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エルフの山田さん(自称)~貰った盆栽を育ててたら、いつの間にやら世界を救っていたようだ~  作者: 長尾隆生@放逐貴族・ひとりぼっち等7月発売!!
第五章 戦え!田中ゴーレム。

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それが世界樹の加護です。

 目が覚めるとそこは雪国だった。

 何てことも無く普通の部屋に俺は寝かされていた。

 どうやら吉田さんの部屋からいつの間にか移動させられていたようだ。

 多分あのシスコン妹の差し金だろう。


 まだ微妙に残ろう体のだるさを振り切ってベッドから起き上がると少し伸びをして部屋を見渡す。

「見た目だけなら普通にヨーロッパあたりの古い街にある部屋なんだけど異世界なんだよな」

 俺はそのまま歩いて部屋に一つある窓の傍まで行くと、おもむろに窓を開けた。

「まさか本当に雪国?」

 一瞬そんな事を思ってしまったがそんな訳はない。

 目の前一面に広がるのは白一面の世界ではあったが。

「これはまさか雲か。雲の王国って、まるで昔見た青狸の映画みたいだな」

 窓からでは自分が今いるこの建物の外観はわからないけど勝手に雲の上に立つ王城か宮殿みたいなイメージが頭に浮かぶ。

 きっと超有名RPGとかで見た雲の上の建物のイメージがそのまま根付いているのだろうな。

 とにかくこの場所は雲の上にある建物のように見える景色だが、もしかしたら凄く高い山の頂上に建っているのかもしれない。

 それもこれも自分の目で確認するしか無いか。


 一通り部屋をうろついて体も動くようになってきたので俺は部屋を出てみることにした。

 昨日(?)は異世界にやってきたと思っていたけど実際目に見えたのは空と海と雲の世界、そして吉田さんの部屋とこの部屋だけだ。

 本当に異世界に来たのかどうなのかを判断するにはまだ早いんじゃなかろうか。

 そもそも今まで見てきた景色なんてユグドラシルカンパニーの技術を使えばそれくらいどうとでもなるだろう。

「それを確かめないことには一歩も進めないって、自分でも頑固だとは念うけどね」

 少し自嘲しながら俺は部屋のドアを開ける。


「おはようございます田中様」

 扉を開けると突然その向こうから一人の女性が声をかけてきた。

「おはようございます?」

 俺は彼女を知らない。

「わたくし田中様のお世話を承りました侍女のレミスと申します。短い間ですがよろしくお願いしますね」

 レミスと名乗るその女性は廊下の先を手で指し示し「ご案内いたします。どうぞこちらへ」と俺を誘った。

 特に逆らう理由も無いので彼女の指し示す方向へ歩き出した。

 そんな俺の動きを確認してから先導するようにレミスさんが少し前を進んでいく。


 廊下の幅は約4メートルほどで天井がかなり高い。

 左右の所々にある柱は綺麗なレリーフがされており天井に向かってやがてアーチ状を形成している。

 そのアーチとアーチの間の部分は特に何ら描かれておらずとにかく白い石のようなもので作られていた。

 俺はそんな天井を少し見上げながらレミスさんの後をついて行く。

 数分ほど歩いた頃だろうか、目の前に人の背丈の倍ほどもあろうかという大きな扉が現れた。

 レミスさんはその扉の前にたどり着くと控えめに二回ノックする。

 しばし待つが扉の向こうからの返答は無い。

「もしかして中の人に届いてないんじゃ?」

 俺がそう疑問を口にしようとした瞬間、わずかな音を上げてその大きな扉が開きだした。


「やぁ田中くん、お目覚めかな?」

 扉が開くと同時に部屋の中から吉田さんが俺に声をかけて来た。

 扉の向こう側の部屋は、さっきまで自分がいた部屋や吉田さんの部屋とは比べものにならない広さの大広間で、まるで物語の中から出てきたようなその景色に俺はしばし見とれて返答すら忘れてしまっていた。

 大きく何枚もある窓から差し込む光が部屋中を明るく照らし出し、中央に鎮座しているテーブルセットに置かれたティーカップを輝かせている。

「お~い、田中く~ん」

「田中さん大丈夫ですか?」

「ほう、彼が田中くんか」

「そんなのほうっておきなさいよ」

「思ったより小さいな」

「ふぉふぉふぉ」


 その大広間のテーブルに座っているのは全部で六人。

 俺はその面々の顔をざっと見渡す。

 その中の半数は見知らぬ顔だった。

 一体この人たちは誰なんだ? 特に俺のこと小さいって言ったあのダイナマイトバディの赤髪のお姉さんはいろんな意味で気になる。

 俺は山田さんに近づくと耳元に口を寄せて「この人達は?」ときいた。

 正直半引きこもり生活が長かったので初めて合う人ってのは苦手なのだ。

「この方々はこの世界の神々一族の皆さんですよ」

「神々!?」

 その返答に俺はつい驚いて大きな声を出してしまう。

「そう、ボクの家族だよ」

 いつの間にか近くで聞き耳を立てていたらしい吉田さんが山田さんの言葉を継いでそう言うと少しからかうような笑顔を俺に向ける。

 その笑顔から逃げるようにそっぽを向くと、その方向にいたこの場で一番の年長者と思われる老人と目が合う。

 老人は愉快そうに「ふぉっふぉっふぉ」と笑うと隣りにいる吉田さんの方を向いて「ヨシュアや。そろそろ紹介してくれんかのう?」と語りかける。

「ヨシュア?」

「ボクの本名さ」

 やっぱり吉田とか偽名だったのかよ!!

