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こんにちは。隣に越してきた山田です。☆

初投稿作品となります。


※9/17 一話を改稿して長くなったため2話に分割しました。2話が元の一話目後半となっております。

 何も変わらない毎日だった。


 その日までは。





 夏も終わりが近づいて耐えられないほどの暑さも和らいだ午後、何の前触れもなくアパートの俺の部屋の呼び鈴が鳴った。


 ぴんぽーん。


 俺は無駄に時間を潰すだけのために見ていたネット動画を一時停止して玄関へ向かった。


「密林さんから荷物でも届いたのかな?何か注文してたっけ?セールスだったらぬっころす」


 ぶつぶつ独り言を言いながら玄関のドアの覗き穴から外を見る。

 そこには何やら立派な包み紙で包まれた大きめの箱を持ったスーツ姿の男が居た。


 どうやら密林さんからの荷物ではなさそうだ。

 だとすると新聞屋とかセールスか? だったらお断りだ。


 俺は少し考えた後一応声をかけてみる。


「何か御用ですか? セールスならお断りですよ?」


 微妙に不機嫌さが声に出てしまったようでドアの向こうで男が逡巡する気配を感じる。

 少しの間を置いてドアの外の男が返事をした。


「あ、あのすみません。わたくし昨日隣に引っ越してきた山田と申します。引っ越しのご挨拶にうかがわさせていただきました」


 少し高めだが、それなのに落ち着きのある嫌味を感じさせない声音で男はそう言った。


 そういえば昨日隣の部屋に誰か引っ越してきたらしいと、学校から帰ってきた時に表で会った一階に住む佐藤さんが言ってたのを思い出す。



 二階建てのこのアパートはそこまでボロいという外観ではないけれどそれなりの年月が経過している。


 立地も都市部から少し離れている為に部屋数10の内、入居者は現在3人しか居なくてこの山田さんで4人目となる。

 空き部屋に入る住人も久しく無く、一部の部屋は大家さんの物置状態という体たらくだ。


 だが、当の大家さんは現状に特に不満も無いようで無理に住人を集めようとしていない。

 すでに悠々自適の年金暮らしをエンジョイしているのだろう。

 そんなアパートの久々の住人という話に俺は自然に心が緩んでいた。


 そして「今の御時世、引越しの挨拶とか丁寧な人だな」と思いつつドアのロックを外し、外の山田さんに当たらないようにそっと開く。


「どうもわざわざすみません」と頭を掻きつつ山田さんを見上げる。


 山田さんは身長180センチ以上もある長身だったからだ。

 因みに俺は165cm。中学時代のあだ名は想像通りだ。あえて言わない、言いたくない。


 見上げた先に有ったのは超絶イケメンの顔だった。

 そもそも彼の容姿を見る限り日本人ではなくどう見ても白人、それもアメリカ人というより欧州系かな? といった印象だ。


 自分の中の外国人イメージの少なさに歯噛みする。


 年の頃なら20代後半くらいだろうか?

 髪は綺麗なプラチナシルバーで、長髪をうまく頭の後ろで纏めている。


「こんにちは田中さん。引っ越しの挨拶が遅れてしまいまして、すみません」


 そんな完全美形外国人がナチュラルに完璧なネイティブ日本語でそう言った。

 しかも完全無欠のジャパニーズサラリーマンスーツ姿でだ。

 この顔、このスタイルでスーツ姿というのは中々のインパクトである。


「あ……こちらこそよろしくおねがいします。田中です」


 簡単な挨拶を済ますと山田さんは手に持っていた荷物を「これ、私の故郷の名物なのですが」と言って差し出してきた。


「気を使っていただいてすみません」


 こういう時のまともな返事の仕方を知らないのでしどろもどろになりつつお礼を言って受け取ると、山田さんは軽く会釈をして「今後とも宜しくお願いします」と爽やかな笑顔を残して去っていった。


