表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
連星  作者: トリル
3/3

第2話:流れ星





 『・・・神々はその生き物に、もうひとつの世界を管理させました。生き物はその世界でよく増え、よく働きました。しばらく経って、神々はもうひとつの世界を訪れました。ぐるりと世界を見て回って、神々は言いました。“別荘はまだ完成していない。引っ越すには早すぎたようだ。しばらく時間を置いて、また来よう。”そうして再び、去ってゆきました。 ・・・』




 はっと目が覚めると、いつもの部屋にいた。久しぶりに幼い頃の夢を見たようだ。頬には涙が伝っていた。

 アロンが村を出てから何年がたっただろう。星の秘密を知るために旅に出る、きっとすごいものを見つけて来るよ。そう目を輝かせて言った、それが最後に見た姿であった。彼は今、どこで何をしているのだろう。



 突然、ドアがノックされた。

 「ダリアおばあちゃん!森の方から誰かが来たよ。」

 私は涙を袖で拭い、起き上がった。ドアを開けると、孫のロゼと見知らぬ男が立っていた。男は言った。

 「村々をまわって旅をしています。この村にしばらく泊めてもらいたいのです。」

 この村に旅人がやって来るのは久しぶりだ。私はその旅人を食卓に案内し、軽い食事を出した。空腹だったのか、旅人は夢中で食事を平らげた。

 旅人はアルソンと名乗った。森を抜けて、山を越えたところにある村の出身らしい。怪しい人物ではなさそうだ。隣に空いている小屋が一つあったので、そこに泊まってもらうことにした。


 夕方、ロゼと共に、神殿に火を灯しに向かった。すると、崖の方に旅人が立って、空を見上げている。

 「何を見ているのか?」

 「赤い星を見ているのです。この村は、星が綺麗に見えますね。あれが近づいてくるのも、もうじきでしょうか…」

 「もうじき!私が子供の頃に見たあの星かしら。」

 「きっとそうでしょう。私の父も見たことがあると言っていました。ずっと向こうの大きな村を訪ねたとき、今年の冬に近づくだろうと教えてもらったのです。」

 その村でもまた、あの星は神聖なものなのだろうか。どうしてだか、人の心を掴んで離さないようだ。


 旅人はだんだんとこの村に馴染んでいった。魚とりが上手いようで、夕方になると村の子供たちと一緒に川に行っていた。その魚を時々持ってきて、果実と交換していった。



 1ヶ月ほどたったある日の昼、散歩をしていると、神殿の鳥の様子がおかしいのに気づいた。神の世界が近づく日だ。私は旅人に知らせた。

 「あなたの言った通り、星が近づいてくるようだ。おそらく今日だろう。神殿の鳥が鳴くと神の世界がやってくる、この村にはそういう言い伝えがある。」

 「聞いたことがあります。たしか幼い頃、父から...」

 「父親の名は何という?」

 「アロンといいます。この村はもしかして...」

 ...このようなことがあるのか。これはきっと、神が導いたものだろう。

 アロンは旅をして見つけた村にとどまり、そこの村人となったようだ。その息子が、星の秘密を探す夢を引き継いだのだ。

 私は神殿に入り、神々に感謝を言った。


 夕方になって、村の人々を崖の方に集めた。そうして皆で東の空を見上げた。日が暮れてきて、赤い星がどんどん大きくなり...徐々に青い大きな星が浮かび上がってきた。


 誰かがあっと指をさした。小さな流れ星が、いくつか尾を引いて飛んでいる。そのうちの1つが、炎を纏いながら、下へ下へ、落ちていき......崖の下で、大きな音がした。

 



 朝、崖の下を覗いてみると、沢山の貝や流木が流れついていた。崖からやや離れた海岸を見ると、大きな鉢状の穴があった。昨日の音の正体はこれだったのだ。

 海の方に降りて調べてみる、旅人はそう言い残し、去って行った。



 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