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「おぉん! アキバにいぎたいにゃん」
ゆんがカレーポーション用の肉汁を生産してる時にニャンチュウみたいな声で叫んだ。
「アキバに行くってどうして?」
一番近くでカレーポーションを煮込んでいたブラが反応した。
「フィギュアが欲しいおぉん、それから他にも食べ物が欲しいおぉん、それからフィギュアだろ?」
「フィギュアが欲しいのはわかったんやけど、ミナミがギルド合併すごかったからアキバもそうかもしれへんで?ユークライネス姫国きてからヤマトサバと念話通じんからわからへんけど」
「そもそもウクライナからアキバまでどうやっていくんだ?」
ニンマリしたゆんは答えた
「ヴセヴォロドさんのアルヴ族研究クエストのクリア報酬のフェアリーリングの行き先変更でOK」
「ヴセなんだって?」
「聞き取れへんかったわ」
3人とも初めて聞く名前に初めて聞くクエストだった。
「リアルシフトが起こる前からキーエをホームタウンにしてるからいくつかクエスト知ってるんだけど、プレイヤーが食料不足でキーエから離れてる今なら人気クエストも受けれるんじゃないかなー」
「人気クエストって言っても俺らしらへんけど、どんなクエストなん?」
「チェルノブイリって分かるよね?こっちではチェルノって地域だけど?原発がダンジョンになっててクリア報酬の呪われたアルヴ族の力学魔道炉の破片を持ち帰ってきてヴセヴォロドさんが1日7名までフェアリーリングの行き先を変えてくれるんだおぉん」
「日本サバ帰れるんか、難易度はどうなん?」
「敵のレベルが60ぐらいのダンジョン」
「1パーティー6人なのに7人行けるって変わってるな」
「西欧サバには国が一杯けどロシアサバにはユークライネス姫国より初心者向けのところが一杯あるのよ、だからウクライナで始めた初心者とかを他のサバに連れていくときに1パーティープラス1人連れていけるわけだおん、西欧サーバーでももっと初心者向けのエリアもあるけどね」
「ゆん、特別なギミックとかあるのか?」
ブラは普段はノウキンだがギミック系のダンジョンが大好物だったりする。
「戦士職、武器攻撃職、回復職、魔法攻撃職が各1人必要なぐらいかな?」
「回復職が1人かけてるじゃん、回復職探さないといけないけど冒険者この国少ないじゃん」
ブラが落ち込んでいるとングがガッツポーズした。
「俺の出番やな、多分俺のサブ職業オカルトダブラーの力で行けるやろ知らんけど」
「おぉん!ングラングラオカルトダブラーだったわ草はえる」
「前の名前ングラングラちゃうって」
「んじゃ一応クエ受けてこようか」
ブラがやる気を取り戻した。
「ヴセヴォルトさんって大地人原発の研究してるのに何でキーエから方面の北やなくて南のほうにあるん?」
「ヴセヴォロドさんね、現実でいう南ウクライナ原発あたりに住んでるから仕方ないおん」
「まさかクエストの目的地よりクエスト受けに行く場所のほうが遠いとは思ってなかったわ、ゆんちゃんやけにウクライナの地理詳しくない?まさか住んでるの?」
キーエからチェルノのダンジョンまでは馬で1時間半だがヴセヴォロドさんの住んでいる南ウクライナ原発付近までは馬で5時間ほどで、食用のカレーポーションを噛みごたえのあるゼリー化させるのに冷やしながら移動しているため移動に2日かかったがチェルノブイリから少し離れているため果実がなっている木々がいくつか生い茂っていて久しぶりにフルーツ生活に戻った気分だ。
「チェルノブイリまで行くときはポーション冷やさないで行こうぜブラ、久しぶりにカレー以外の食べ物も確保できたし」
「何事も備えあれば憂いなしって言うけど、移動しながらやるもんじゃないなコレ」
馬車でなく普通に馬で行っていたら召喚時間は6時間なのでクエストを受けに行くので5時間、機関呪文でキーエに戻ってから馬で1時間、チェルノに行く途中で馬の召喚時間は切れるが馬で30分の距離だから歩いて行けばギリギリ日が暮れるまでには到着したのだ。
「見えてきたわ、ん?まるでマイハマのエターナルアイスの城みたいなので覆われとるわ」
巨大な湖がありその奥に2つの丸い巨大な筒のようなものがエターナルアイスで覆われていて、その間の建物がヴセヴォロドさんの住む場所だった。
「ついたで」
手綱を握っていたングが肩を鳴らしながら降り、それに続いて俺たちも降りた。
「この湖の魚なら食べられるんやないか?ゆんさんが刺身にして、刺身ぐらいなら作れるやろ」
