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呪われたアルヴのプール地下4階。
階段を抜けた先が無限に続くような巨大な螺旋階段になっていて下は何も見えなかった。
「解せぬ!4階っていうより移動途中な気がしてならないにゃん!デュクシデュクシ」
「上と下に続いてるけどどっち向かう?」
「流れ的に下やろうな」
「これ戦う場所もないし移動するだけで終わるんじゃないか?」
「コレここから落ちても大丈夫なんやない?冒険者の肉体やし俺ら」
「暗いのもあるけど見えない高さは流石にまずそう」
「高さ検証してみる?」
ングは光源用のエレクトリカルファズを階段から体を乗り出して下に向かって発射した。
光が下の暗闇に向かって吸い込まれていき見えなくなってから5分がたった。
「なぁ、エレクトリカルファズで検証できないぐらい深いんじゃね?」
「せやなぁ、着弾後の光もないしな」
そのまま普通に降りることとなった。
下に降り続けて1時間螺旋階段とは別に上行の階段があった。
「ここやないか?」
「なんも仕掛けないで移動するだけだったな」
その階段を上ってみると地下3階に出され、まだストーンソルジャーが動けないでいる。
「いやいや、嘘やろ」
「見なかった事にして戻ろうぜ」
戻ってみたがまた地下4階の螺旋階段に出された。
「どういう事だろう、まさか無限ループしてる?」
「ビレゾンやな、でもそしたら俺が撃ったエレクトリカルファズはどこに行ったんや!」
「おぉん!それよりなんか巨大な鳥が羽ばたくような物音しないかにゃん?」
「上からくるぞ!気を付けろ!」
「なんだこの階段は!」
「せっかくだから俺はこの赤い扉を選ぶぜ!」
「お前ら余裕やな」
上から半透明で胸に赤い穴がある浸食された戦士のリトルドラゴンレベル60が飛んできた。
「まさか階段で戦うとは思わなかったわ、無機物モンスターゴーレムぐらいやないか」
「おぉん! あっれれ~おかしいぞ~」
「なんで小さいつが入るか知らないけど本物は入らないぞ」
「おうふおうふ、でも戦士職専門なのに飛行系のモンスター不利そう」
「寄せれば大丈夫やろ」
「リトルドラゴンの攻撃って毒ブレスだったよな、ブラゲインイミュニティかけるでゲインイミュニティ」
「OKこっち来い アンカーハウル」
リトルドラゴンの毒ブレスがブラに直撃する。
「おい、こっち来ないんだけど!」
「来ないならこっちから投げるしかないな ハンティングホーク」
「俺は投げ技持ってないんだけど!」
それからブラがタウンティングシャウトでヘイトを稼ぐもののこっちに近寄ってくる気配はない、俺とリトルドラゴンのリキャストタイム待ち合戦が続いた。
「なぁブラ、イルさんあいつが来ないならこっちから行けばいいんやない? キーンエッジ」
近接職であるから俺もブラも忘れていたが冒険者の体は屈強でこれぐらいの距離をジャンプすることは着地さえできれば問題ではないのだ。
「ングナイスアイディア!タウンティングブロウ」
ブラが一目散に走っていき大ジャンプしてリトルドラゴンに一撃を入れる。
「上に乗って攻撃出来たら楽なんだろうけど ワイバーンキック」
「俺とゆんさんがヘイト稼いどくから、その間に乗ればいいんやない?」
「おぉん!エンタなのにタウンティングするングすこ」
「それじゃいくで、パルスブリット ナイトメアスフィア パルスブリット マインドボルト パルスブリット」
「アサシネイト」
ゆんの武器持ち替え速度がだいぶ上がっている。
「マジで乗っかるのかよ、仕方ない オーラセイバー」
「俺もオーラセイバー」
