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連星  作者: トリル
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第1'話:双子の星



 朝9時。木の引き戸を開けて、先生が入ってきた。僕たちはいそいそと自分の席につく。

 「みなさん、おはようございます。どなたも元気ですか?」

 先生はそう言って、教壇から11人の顔を見渡した。

 「昨日も言った通り、今日はいつもの授業はお休みにして、星について学びます。今夜、夜空に不思議なことが起こるのを知っている人?」

 僕たちは皆そろって手を挙げた。実際、町はこの話題で持ち切りであった。

 先生は、手提げから二枚の紙を取り出し、広げて黒板に貼った。紙にはそれぞれ、赤い星と青い星が描かれている。

 「左の赤い星は炎星といいます。これは夜空で一番明るい星ですね。そして、右の青い星はツインといいます。ツインというのは、双子という意味です。この星は海と陸、雲のようなものが見えて、この星とよく似ているのです。」

 僕は一生懸命ノートをとった。炎星というのは聞いたことがあった。夜最初にでてくる赤い星のことだ。しかし、ツインという星の名前は初めて聞いた。

 「このふたつの星が、今日の夜、ここアーズに最も近づきます。そしてこれは50年に一度のとても珍しいことなのです。一番最近では、新アーズ歴670年のことですね。みなさんのお祖父さん、お祖母さんの時代です。」

 僕は、おばあちゃんと夜散歩をしたとき、似た話をしていたのを思い出した。子供の頃大きな星がやって来るのを見て、それはそれは綺麗だった、と。

 「先生、この星はもっと前からも、何度も来ているんですか?」

 僕は手を挙げて質問した。

 「その通りです、レンス君。それよりもずっと前から、50年に一回、必ずやって来て、去ってゆきます。」

 「どうして星が何度も近づいたり離れたりするんですか?」

 「その仕組みはまだわかっていないのです。これらの星が近づく時間は短く、詳しく調べるのが難しいそうです。」

 

 先生はそれから、星についての言い伝えや歌などについて話した。

 「それでは授業を終わります。明日からしばらく祝日で学校は休みです。皆さん楽しい休みを過ごしてください。」

 僕らは校門を出て、バイバイと手を振りながら各々家の方へ歩き出した。僕は学校の塔をぐるっとまわって、水路沿いの石畳の路を歩いた。途中でいつものキャンディー屋に寄った。赤と青の飴玉が、大きなガラス瓶の中に沢山入っている。僕はそれを1つずつ買った。手に取って太陽にかざすと、キラキラと光った。今日習った星に似ているなあと思った。



 家に着くと、父さんと母さんが荷造りをしていた。

 「レンスも早く準備をしなさい。もうすぐ出発するわよ。」

 連休はおばあちゃんの家で過ごす。おばあちゃん家のある丘は、星がよく見えるのだ。僕は鞄に、服と襟巻き、スケッチブック、色鉛筆、ドロップの缶を入れた。

 昼過ぎになって、列車に乗った。席で母さんのサンドイッチを食べ、僕は眠りについた。



 目が覚めると、随分田舎に来ていた。終点の駅で列車を降りると、おばあちゃんが出迎えてくれた。

 「久しぶり、レンス、大きくなったわね。皆と星が来るのを見られるなんて本当に嬉しいわ。」

 丘を登っていって、おばあちゃんの家についた。僕らは、暖炉の前でハーブティーを飲みながら時間をつぶした。

 「生きている間にあんなに綺麗なものを二度も見られるなんて。長生きはするものね。おじいちゃんにも見せてあげたかったわ...レンスは二度見られるかしら。今日のことを、よく覚えておきなさい。」



 日が暮れてきた。僕らは襟巻をして、丘に出た。丘の上には他にも人が集まっていた。

 「あの星をよく見ておくんだよ。」

 僕は芝生の上に座り、スケッチブックを広げた。そして色鉛筆で、そこから見える景色を描いていった。


 皆黙って、暗くなりかけた空を見ていた。誰かが、「あ、」と言った。炎星が光りはじめていた。それはだんだんと大きくなっていった。それに合わせて、僕はスケッチブックに描いた赤い点を、ぐるぐると大きくしていった。

 炎星が大きくなると、青い星が見えてきた。僕は驚いた。あんなに大きなものだとは思っていなかった。

 (これがツインか…星が、こんなに近くにやってくるなんて...鳥なら飛んで行けそうだ)

 僕は、青い星を熱心に描いた。青い海、白い雲、緑の陸...いつかあの星に行ってみたい、そう僕は願った。


 

  


 

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