「じゃあ今までなんで吉田とか名乗ってたんですか!?」

 俺は疑問をぶつける。

「それはね、キミの世界の言語では音が表現できなかったからしかたなく山田くんと考えて吉田っていう音が親しい名前にしたのさ」

「え? でも今きちんとヨシュアって名前ききとれてますけど?」

 俺のその質問に答えたのは山田さんだった。

「それはですね、調べたところ今現在田中さんには言語翻訳魔法がかかってるのがわかりまして」

「翻訳魔法ってあの『言霊の息吹』ってやつ?」

 異世界言語のみに対応という使いみちのなさですっかり忘れていた魔法だがこの『異世界』ではその本領が発揮されているということか。

「でも俺、呪文なんて唱えてませんよ?」

「それについてはボクなりの想像だけどたぶん……」

 吉田……ヨシュアさんがそう言って説明してくれようとした所に一つの青い光が俺とヨシュアさんの間に割り込んできた。

「あなたの世界の世界樹のおかげよ!」

 青髪縦ロールのお嬢様の乱入だった。


 ヨシュアさんの妹さんだったっけ?と俺が首を傾げていると彼女は不機嫌そうな顔を隠しもせず俺に噛み付いてきた。

「お姉様の帰還を待っていた所にアタナのような部外者が飛び込んできたから理由を聞き出そうと思ったのよ。

 でもアナタはどう見ても異世界人の魔素を放ってたから言葉が通じないだろうしどうしようかと思ったら突然穴の向こうからこの世界とは違う魔力が流れ込んできたのよ」

「この世界とは違う魔力?」

 魔力って世界によって違うのか? よくわからない。

「あれはあなたの世界の世界樹の力よね? たぶんだけどその時世界樹があなたを守ろうとできる限りの魔法をかけてくれたに違いないわ」

 ミユが俺のために何かしてくれたってことか。

 そしてその『できる限りの魔法』の中に『青くなる』スキルが入って無くてよかったと心底思ったのは余談だ。


 俺はその言葉に最愛の『娘』の笑顔を思い出し少し心が軽くなったような気がしたが、妹女神の次の言葉で一気にどん底に落とされた。

「世界樹との契約、その守りが無ければあなたは今頃最悪死んでいたかもしれないわね。まぁ遅かれ早かれ世界樹の加護が切れればどうなるかわからないけ……むぐぐっ」

 さらりとそんな爆弾を落とす妹女神の口をヨシュアさんが慌てて塞ぎにかかるがもう遅い。

「え……俺死ぬの?」

 ギギギと音がなるような動きで俺は山田さんを見る。

「い、いえ、大丈夫ですよ大丈夫。今の田中さんの魔素量ならただちに害が出ることはありません」

 いつものイケメン笑顔でそう言う山田さんだが、何か少し言葉に切れがない。

 そもそも『ただちに』とか不安しか感じないんだけど。

「そうだね、最低でも一ヶ月は問題ないはずだよ」

 吉田さんがあっけらかんとした声で答える。

 その明るさに少し救われるが一ヶ月過ぎたらどうなるのかと思うと気が気でない。

「や、山田さん」

「はい、なんでしょう」

「ここが本当にヨシュアさんの世界、つまり異世界だと仮定してだけどさ」

「仮定じゃなく本当にボクたちの世界なんだけどなぁ」とヨシュアさんが嘆息する。

「……とにかくそう仮定して、俺が元の世界に戻れるのはいつになるの?」

 俺はヨシュアさんの声を無視して山田さんに現状一番大事だと思ったことを尋ねる。

 一ヶ月以上かかるなら最悪他の手段も考えないといけないからだ。


「その事なんだけどね、田中さんが眠っている間に既に計算は終わっているよ」

 いつの間にか山田さんの隣にもう一人俺が知らない男性が立っていた。

「エルフ?」

 そうその男性の耳は山田さんと同じエルフ耳だったのだ。

 顔も山田さんと同じくらい整っているが、山田さんよりはもう少しワイルドに思える雰囲気を漂わせているが、そのワイルドさを押さえるような眼鏡の存在が気になる。

 たぶんだて眼鏡っぽいがファッションなんだろうか?

「はじめましてだね。私は山田の同僚でこの世界担当の渡辺というものだ」

 この人が前に少し聞いたことがある山田さんのライバルの渡辺さんか。

 聞いていたイメージとの違いに少し頭をひねっている間に彼の説明が続いた。

「細かい挨拶はまたあととして現在わかっている範囲でだが、田中さんの世界が転送装置でつながる範囲に入るのは約一週間後になる予定だよ」

 一週間後か、結構長いな。でもコレでなんとか命拾いはしたと思う……でも。

「一週間も学校休んだらまた補習地獄じゃないか」

 その事に気がついて俺は心底げんなりした声でため息をつく俺だった。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


 俺たちがそんな話をしている一方では

「ふぉっふぉっふぉ。そろそろワシも紹介してほしいのう……」

 テーブルの際奥に座っている老人が寂しそうにつぶやいていたのを誰もが気がついていなかった。


 読んでいただきありがとうございます。


 お盆で部屋に友人が泊まりに来たり親戚付き合いがあったりで書く時間がなかなかとれず更新が遅れてしまっています。

 自分的には書き始めると一気に二時間くらい集中して書き切るタイプなので十分くらいの細切れの時間ではなかなか筆が進みませんね。


 というわけで世界樹の加護の発動です。

 加護が切れると田中くんはどうなってしまうんでしょうね。

 そしてついに日本名以外の名前が登場しました。

 吉田さんの本名については最初本名があってそれににた日本語名を考えるという流れで命名されました。

 妹さんとナイスバディのお姉さんの名前は次回? お姉さんまだ一言しゃべっただけですけど。

 あと吉田世界の頂点であるはずの爺ちゃんがかわいそうです。早く気がついてあげて!


 それでは今日はこのへんで。




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