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エルフの山田さん(自称)~貰った盆栽を育ててたら、いつの間にやら世界を救っていたようだ~  作者: 長尾隆生@放逐貴族・ひとりぼっち等7月発売!!
第五章 戦え!田中ゴーレム。

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世界樹は貴方の心です。

 俺は通信機の向こうにいるミユの姿を見てホッとしていた。


 契約者である俺がヨシュアさんの世界に飛ばされて、ミユに何かしら悪い影響を与えてないか心配だったのだ。


 それというのも、前に誰かが契約者と世界樹が離れると悪影響が出るという話をしていたような記憶があったからである。


 実際はまだ一週間も離れてはいないし、スズキさんの例があるのでひと月程度は問題ないとは思うのだけれど。


 それでもこうやって愛娘の変わらない元気な姿を見るとほっとするのは親ばかだからだろうか?



「あなたがティコちゃんなの?」


『ビリビリッ』


「正しくはティコライ? ふ~ん、なるほど希望って意味なんだ。いい名前だと思うの」



 先ほどからミユがこちらの世界のミニ世界樹『ティコライ』と話をしている。


 ティコの言葉は契約者以外にはまだ伝わらない状態レベルなので、現状ミユとヨシュアさん以外にはこの場で彼女ティコの言葉がわかる者がいないのだ。


 よって他の者からするとミユが独り言を言っているように見えるのが中々にシュールだ。


 一応、ティコが何か返事をしているような時はビリビリと発光するのでまだ会話しているようにみえるだけマシだが。



『ビリビリッビリ?』


「え? 私の名前の由来?」



 ミユが唐突に俺の方を見る。



「お父さん、私の名前の由来教えて欲しいの」


「ゆ……由来? ええっと……」



 ヤバイ。


 ミユの名前の由来は「ミニ+世界樹ユグドラシル略して『ミユ』なんだ」なんてこの場の雰囲気で言えないっ。


 しかし、ミユは名付けの時の俺のつぶやきは聞いてなかったのかと色んな意味で少し安心する。


 自分の名前があんな適当な事で決められたとか子供は絶対グレるだろう。


 そして結果サテライトキャノンで撃ち抜かれても文句は言えない。



「えっとだな。ミユの名前の由来はだな」



 俺はしどろもどろになりながら必死に考える。


 どうしよう、早く答えてあげないとさすがに適当に名付けたのがバレる。

 そしたらミユはきっとダークサイドに落ちるだろう。



「ミユちゃんの名前の由来なら私がお答えしましょう」


「え? 山田さん?」



 俺がミユの名前の由来を必死に考えていると、突然俺の横に山田さんがやって来て画面の向こうにいるミユに語りかける。

 何を言い出すんだこのイケメンエルフは。



「ちょっ、山田さん俺が言いますから」



 俺は必死に山田さんを止めようとするが後ろから誰かに口を抑えられて止められない。



「落ち着け、山田に任せておけば大丈夫だ」



 どうやら俺の口を抑えているのは渡辺さんのようだ。

 彼の冷静な声音に、少し慌てていた心が落ち着く。



「ミユちゃんの名前の由来はですね」



 山田さんはおもむろに懐からいつもの手帳とペンを取り出し空白のページを開いてそこに文字を書き出す。



「わくわくなの」


『ビリビリッ』



 彼は手帳に書いた文字をミユたちに向けて見せる。



「漢字で書くとこう。『実優』と書きます」



 そこには『実優』と大きめの几帳面な文字で書かれていた。


 というか俺は漢字表記とか考えてなかったよ。



「実優? どういう意味なの?」


「それはですね」



 山田さんはその『実優』の文字の下に説明書きを追加する。



「『実』は世界樹であるミユちゃんの未来が実りあるものになって欲しいという願いがこもっています」


『ビリビリッ』


「次に『優』ですが。やさしい子になって欲しい。そして同時にすぐれた子に育って欲しいという意味ですね」


