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呪われたアルヴのプール地下3階。
「今度は1本道か」
階段を抜けた先は巨大なドーム状の空間の中央をはしる大きな橋があり、橋の下は青白く光る水が流れている。
「汚染されてそう」
「落ちたら終わりかも知れんな」
「落ちたらバッドステータスうけそう」
歩きながら橋の中央付近まで来た。
「なぁ、そういえば赤き浸食石あと2個やろ?」
「んだな、でもなんで?」
「もしかしたら節約できるんやないか?倒す前に壁にはめるとか、持ち帰ったらヴセのおっさんも大喜びやろ」
「おぉん!流石にできないと思うけどやってみる?」
「やってみるかー」
「ん?暗くてよく見えないけど向こう側扉なさそう」
「奥にまたレバーぽいのあるけど、またモンスター降ってくるのかな?」
端についてみたが扉のようなものは見つからず木のレバーだけだ。
「他に行く道もないしレバー引くしかなさそうだな」
「はーい、俺がガッシャンしちゃうからねー」
レバーを引くと地震がして橋が回転しているのが分かった。
「酔いそう」
「こりゃ、でっかい仕掛けやなぁ」
回転が終わったが新しい道はなかった。
「おぉん!ラットマン降ってこなかった草」
「どうすんこれ?」
「道がないわけだし、回転したから戻ってみる?」
行く道がないため来た道を半分まで戻ってきたが扉らしいものが見え皆の足の速度が速まった。
扉を開けると似たような巨大なドーム状の空間に大きな橋がかかっていて橋の下は水が流れている。
「また上のフロアと同じような方向感覚系トラップか?」
「おぉん!上の部屋はもう飽きたンゴ」
「とりあえず行ってみよう」
橋の半分地点に今度は木のレバーがある。
「押してく?」
「とりあえずここから真っすぐ部屋見えるしそこ覗いてからでいいんちゃう?」
「そうだな」
真っすぐ進んでみたが、今度は橋のない巨大なドーム状のだだっ広い空間に出された。
「あたり?はずれ?」
「とりあえず中央まで行ってみいひんと分からんやろ」
中央まで行ったが何もなく戻ることにした。
「はずれやったな」
「さっきの部屋の中央のレバー引くか」
その時部屋の入り口から物音がした。
入り口付近の地面からアイアンゴーレム50レベル2体が出てきた。
「今度はゴーレム系なんやな、やっとゆんさんの言ってた無機物ダンジョン(?)ぽくなってきたわ」
「おぉん!浸食されてない俺の出番だ ガストステップ アサシネイト」
ガストステップで距離を詰めてアサシネイトを叩き込む、アサシネイトの即死判定はなかったが1匹のアイアンゴーレムに大ダメージを与えた。
「タウントよっろしくー ピーカーブー」
ピーカーブーはヘイト操作スキルで自身を透明化させることでそのヘイトを減らすことができるスキルでアサシネイトで集めたヘイトを下げるのに使った。
「アンカーハウル」
「キャストオンビート ソーンバインドホステージ キーンエッジ」
「ハンティングホーク」
ブラがヘイトを稼ぎ、ングが自分を強化して近接モードになり、俺が槍を投げた。
「HPもう少しやから俺が1匹もらうで、ん、なんや?」
ングが鎌で切りかかってる時にングの刃の部分が光り始めた。
構わずにングが切り刻んでいたが爆発を起こしそれとともにアイアンゴーレムのHPが0になった。
「何が起こったんや! パルスブリッド」
見た目こそ変化のないものの武器の耐久が気になったのでCRAZY Enchanterモードでパルスブリットを撃ちまくるング。
「おぉん!ングラングラ草はえる ステルスブレイド」
ゆんがアイアンゴーレムの裏に回り込んでステルスブレイドでダメージを与える。
「タウンティングブロウ フォートレススタンス」
タウンティングブロウでアイアンゴーレムを挑発してフォートレススタンスで防御力を上げる。
アイアンゴーレムのヘイトは数発受けたがブラのままだ。
「攻撃受けながらよくポーション飲めるよなブラ ワイバーンキック」
「腱鞘炎に慣れたのと一緒で慣れだよ」
ブラはかれこれ5年以上腱鞘炎になっていたがある日から慣れたといい始めて普通にゲームをプレイし始めた。
ブラが敵の攻撃を受けながらポーションをがぶ飲みしている。
「トドメ アクセルファング」
ゆんのアクセルファングで距離を取っていたところを急接近して切り、アイアンゴーレムのHPは0になった。
