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エルフの山田さん(自称)~貰った盆栽を育ててたら、いつの間にやら世界を救っていたようだ~  作者: 長尾隆生@放逐貴族・ひとりぼっち等7月発売!!
第六章 新たなミニ世界樹。

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懸想なんてしてないです!

「たっだいまーですです」


 玄関の扉が開き、小柄な美(?)少女が俺の部屋にやってきたのは、ミニ世界樹四号ことコノハこと母体世界樹こと木花咲耶姫が俺の部屋に居座って三日後のことだった。


 あの日、山田さんは「明日には帰ってくる」と言っていたけどずいぶん遅れての帰宅だ。


 というか、俺の部屋は彼女の部屋ではないので帰宅はおかしいか。


「タカハシおかえりー」


「おかえりなのじゃー」


 世界樹御一行様が彼女……高橋さんを出迎えに玄関へ向かう。


 コノハはまだ飛行ユニットを装着していないらしいのでミユも一緒に歩いて玄関に向かう。


 その姿だけを見ると可愛らしい仲の良い姉妹のようで微笑ましい。


「ただいまー、ミユちゃん……と、ヨン様ですです!」


「ヨン様じゃないのじゃー、ワシはコノハなのじゃー」


 そのような声が玄関から聞こえてくる。




 しばらくすると両肩にそれぞれミユとコノハを乗せた高橋さんが部屋にやってきてちゃぶ台の前に腰を下ろす。


「お茶入れてくるのー」


 ミユが高橋さんの肩からふわっと浮き上がりキッチンへ向かう。


 よく出来た娘だ。




 一方役立たずの居候の方は肩から高橋さんの腕を伝って「よっこらしょ」とちゃぶ台の上に降りた。


 見かけは和服幼女だが所詮は果てしないほどの樹齢を持つ世界樹のBBAなのが言葉の端々から感じ取れる。


「ん? お主何か今ワシを見て邪なこと考えて無かったのじゃ?」


 こいつ、無駄に鋭いな。


「いくら神木とは言え樹木、しかも生まれて一年も経ってない幼女に邪な感情を抱くとか、田中さんはやっぱりドが付く変態さんですで……あ、痛いっ」


 俺は無言でアホなことを宣う高橋さんの両こめかみをグリグリとしてやった。


「ううっ、ちょっとしたおちゃめなジョークだったですですのに」


「はっきり言っておくけど俺はお前らのようなチンチクリン共じゃなく、もっとこう年上の頼りがいのあるお姉さんみたいなのがタイプなんだよ」


 その言葉に高橋さんは少し考えた後ニヤリとした笑みを浮かべた。


「な、なんだよ気持ち悪い」


「それって、吉田さんの事ですです?」


 ぐっ。


 たしかに吉田さんは少し年上のお姉さんタイプで、こちらの世界にいた時はともかくあちらの世界では頼りがいのあるお姉さんではあった。


 顔もスタイルもさすが女神というレベルだ。


「私や山田さんたち相手には結構傍若無人な田中さんなのに、吉田さんには何時も丁寧だった気がするですです」


「そ、そんなこと無いだろ」


「あるですです」


 こいつ、一歩も引かないつもりか。


「お主ら、盛り上がってるところ悪いが、その『吉田』とは誰なのじゃー?」


 キングオブ空気が読めない娘であるのじゃっ娘がちゃぶ台の上から俺達を見て尋ねる。


 話を逸らすいいタイミングだ。よくやったのじゃっ娘。


 俺は心の中でコノハに喝采を送る。


「聞いている限りだと田中がこっそりと懸想けそうしておる娘のようじゃが何者なのじゃ」


 懸想とか初めて聞いたわ。


 というかそっちの話に持っていくんじゃない。


 ほら、高橋さんが更にニヤニヤ度を深めてるじゃないか。


「吉田さんはですですね、別世界のミニ世界樹契約者様ですです」


「ほほう、それは興味があるのじゃ」


 そりゃ自分の娘(枝)の、ある意味嫁ぎ先だから興味はあるだろう。


 出来れば俺の色恋沙汰じゃなくそっちの方面に話が流れてくれ。


 高橋さんがコノハに吉田さんと彼女の世界の事を説明している間にミユがいつもの様にお茶を持って、キッチンとちゃぶ台を何往復かして準備を続けている。


 本来なら手伝ってあげるべきだとは思うのだが、前に手伝おうとしたら「これはミユのしごとなの」と拒否されて以来、なるべく手を出さないようにしている。


 ミユはよく出来た娘なので必要があればちゃんと「手伝ってほしいの」と上目使いで言ってくるので「無茶しすぎじゃないか?」とハラハラすることもない。


 本当によく出来た娘である。


 このちゃぶ台で人の色恋話を面白おかしく語り合ってる怠け者どもに爪の垢でも煎じて飲ませてやりたい。




◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇




「ほほう、神様とな。そういうシステムもあるのかなのじゃー」


「ユグドラシルカンパニーが観測できた範囲の世界の中でもかなりの率で神様という管理システムを構築してる世界が存在してたですです」