リトルドラゴンが毒ブレスを吐いた瞬間一緒に別方向から大ジャンプした俺とブラ、俺は手刀でブラは剣でオーラセイバーを放つ。
俺は乗ることができなかったがブラは無事に乗ることができた。
「クロススラッシュ」
リトルドラゴンの上でクロススラッシュの2発を当てることに成功したブラだったが、その後にスキル無し攻撃を3発入れて階段まで振り落とされた。
その時上から物音がしてアイアンソルジャーが落ちてきて、その落下にングが巻き込まれて落ちていった。
「ングウウウウウウウウウウウワウウウウウ」
「なんで俺やねん!」
「アイアンソルジャーにまでタウントして一緒に落ちていくとか草はえる」
「いい奴だった」
3人がングを下に見送ったが上からングが降ってきた。
「あぁ、ここ無限ループなんだな・・・・・」
最初撃ったエレクトリカルファズは見えない高さでリトルドラゴンに当たっていたようだ。
「しかたない続けるぞ」
「ハンティングホーク」
「タウンティングブロウ」
ブラが大ジャンプして1発いれた次の瞬間だった。
上から落ちてきたアイアンソルジャーとングにリトルドラゴンがぶつかり落下していった。
低空飛行で飛びながら徐々に高度を取り戻してきてるリトルドラゴンが喋った。
「人の子よ帰れ、アルヴの罪を忘れたか」
「アルヴの罪なんて知ったこっちゃないね俺たちはクエストできてるんだよ ワイバーンキック」
「アルヴ族の事一番詳しいのは多分ングなんだけど落下していってるんだよなぁ」
あれ?ぶつかってからアイアンソルジャーが2回落下してきたけどングは落下してこない。
「おい、まさかング死んでないだろうな?」
「ちょいこの世界で蘇れるかわからないのにング」
「蘇れるよ?俺リアルシフト起きてから3回レイドで死んだけど生きてるもん」
「なんだって!?ゆんちゃん死んだことあるの?」
「おぉん!さっきも言ったけど3回」
ミナミにいた時から噂では聞いてたけど実際に蘇った本人と話しているのだ。
「嘘じゃないよね」
「もちろんだゲソ」
「本当にングは蘇るんだな?」
「ここはセーフゾーンなかったからキーエの大神殿で今頃寝てるんじゃないかなぁ、毒ブレス撃ってくるからちゃっちゃと片付けちゃって」
ブラにヘイトが行ってて毒ブレスは全部ブラに行っていたから会話に夢中だったが、無事だとわかればリトルドラゴンに集中集中。
「ライトニングストレート」
「シールドスマッシュ」
ジャンプしてスキルを放って着地してを繰り返していたがングから念話がなった。
「いやー死んでもうたわSAN値下がるわー」
「復活はやっ!まだリトルドラゴン中」
「んじゃ先にヴセのおっさんのとこ行っとるからあと任せたわ」
ングが生きてた・・・ていうか、生き返るの早い。
「おいング生きてたぞ!」
「生き返るのはや」
「だから言ったでしょ?早すぎ草はえる」
「とっとと片づけて戻るかドラゴンテイルスウィング」
「シールドスイング」
「やることなくて暇、JKになりてぇよぉ」
「弓でアイアンソルジャー狙ってどうぞ」
「マッジッデー しかたないにゃん アサシネイト」
速攻で持ち替えてアサシネイトを撃ってから弓を乱射するゆん。
ずっと上から下に無限ループで落ちてくるアイアンソルジャーは格好の的でしかなかった。
DPSを上げるのに腐食の槍の存在を思い出した。
「あともうちょい、ハンティングホーク」
「アンカーハウル」
リトルドラゴンに腐食のバッドステータスを付与しブラがヘイトを稼ぎ毒ブレスをガードする。
「ラスト ワイバーンキック」
リトルドラゴンを倒したら石化して落下していき、なんと地面が出てきた。
地面がエレベーターのように上がっていく。
「おぉん!アイアンソルジャー埋まってワロ」
