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クロムの野望

作者: ないとめあ

ここは王都バルファーナの外れにあるスラム街。治安は悪く王都から廃棄で流し込まれる大量の物資を再利用し人々は生活をギリギリ保てている。王都から配給されるのは最低限の食糧と水のみでありその配給される食糧を巡っての争いも後を耐えない。


「お頭、情報は本当だったらしいですぜ。あのお馬鹿なお姫様を捕まえて他国に売り捌いてやりましょう」

小柄な男が剣を片手に一人の少女に近づいている。


「辺りにはどうやら護衛はいないみたいだな。いいぞ捕らえろ」

もう一人のお頭と呼ばれる男は辺りを警戒し、護衛がいない事を確認すると小柄な

男に手で合図を送る。小柄な男は対象の少女に背後から近づき鋭利な剣を首筋に突き立てようとしていた


「おっと動くなよ…大声出したらその綺麗な顔に傷がつくぜ」


「なんですか貴方たちはッ!?」


少女は背後から忍び寄る男に気づかずにあえなく捕まってしまう。

鉄製の手錠のようなもので手を繋がれ、用意されていた馬車に押し込まれようとしていた。


「しかしまぁ、こんなスラム街まで護衛も一人も着けず一国のお姫様が何をしにきたんですかねえ?」


「さぁな…だが手袋で隠してあったが、情報屋の言うとおりなら手首にあるこの十字の紋様は生まれてすぐに王族に刻まれる証だ。こいつは本物のエリザ姫で間違いないだろう」


「私をどうするおつもりですか?」


「どうするって?そりゃあお前さんを他国に売りつけてがっぽり儲けようとしてるのさ!こんな国に

身代金を要求したところでロクな銭も稼げねえからなへっへ」


この国に身代金を要求すれば早いことなのだろうが…他国に要求するほうが稼げるというのはこのスラム街の有様を見れば明らかだった。3年前レミントン国王が死去し、その息子のオズワルドが国王の座を次いで以来他国とのいざこざが後に耐えなかった。

市民から過剰にお金や穀物、物資を搾取し王邸に住むものだけが潤っていき、反感を示すものはスラム街に追放するというシステムになっていた。ゴロツキ二人組みは情報屋から念入りに話を聞いていたため、他国に売り捌き捕虜として弱みを握れる為自国のケチな王様に交渉するよりは高値が着くと言う判断に至ったのである。


スラムではこのような事がよく行われており、周りの住民達も見て見ぬふりをしているただでさえ生きることに精一杯なのに面倒ごとに皆巻き込まれたくないのだ。


……ただ一人の男を除いては。


「腐ってやがるなこの国は本当に」


ボロボロになった布製の黒いフードパーカーを被った男は、少女が馬車に連れこもうとされる一歩手前の所で素早く男二人の前に回りこむ、咄嗟の出来事に一瞬動きを止めるゴロツキ一行。


「なんだお前は!こいつの護衛か!?   ふっ・・武器も何も持たずに俺たちに勝てるとでも?」


小柄な男のほうは動揺をみせ後ずさりをするが、お頭と呼ばれる男は手慣れているのかすでに剣を構え戦闘態勢に入っている


「護衛?そんな時もあったが今はココ(スラム街)に追放された難民さ。逆に問おうそんな武器で勝てるとでも?」

黒フードの男は数秒詠唱すると、拳に青いオーラが宿る。大頭と呼ばれる男は一旦後ろに引き間合いを取るが挑発に乗った小柄な男は武器を持たない黒フードの男に斬りかかる……が金属同士がぶつかり合うような音と共に斬撃が止まる。


「へ?」


黒フードの男は左の拳で剣を弾き返し、そのまま隙の出来た小柄な男を右の拳で吹き飛ばしていた。


「やるのか?やらないなら鍵置いてさっさと去れ」


黒フードの男はもう一人のお頭に問うと、一部始終を見ていたのもあってかあっさりと

諦め手錠の鍵をこちらに投げつけ少女をこちらに引き渡した。無残な姿に顔が腫れ上がった部下を馬車に引き連れて。

                         

「クソッ!あいつが情報屋が最後に言ってたスラムで人(サラ)いは辞めとけの元凶か」




__________________________________________


ゴロツキ一行が立ち去ると数秒の沈黙の後、黒フードの男はゴロツキを追い返した腕をぐるぐると回す仕草を見せ、手錠に繋がれた少女に近寄り話かける



「とりあえずこれ使いなよその状態じゃ王都に戻れないんだろ?えぇと…エリザ姫でいいんだよな?ティファ女王によく似てるから人目見てわかったけどな」

黒フードの男は手錠の鍵を少女に渡すと少女は立ち上がり一礼した。


「助けていただきありがとうございました。それと、あの・・・どこかでお会いしましたか?」


「レミントン前国王の時から直属の護衛で勤めていてな。クロムと呼んでくれていいよ。その時に何度かエリザと顔合わせはしているかな?オズワルド国王のやり方が気に食わなくて一発ガツンと言ってやったらココに強制送還されてこの様だよ」


「あはは…そうでしたか私は王都の一部でしか行動出来ない身でして、一度スラムの方まで出向いて見ようと思って抜け出してきたのですが…」


「あいつらに運悪く絡まれたってことか」


「そんなところですね」


クロムは襲われていたにも関わらず少しも呼吸の乱れていないエリザを見て少し疑問を抱いていたが、もう一つ気になることがあったので質問をする。


「この国をどう思う?」


「そう長くは持たないでしょうね。兄さん(オズワルド国王)のやり方だと王都の皆も不満は少なからず抱いているでしょうし、異議を唱えるものは幽閉されているとも聞きます。私も何か出来る事があればと思いこちらにきたのですが…」


「そうか…俺もこの国のやり方には納得いかねえんだ。スラムの連中も悪い奴ばかりじゃないし1年ほどここに暮らしていると愛着も沸いてくるってもんだ。後あのオズワルドの野郎の顔面を一発ぶん殴ってやりてぇ。もしよかったら協力してくれないだろうか?」


クロムはエリザの眼を見て確信を持った。この子とならこの国を変えれるんじゃないかとエリザもクロムの眼を見て同時に同じような考えを過ぎっていた。


「分かりました。ですが、今日はもう時間がないのでまた3日後王都で会いませんか?私の信頼できる部下に案内させますのでそこで話を聞きましょう。スラムの現状も色々と知りたいので」


「ああ、わかった場所はどうする?」


「クールの酒場の店主にエルメスという者がいないか訪ねてください。時刻は丁度今から3日後の同時刻に落ち合うことにしましょう」


「それではそろそろ戻らないと怪しまれてしまうので私はこれで。」


「あ、ちょっと一つだけ気になることがあるんだが、ひょっとして俺が助けなくてもあの二人を返り討ちに出来たりする?」


ゴロツキに絡まれてからのエリザに対する違和感の正体を確かめようとクロムはエリザに聞くと、

笑顔で「はいっ」とだけ返してその場を立ち去った





この二人の出会いがのちに王都バルファーナの歴史に大きく刻まれることになることをこの二人はまだ知らない。                         ・・・END




























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