「ミユ、優しい子ってよくお父さんが褒めてくれるの」


『ビリリッ』


「つまり優しく優れ、実りある子に育ってほしいという願いで付けられたのが『実優ミユ』という名前なのです」



 なんという口からでまかせを。

 もしかして前からこういうこともあろうかと考えていたのではないだろうかと疑いたくなるくらい、山田さんは淀み無く名付けた俺すら知らない名前の由来を語っていった。



『ビリリビリッ!』


「うん、そうだね。ありがとう」


「ティコライも『凄くいい名前だね』って言ってるよ」



 ヨシュアさんがティコの言葉を通訳してくれる。


 というか、最初から彼女に通訳してもらえばよかったんじゃないかと今気がついた。

 ミユとの再会と一本釣りのダメージで頭が回ってなかったせいだろう。


 俺はミユとティコとの会話を横目に見ながらヨシュアさんに気になったことを聞いてみることにした。



「ヨシュアさん、ティコなんですけど」


「ん? なんだい?」


「下界での経験とか、ミユとの対話も合わせてかなりの『経験値』が溜まったと思うんですがなかなかレベルアップしませんよね?」



 自分の経験上、ミユが喋れるようになったのはそれほど遅い時期じゃなかったはず。

 いろいろな経験を積んだ今では簡単にあの時のミユくらいまでのレベルアップはあってもおかしくはないはずだ。



「えっとね、それはボクたちのせいかもしれないって渡辺くんが……」


「渡辺さんが?」


「うん、ティコライの成長の仕方がいびつなのはキミも知ってるよね?」


「ええ、体だけ成長して精神が成長してないという話でしたよね」


「うん、つまりそこなんだよ。ティコライのレベルは実際今かなり上がった後なんだ」


「田中さんにわかりやすく言うとSTR極振りでINTを上げてない状態ってことさ」



 先ほど話題に出た渡辺さんが話に割り込んで説明を補足してくれる。



「面目ないことにボクたちは世界樹の魔素を求めるあまり心のなかで魔素を生み出す力のみを求めてしまっていたんだ」


「世界樹は契約者の心を写す鏡みたいなものなのかもしれないね」


「たしかに今回の事件もアイリィの影響がかなり出てた結果らしいし、ボクも色々勉強になったよ」



 彼らの言葉を聞いて俺は突然ミユの事が心配になってしまった。



「じゃあミユはどうなんですか?」



 もしかしたらミユに俺の心が投影されているかも知れないという事実に焦ってしまう。

 何せ俺はほぼ引きこもりで頑固者で根暗で、そして……。



「世界樹が契約者の心を写す鏡だとしたらミユに悪いことをして……」



 俺がそう言いかけたのをヨシュアさんは手で制した。



「何を言ってるんだい? ミユちゃんはどう見てもまっとうに素晴らしい世界樹として成長してるじゃないか」



 そう言って俺の肩をつかんでミユの方へ俺の体を向けさせる。

 そこには楽しそうにティコや山田さんと話しているミユの姿があった。



「ボクやスズキくんから見たらキミとミユちゃんの関係はとても素晴らしいものにしか見えなかったよ」


「そうだな。我々ユグドラシルカンパニーの総会でも山田が発表する内容にみんないつも驚いているくらいだ。俺なんかその度嫉妬してたんだぜ」



 渡辺さんが本気か嘘かわからない声でそんなことを言う。



「いっつも渡辺が総会とやらから返ってくるといきなり働き者になってボクたちに指示しだすんだよねぇ」


「その言い方だと私がいつもは働いてないみたいな言い方ですね」


「違ったのかな?」


「私はずっと真面目に働いてますよ」


「へぇ~、そんな風には見えなかったけどなぁ~」



 突然始まった二人の戯れに、俺はなんだか場違い感を感じてその場をそっと離れミユたちの方へ向かう。



 歩みを進めながら「ありがとう」と俺は心のなかで優しい二人に感謝した。

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