 ガチイケメンの爽やかスマイルは反則だな、俺が女だったら落ちてたぞ。

 そんなことを考えながら俺は部屋に戻ってパソコン机にその贈り物を置いた。


「名物って言ってたな。お菓子かな? それにしては真四角の箱のお菓子とか珍しいな」


 そう、その箱は良く有るお菓子の長方形の箱ではなく正方形だったのだ。

 しかもお菓子の箱と言うにはかなり大きく、一回り小さな一斗缶みたいなサイズだった。

 重さもそれなりにある。


「とりあえず開けてみっかな」


 俺はそう呟くとそっと包み紙を破らないように剥がしていく。

 こういう時に綺麗に包装紙がけるとその日一日ラッキーな気分になれるのだ。自分ルール的に。


「え? なにこれ盆栽?」


 包み紙を開けると出てきたのは透明なケース。そしてその中には一本の小さな木。

 ただ普通の盆栽というよりも「この木なんの木気になる木」の木と言った方がピッタリな、一本の真っ直ぐな幹の上にもっさりとお椀を逆さにしたように葉が茂っている木であった。


「木のミニチュアかな? しっかし、すげー良く出来てるなぁコレ」


 その木のミニチュアの出来に感心しながらケースを持ち上げて色んな方向から眺めてみる。

 結果、ミニチュアと言うには生々しすぎるそれはやはり作り物などではなく本物の木だろうと結論付けた。


「こんな盆栽みたいな木もあるんだなぁ」


 しばらく眺めてその姿を堪能たんのうした後、ふと包装紙の中に一枚の紙が入っている事に気がついた。


「なんだこれ? 何語? フランス語かな? 読めないけど説明書っぽいな」


 そもそもアルファベットでも無いのだからフランス語ですら無いだろう。


 紙を手に取りあれやこれやと悩んでいたがさっぱり読めない。

 所々に図解があるので、かろうじて説明書らしいということが分かる程度だ。


「こんな文字見たこと無いぞ。ヴォイニッチ手稿みたいだ」

 

 仕方なくその紙を一旦放置して、盆栽の入ったケースをもう一度眺める。

 ケースを持ったままクルクル回して見ると、さっきは気が付かなかったがケースの後ろ側にスイッチのようなものが付いていた。

 たしか、さっき見ていた紙にもこのスイッチの絵が書かれていた。


「水やりとかの時にケースを開けるボタンかな?」


 とりあえず一旦ケースを机の上に置いてからそのボタンを押してみることにした。


「ポチッとな」


 ピカッ!


 押した瞬間、ケースが一瞬光った。

 だが、それだけでその後は何の反応もない。

 ケースも開く気配はない。


「ライトのボタンだったのかな?」


 押している間だけ光るタイプのスイッチかと、俺は確認のためにもう一度ボタンを押してみたが今度は先程のように光ることはなかった。


「一回で壊れたのか?」


 あれやこれやとケースをいじりながら悩んでいるとまた呼び鈴が鳴った。


 ぴんぽーん。


「はいは~い」


 俺は一旦ケースを机の上に戻してドアの方へ向かった。

 さっきと同じように覗き穴から外を見ると、ドアの外には先程去っていったはずの山田さんが居た。

 ドアを開けると彼はニコニコイケメンスマイルで


「先ほど渡し忘れたものがありまして」と言って名刺と一冊の本を差し出す。


「えっと、これは何ですか?」


「取扱説明書の日本語版です。それと私の名刺です」


 俺は受け取った名刺を眺める。

 そこには「ユグドラシルカンパニー 営業 山田」と書かれていた。

 完全無欠の外国人顔なのに「山田」という平々凡々な純日本人ネームに驚愕する。

 しかし名字だけで名前がないのが気にかかるが、まさか偽名なのかそれとも帰化した時にその名前にしたのか。


 それでも下の名前が無いのが気になる。

 もしかして「山」が名字で「田」が名前なのかな? 

 ヤマさん? どこぞの刑事ドラマに出てきそうだ。


 そこまで考えてから次に取扱説明書に目を移す。

【ミニ世界樹 取扱説明書】タイトルにはそう書かれていた。


 俺とミニ世界樹と山田さん。


 この出会いが何れ『世界』を巻き込む事になるなんて、その時の俺には知る由もなかった。


 読んでいただき誠にありがとうございます。

 この物語はハッピーエンドを目指して書き進めております。

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