「ング武器大丈夫か?」
「見たところ耐久減ってないようやし大丈夫やろう・・・」
恐らく爆発した原因はングの杖の材料になったデュアルブレイドの効果がそうなのかもしれない。
デュアルブレイドのフレイバーテキストは確かこう書いてあった気がする「魔法都市ツクバの知恵が詰め込まれた試作型振動剣。試作段階のため動作が不安定で、ときどき爆発する。」
もしフレイバーテキストの文章が実体化しているならングの杖の材料になった千眼の生杖も危険かもしれない千眼の生杖のフレイバーテキストは確かこう書いてあった「一度に千人の心を見透かす伝承の杖。心への負担が大きく、常人が扱うと死に至るという逸話を持つ。」
元々の近接戦闘スタイルから魔法乱射のCRAZY Enchanterスタイルだけではなく地下1階の戦闘ではヒーラー(?)として活躍したングは日頃からオーバーワークだったのが更にオーバーワークなのである。
そんなことを考えているとングの鎌の中央に生えた目玉がこちらを見ている。
淵より来る生霊の鎌の元になった千眼の生杖に心を見透かされている。
こいつはもしかすると本当に危険な鎌かもしれない、もしングに忠告して使うのをやめさせたらングを殺しかねない。
「ングこのダンジョン終わったら杖の持つ場所に革巻いて持ちやすくしてやるよ」
「まじか、この杖持ってるとヌルヌルしてSAN値下がっとったから嬉しいわ、何気にMP消費も高い気ーするし」
千眼の生杖の心の負担とはMPの消費の事なのかもしれない、ならばMPを0にしなければ死ぬことはないのかもしれない。
「とりあえず前の部屋戻ってレバーやな」
前の部屋の中央まで戻ってきてゆんがレバーを引いたら地面が揺れて橋が回転し始めた前の部屋の位置を見ていたら右に約90度回転したのでこの部屋は残りは前と後ろしかなさそうだった。
「前と後ろどっちに進む?前が多分南で、後ろが多分北だけど」
「おぉん!方位磁石とか持ってきてないのに上のフロアでもだけど皆方角とか把握しすぎて怖い・・・・」
地下2階の時にブラが製図した部屋間の通路を省いた地図と最初から方向感覚が狂ってないなら北に向かってこのフロアに来たことになる。
それから前の橋の時に確認出来なかったが最初の部屋も橋が右に90度回転したなら方向はあっているはずなのだ。
地面に製図したかったが岩でできた橋なのでできそうになかった。
「方角があっとるかわからんけどこういう時は北やろ、知らんけど」
「北ってことは、後ろ?さっきの部屋から来た道行くの?あぁ地面動いたから来た道じゃないのか」
製図しないと俺も方角が分からなくなりそうだった。
「とりあえず北らしき場所に向かおう」
北の部屋に入ってすぐに扉が閉まり部屋の中央の地面から半透明で胸に赤い穴がある浸食された武器のアイアンソルジャーレベル60が出てきた。
「あいつ地面から出てきたで?あの穴に押し戻せば赤き浸食石持ち帰れるチャンスやないか」
「アイアンゴーレムの上位なのに透けてるってどういう事だ?鉄じゃないのか?」
「どうやって落とすんだ?」
「ブラがここで引き付けてから反対側からゆんさんとイルさんが引き付けて、後は俺とブラで後ろから落とすって作戦でどうやろ? 」
「了解した ファントムステップ」
「ガストステップ」
俺もゆんも移動系のスキルを持っているので回り込むのは得意だった。
「呼ぶぞング タウンティングブロウ キャッスルオブストーン」
キャッスルオブストーンは10秒間相手の攻撃を無効化するスキルだ。
アイアンソルジャーは攻撃力が高いので無敵になって攻撃を受けている最中に後ろに回った俺とゆんが誘い出す。
「ハンティングホーク ラフティングタウント」
ハンティングホークで裏にいることを気付かせてラフティングタウントでヘイトを稼ぐ。
「ステルスブレイド」
ヘイトが完全に俺とゆんのほうに向いた。
「ゆんさん足や、足もろくして落とそ」
「OK!アサシネイト」
「ワイバーンキック」
「傾いた、ブラ頭狙いや」
「シールドスマッシュ」
「パルスブリット ナイトメアスフィア パルスブリット」
ゆんの攻撃以外ダメージは入っていないもののアイアンソルジャーは状態を崩し穴の中に落ちた。
地震がして部屋の奥に階段が出てきた。
「あっけなさすぎやけど、これでお土産できたわ」
「アイアンソルジャーまだ動いてるから早く行こうぜ」
アイアンソルジャーが穴から手を出して暴れていた。