理攻撃力が低いって聞いていたけど、流石にチュートリアルのモンスターくらいならへっちゃらなんだね。
1匹目のゴブリンを倒した後、残り2匹のゴブリンもあっさり倒してくれるシズクちゃん。
倒した後にボクの側に駆け寄ってきて「褒めて褒めて」と期待のまなざしを向けてくる。
ボクはもちろんたっぷりとかわいがってあげるのだが……頼りないご主人様でゴメンヨ。
戦闘チュートリアルが終わった後、街に向かってさらに歩いているとまたゴブリンが現れた。
システムメッセージを読むと、今度は魔法で倒さなきゃいけないんだって。
仕方が無いので杖を構えると、魔法の使い方が自然と理解できるようになった。
あまりにも都合のいい展開だけど、あくまでもこれはゲームなんだからと自分に言い聞かせてボクは魔法を使ってみる。
今回は無事に魔法が発動して、戦闘にいたゴブリンを倒す事に成功した。
次のゴブリンに向けて魔法を使おうとすると、ボクの前にシズクが飛び出してきた。
何をするのかと思い、シズクの様子を窺っていると、シズクがうなり声を上げ始める。
「ウゥゥゥ、ワン!」
シズクが一声吠えると、晴天なのにもかかわらずゴブリン達に対して雷が落ちてきた。
ボクの弱い魔法でも耐えられないようなゴブリンがいきなりの落雷などに耐えきれるはずもなく、残っていたのは雷が落ちた後の黒い跡だけだったよ。
おそらく今のがライトニングシーズーの代名詞である、中級雷属性魔法『サンダーボルト』だろう。
ライトニングシーズーは初期から選べるパートナーの中で唯一、いきなり中級魔法を使えるすごい子なのだよ。
でも、中級魔法は初級魔法に比べて段違いに消費MPが多くて……今の一発でシズクのMPは3分の1くらい減っていた。
しかも、シズクの最大MPはボクの3倍以上はあって……
つまりはボクのMPだとサンダー1回で全部のMPを使っても足りないという事なんだよね。
『ライトニングシーズー』は魔法系のステータスで【MP回復速度上昇】というスキルも持っているお利口さん。
でも、初期魔法は攻撃力が高いけど燃費が悪すぎる『サンダーボルト』しか覚えていないというね。
高攻撃力なんだけどコストも高いというのがライトニングシーズーなんだよ。
そのせいで、こんなにカワイイのに不人気パートナー扱いされている不憫な子なんだ。
でも、ボクは周りの評価なんて気にしない。
このカワイイモフモフと一緒にこの世界で過ごすって決めたんだから!
チュートリアルは今ので終了だったらしく、その後は問題なく街までたどり着くことができた。
そこでボクは先輩プレイヤーの人から助言を受けたり、同じくらいにゲームを始めた仲間と一緒にまったりしたり、色々なことをして過ごすことになったよ。
でもやっぱり、うちのモフモフこそが最強!
お読みいただきありがとうございます。
気に入っていただけましたら評価やブックマーク、感想をお願いいたします。
特に感想は連載版を作る上で参考にしたいので、何でも構いませんので書いていただけると幸いです。
あと、評価が高ければ連載版を書くのが早くなるかもしれません。
どうぞよろしくお願いいたします。
2019年2月20日追記:
連載版の開始ですが、3月1日を予定しています。
初日は短編版の書き直しにあたる序章となるため時間を空けて3話更新になります。
連載版の方もどうぞご期待ください。