「確かにワシ……母上一柱で世界を管理するのは大変なのじゃ。一考の余地はあるのじゃ」


「スペフィシュはコノハちゃんが大きくなれば母なる世界樹様と二柱になるですです」


「そ……そうじゃな、母上とワシで二倍の処理速度が出るはずなのじゃ」


 おい、コノハ。目が泳いでいるぞ。


 素直に母子じゃなく同一人物(?)だと言っちゃえば楽だろうに何にこだわっているのか。




「ところでコノハちゃんに聞きたいことがあるですです」


「なんじゃ?」


 高橋さんは俺が机の横に置いた宅配便の箱を机の上に持ってきて続ける。


「私の送る予定だったお菓子の一部を食べたですです?」


 何時にもまして真面目な顔で言うことがそれか。


 俺が少し呆れていると、言われた方のコノハの目が泳いでいる事に気がついた。


 こいつ、たしか自分が入るために邪魔だった分のお菓子は研究所においてきたとか言ってたけどやはり嘘だったのか。


「ほとんどは研究所の机の引き出しに隠しておいたのじゃ」


「ほとんどですです?」


 コノハは開き直ったのかいつものような腰に両手を当てて胸を張るスタイルで答えた。


「一つ……いや二つしか食べてないのじゃ」


「はぁ、最初から正直に言えば許してあげたですですのに」


 高橋さんは呆れたような声を出してポケットから何やら取りだす。


 どうやらお菓子の包み紙のようだ。


「これが研究所の床におちてたですです。おかげで上司に何故か私が疑われて怒られたですです」


 多分日頃の行いのせいだろうと思ったが口にはしなかった。


「そもそも私が隠れて食べる時はきちんと証拠隠滅はするですですのに」


 隠れてるつもりでも多分周りにはバレバレなんだろうな。


「すまぬのじゃー。包み紙を開けて吸収口に置いたあとそのまま忘れてたのじゃー」


 そう言って頭を下げるコノハ。


 素直に謝るのならコレ以上追求はされないだろう。


 だが、高橋さんは予想に反して更に話を続ける。


「正直そっちはどうでもいいですです」


 いいのかよ。


「それよりもコノハちゃんが一番最初にドワドワ研究所に送ったメッセージですです」


「メッセージ? もしかしてこっちの世界についたって連絡入れたって言ってたやつか?」


「ですです」


 それの何が悪いんだ?


 いや、勝手にこっちの世界にやって来たのは悪いことだとは思うが。


「きちんと連絡入れたんだろ?」


 俺がコノハに聞くと「当たり前なのじゃー。きちんと『今ついたのじゃー』と連絡を入れておいたのじゃー」と答えた。


「それだけですです」


「え?」


「たった一言『今ついた』とメッセージを伝えられても誰にも意味がわからなかったですです」


 俺は高橋さんの言葉を聞いてジト目でコノハを見やる。


 だがどうやら彼女は事の次第をよく理解していないようで頭に「?」マークを浮かべている。


「いったい何処に付いて、今何をしているのかとか全くわからなかったですです」


 高橋さんがそう言うとやっとコノハが意味を理解したようで「しまった」というような表情を浮かべた。


「それは『連絡を入れた』とは言わないぞコノハ」


「そ、それもすまなかったのじゃー」



◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



 コノハが高橋さんにガチ説教をされている間にちゃぶ台の上にどんどんティーセットや簡単なお菓子が並んでいく。


 何時もは緑茶か麦茶なのに珍しく紅茶用具一式が準備されていた。


 確かにもう冬になるというのに麦茶は無いだろうとは思うが俺が好きなのだから仕方がない。


 温かい麦茶も美味しいのだ。


 俺は自分の世界の住人に説教されている世界樹様を眺めていたがふと机の上のティーセットを見る。


「ん? コップの数が一つ多いよミユ」


 机の上にはいつのまにやらコップが五個並んでいた。


 高橋さん、ミユ、コノハ、俺で四個でいいはずなのだ。


 もしかして山田さんでも帰ってきたのかな?


 ミユは山田さんが帰ってくると気配が読めるようだし。


「そのコップはね……」




 ぴんぽーん。




 ミユが何か言いかけた言葉にかぶさって玄関の呼び鈴が鳴り響く。


 山田さんなら一々もう押すこともないから違うけど宅配便かな?




 俺はゆっくりと立ち上がり三人をその場において玄関へ向かった。




「はーい、どちら様ですかー」


 俺が扉に向いながらそう言うと、扉が開いて見知った顔が入ってきた。




「えへっ、きちゃった☆」




 それはモコモコの凄く暖かそうなコートを着た委員長だった。


 何やら手に紙袋を持っている。




 そういえば高橋さんが帰って来たら彼女を呼んで銘菓パーティを開くとか言ってたなということを思い出した。


 それと同時に委員長が抱えている荷物が追加の補習教材じゃないことを心から祈るのであった。




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