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エルフの山田さん(自称)~貰った盆栽を育ててたら、いつの間にやら世界を救っていたようだ~  作者: 長尾隆生@書籍版「ハズレ師匠」10月20日発売
第四章 自称女神と異世界旅行?

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日時は電報で連絡です。

 あのファッションショーの後、俺は佐藤さんからお礼にとシークレットシューズをもらった。

 実はあれは佐藤さんが自腹で買った物だったらしい。

 ショーの後のテンションが高まった状態で素直に受け取ってしまったが今は後悔している。

 だって部屋にシークレットシューズが置いてあるなんて恥ずかしいじゃないか。

 というわけで俺はそのシークレットシューズを棚の奥にしまい込んだ。

 またこれを使う日が来るのだろうか?

 むしろその日のために履いて歩く練習をしておくべきではないのか?

 ショーの時は山田さんに助けられたが、一人で外に出る時にはそんな助けは期待できないんだぞ。

 そんな葛藤もあったのは内緒だ。

 まぁ、そもそも俺が一人で出歩く時にアレを履く訳はないんだが。


 しかし棚の奥が気になって仕方がない。

 ちょっとだけ履いてみようかな?

 俺は誘惑に負けて棚の奥からシークレットシューズを取りだす。

「ちょっとだけ、ちょっとだけだから」

 誰に言い訳してるのかわからないが、そんな事をつぶやきながらシークレットシューズに足を入れる。

 立ち上がると少し高くなった視線がとても新鮮に思える。

 たったの五センチ、されど五センチ。

「少しだけ外に出てみようかな?」

 俺は一体だれに断りを入れているのだろうか。

 ミユ? ミユは今高橋さんの部屋に飛行ユニットの調整しに出かけているのだ。

 つまり今俺の部屋には誰もいないのだ。

 とりあえずズボンの裾をチェックして外から見ておかしくないかを確認してノブに手をかけて回す。


 ガチャッ。


 そのまま扉を開ける。

「少しだけアパートの周りを歩いてみるかな」

 俺は五センチ上の視線を楽しむことに決めた。

 その決意の前に最初に立ちはだかったのは階段である。

 視点が少し上がるだけでコレほど恐怖を味わうのか。

 ゆっくりと階段の手すりに捕まりながら一段一段降りていく。

 こんな所を誰かに見られたら……。


 ガチャッ。


 後ろから扉の開く音が聞こえた。これは山田さんの部屋っ。

 俺は慌てて階段を数段降りて隠れる。

 一瞬足を踏み外しそうになって焦るが山田さんにこの姿を見られるよりマシだ。

「田中さ~んいらっしゃいますか~?」

 どうやら俺の部屋に向かったようだ。

 その隙に階段を一気に降りる。

「ふぅ、ヤバかった。しかし山田さんいったい何の用だったんだろうな。まぁいつも特に用事無くても来るんだけど」 

 俺は少し乱れた息が落ち着くまで階段の陰で休んでからそっと二階を覗(うかが)う。

 もう山田さんの姿は見えない。

 俺がいないことがわかって部屋に戻ったのか、もしくは高橋さんの部屋にでも行ったのか。

 もしかしたら俺の部屋で帰りを待っている可能性もあるな。

「鍵かけてこなかったしな」

 とにかく誰にも見つからないように周りを見ながら俺はアパートの敷地を出る。

 外に出たはいいが特に目的はないので少しぶらついて五センチ高い視界を楽しむことにする。

 まだ足元は少しおぼつかないが段々慣れるだろう。

 本当はアパートの周りを一周してから帰るつもりだったが敷地の外に出ると気が大きくなるものだ。

「そのうちコレ履いててもスキップくらい出来る様になるだろうな」

 出来た所でどうするんだ?とも思ったが、せめて軽く走れるくらいにはなりたいと思う。


 気がつくと俺はいつもの公園にたどり着いていた。

 そもそもこの街に引っ越してきてからほぼ引きこもり生活をしていた俺だ。

 知っている場所なんて極端に少ないのだから当たり前の結果だろう。

「このままブランコで立ち漕ぎとかしたら楽しいかな?」

 相変わらずこの公園には人がいない。

 試してみるなら今がチャンスだ。

 俺はブランコに一直線に向かうと思い切って立ち漕ぎを始めた。

 最初は少し怖かったが徐々に慣れてきて、やがてシークレットシューズを履いているという感覚すらなくなってきた。

「小学校以来の立ち漕ぎだなぁ。今やっても結構楽しいもんだ」

 漕ぐのをやめるとやがてブランコは静止する。

 流石にこの靴で飛び降りるなんて出来ない。