土のエレベーターの上に登ってブラが石化リトルドラゴンの胸に赤き浸食石をはめると石化が解け透明だった部分が赤くなっていく。
「どこから来たんだっけ?上からってこと?」
「とりあえず帰れでいいんじゃない?」
「OK 帰れ!」
リトルドラゴンが飛んでいくと地面に水が張り始め階段だった岩が崩れ始めた。
崩れた岩が呪われたアルヴ族の力学魔道炉の破片でかなりの量だった。
「普通に宝箱とかの報酬でもらえるんだと思ってたけど、俺たち自体が力学魔道炉の中で戦ってたんだな」
「ふえぇ、汚染されそう」
3人でマジックバックに入るだけ入れてヴセヴォロドさんのところに行くことにした。
「おぉ待っておったぞ冒険者ラゴ、ブラ、AVON、先にングが赤き浸食石を持って帰ってきてな、これが研究に大役立ちしそうなのじゃ、して呪われたアルヴ族の力学魔道炉の破片は持ってきたかのう?」
持ってきた呪われたアルヴ族の力学魔道炉の破片を全て山のように積み上げるとヴセヴォロドさんは大喜びだった。
「おぉ、この量があれば3カ月ほど実験できるのう他の冒険者は頼むたびに1個しか持ち帰ってこなかったのじゃがお主たちが歴代で最高量持ち帰ってきた冒険者じゃろう、先代が生きているうちにこの量を一緒に研究したかったのう」
「先代ってヴセのおっさん何世なんや?」
いつの間にかングが合流している。
「ワシはヴセヴォロド家の8世じゃよ、後継ぎがおらんでなワシがこの研究の最後の代になるかもしれんのう」
「ほんまか」
「そうじゃ、大量に呪われたアルヴ族の力学魔道炉の破片を持ち帰ってきてくれたお礼にお主の武器を見てやろう」
「俺の武器か?淵より来る生霊の鎌っていうオーダーメイドなんやけど」
「何やらその武器は悪い魔力を感じるからのう、その武器は生きておるんじゃよ」
「生きとるのは元が生杖やしニュルニュルするし武器たべるから知っとったけど悪い魔力っていうのは爆発ぐらいしか思い浮かばへんわ」
「爆発はたいして悪いものではないのう、もっと悪いのは武器を食べる事じゃな!それだけじゃなくお主も食べようとしておる」
「武器がか?そんな話聞いたことないわ、この世界に来てから何が起こっても不思議やないけど」
「どうじゃ?この杖を1日だけワシに預けてみんか?」
「俺とヴセのおっさんの仲やしな、頼むで」
「ングいいなぁ俺もオリジナル武器ほしいんご」
「武器に食われかけとったみたいやけどな」
「ふえぇ、そいつは勘弁」
それから1日が経った。
「ングよ、杖の調整が終わったぞい」
淵より来たる鎌、秘宝級アイテム「呪われた千眼の生杖の呪いをヴセヴォロド8世が抑制した鎌。動力に魔道力学の小型魔道炉を使用している。キーンエッジを自身に使ったとき効果増加、耐久減少緩和。」
基本性能が向上しているだけでなくフレイバーテキストも変わっていた。
「封印に赤き浸食石の原理を応用しておるのでな、また立ち寄った時に持ってくるのもよいじゃろう」
ヴセヴォロドさんが咳払いをして続けた。
「ヤマト列島のアキバじゃったな、お主たちのような冒険者は初めてじゃったが、また来たら武器の調整がてら寄ると良い、また来るのを待ってるからのう」
ヴセヴォロドさんにフェアリーリングの行き先変更をしてもらい、俺たちは帰還呪文を使いヴセヴォルト家をあとにした。
ブラのアキバで売ってないもので儲けようという提案で俺たち4人はキーエでしか見たことをない鉱石を買いあさりアキバ行きのフェアリーリングの中へ飛び込んでいった。
アキバの町は円卓会議という会議が町を収めていてミナミのようなギルド統一などされておらず俺たちにとって住みやすい街だったが、ギルマスが居ないギルドはどこか寂しかった。