 そもそも最近の公園ブランコはそういう危険な遊びが出来ないように周りに柵があるので不可能なのだけど。


 慎重にブランコの鎖を握りながら足を地面におろしそのままブランコに座る。

 誰もいない公園とはいえ高校生がブランコで大はしゃぎとか恥ずかしすぎる。

 今になって羞恥心が襲ってくるが後の祭りだ。

 とにかく誰にも見られてなかったのだから忘れよう。そうしよう。

「田中くん?」

「!?」

 ふいに後ろから女の子の声がした。

 俺は「ギギギ」と音が聞こえそうな動きで後ろを振り返るとそこには委員長が立っていた。

「い、委員長。なんでこんな所に?」

 もしかして俺がブランコで遊んでる姿を見られたのか。

 だとしたら明日学校で話題にされてしまうんじゃなかろうか。ヤバイ。

「お買い物に行くところだったんだけど前を通ったらブランコに田中くんが座っているのが見えたから声かけてみただけなんだけど?」

 よかった、俺が立ち漕ぎしている姿は見られてなかったようだ。

「なるほど」

 俺は自分の黒歴史を他人に見られてなかったことに安堵しながら立ち上がる。

「それで委員長は俺に何か用でもあるの?」

「とくに用ってほどの事は無いんだけどね。あ、そうだ」

 委員長は何か思い出したのか懐から手紙を取りだす。

 おっ、俺へのラブレターかな? んなわけないか。

「高橋さんから今度彼女の故郷の名産品を一緒に食べようって手紙が来てたんだけどね」

 名産品ってあのエルフの里名物シリーズか? あんな色んな意味でヤバイものの被害者をさらに広げる気なのか?

 それとも俺以外のツッコミ役でも求めているのか?

「今日、高橋さん家にいるかな?」

「俺が出てくる時はいたよ」

「じゃあ買い物の帰りに寄らせてもらうね」

「大丈夫だと思うけどなんで?」

 もしかして今日その名産会でもするんじゃないだろうな?

 そんな話は聞いてないけど、まさかミユが高橋さんの部屋に行った本当の理由って……。

 俺がそんな疑心暗鬼に陥っていると委員長が訪(たず)ねる理由を教えてくれた。

「開催日については電報で連絡するとか書いてあったから」

「電報?」

「そう、電報。でね、そんな面倒な事するくらいなら携帯番号とか連絡先教えておこうと思ったの」

「たしかに。なんでいまどき電報で連絡って、結婚式とかならいざしらず」

 俺のように携帯を持っていないのならわかる……いや、それでも家電(いえでん)があるから普通電話で連絡するだろう。

 というか住所は知ってるのに電話番号すら委員長から聞いてなかった事のほうが驚くわ。

 でもまぁ高橋さんはたしかスマホを持っていたはずなので委員長が直接教えに行くとすればこれからは直接やり取りできるだろう。

「じゃあ、俺も今から帰るから帰ったら高橋さんに委員長が来るって伝えておいてやるよ」

「本当? ありがとう、おねがいするね」

「まかせとけ」

 そう言ってさっそうと委員長の前を通り過ぎアパートへ向かう。

「あっ、田中くん」

 突然委員長が俺を呼び止める。

「ん?何?」

 少し格好をつけて振り向くと委員長が不思議そうな顔をして言った。

「なんだか田中くん、今日背が高くない?」

「き、気のせいだよ。それじゃ俺急ぐから」

 委員長の言葉に自分が今シークレットシューズでチートしていることを急に思い出し恥ずかしくなって逃げ出した。


 いつの間にかシークレットシューズを履いて走れるようになっていたことに気がついたのはアパートにたどり着いた後だった。

 そしてアパートの二階にはいつもの様にイケメンな笑顔を浮かべた山田さんが、何故かミユを肩に載せた状態で俺に向かって手を振っていた。

 その笑顔が俺にはシークレットシューズで俺、背Takeeeeeを楽しんでいた事全てを見透かされている様に思えて顔が赤くなるのを感じた。



 

 お読みいただきありがとうございます。


 電報というと隣のトト◯が一番先に頭に浮かびますが皆さんはどうでしょう?

 今の時代だと結婚式や葬式くらいでしか耳にしませんよね。

 今回はほぼ田中くんだけのお話という少し変則的な物になりました。

 そしてまた黒歴史を積み上げる田中くん。

 委員長と高橋さんの関係については「【閑話】高橋さんのとある一日。」をご参照ください。


 ツイッター「@NaGaO_KaRi」でやってます。

 更新予定など呟いていますのでお気軽にフォローしてくださいませ。


 勝手にランキング登録しています。現在ローファン8位ありがとうございます。

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