「無理だわ、魚の解体がまず無理」
そんな会話をしていると建物から1人の老人が出てきた。
白いローブに白髪に長髪、映画などで見たことがあるような如何にも賢者のような姿だった、ヴセヴォロド魔法学者レベル32。
「冒険者の方々よ、よく来られたここに冒険者が来るのは2カ月半ぶりになるじゃろうか?2カ月半ほど前は毎日冒険者がわしの研究を手伝ってくれていたんじゃが、ここ最近めっきりでな待っておったよ」
ングを見てヴセヴォロドさんは目を輝かせた。
「おや、魔法の使えるものもおるのじゃな、2カ月半前に大革命が起こってから冒険者はクエスト以外に話もできると聞いておるからワシは楽しみで仕方がなかったのじゃ、お主得意魔法はなんじゃ」
「キーンエッジやな」
ングの答えにヴセヴォロドさんは目を輝かせた。
「ワシの専門は魔法増強力学じゃ特に物の力を上昇させるものに関しての研究が好きでな、お主からは他の冒険者の魔法使いにない特別な力を感じるのう、冒険者が使える魔法は1人につき冒険者は職業と呼んでおるのじゃろうか?決まった系統の魔法しか使いこなせないというがお主はエンチャンターでありながら回復系の魔法も微弱だが扱えるようじゃのう」
「禊ぎの障壁とハートビートヒーリングとリアクティブヒールぐらいやけどな」
「お主、その魔法の力を強めてみたくはないかのう?」
「クエスト受けに来てんけど、これは俺の趣味で覚えてる程度やから後回しでいいん」
「趣味じゃと?それなら最後まで聞くことじゃ、そもそも魔法の始まりとはな古代アルヴ族が作ったものでなワシの研究は古代アルヴ族の魔力が収束する装置の原理の解明でなここにそれを使った後があるのじゃがチェルノにある魔道炉は魔力が膨張して抑えきれなくなった形跡があるのじゃ、その魔道炉の欠片を集めて力を収束させていたのになぜ膨張したかを調べるのがわしの課題でな・・・・・」
「いや、だからクエストをだな」
俺もブラもゆんもヴセヴォロドさんの話が長くなると思ってングを置いて馬車に戻ることにした。
「おい、裏切り者置いて行かんでくれぇえええええええええええ」
「そう大声を出すもんじゃないしっかり聞くんじゃ、どこまで話したかのう忘れたから最初から話すぞい、そもそも魔法の始まりとはな古代アルヴ族が・・・・・・・・・・」
ングを置き去りにして数時間がたった、馬車に戻ってから昼食に果物を食べブラはポーションも飲んだが、少し睡魔に襲われながらも襲われながらも広大なヴセヴォロドさんの庭を散歩中である。
「ングも災難だよなぁ」
ポーションを飲み歩きしながらブラが言った。
「おぉん、魔法の始まりとか原理とか興味ないもんね、同意するけどルセアートみたいな鎌もってるングだもん魔法使いが鎌持ってるって秘宝級かなんか?それぐらい持ってる廃人なら興味持たれてもしょうがないんじゃね・・・・」
「ルセアートとか外国人の個人ブログでしか見たことないなレイドあんまりしないし、でもングのあれは秘宝級じゃないぞ魔法級だしエルダーテイルの世界に来てから作ったものだし」
「いやいやご冗談を、普通の鎌ならいざ知らず鎌でありながら杖とか秘宝級か幻想級しか聞いたことないよ?」
「俺の奇岩のスロースピアとングの淵より来る生霊の鎌はこっちの世界に来てからのオリジナル品だよ、ブラのカレーポーションみたいなもん」
「あ~心がぴょんぴょんするんじゃ~、オリジナル武器ね俺も欲しい」
「そろそろングの事見に行ってみる?」
ブラの一言で戻ってみることになった。
ヴセヴォロドさんの庭を散歩し見て思ったが、広大な土地があるのに人っ子1人もおらずもしかしたら2カ月半ヴセヴォロドさんは話し相手がいなかったから話し相手ができたのが凄く嬉しかったのかもしれない。
「・・・・して強化魔法も脈動回復魔法だけでなく力が収束するタイミングが合ってじゃな運用次第ではマナ効率も高まるというわけじゃ、わかったかのう?」
「いい話が聞けたわ、ありがとなヴセヴォルトさん」
「わかってくれたならいいが、ヴセヴォロドじゃ」
ングは最後まで話を聞き切ったようだった。
なぜかその表情は笑顔で、こっちに気が付いて手招きした。
「レベルしこたま上がったわ、オカルトダブラーのレベル43やったやろ?ヴセヴォルトさんの話きいとったらレベルが9も上がって52になったん」
オカルトダブラーはングのキャラ作りの為に設定した職業で40以降のレベリングが辛いとされていたがレベリングの条件に強力な魔法を聞いたり見たり体験するなどのレベリング方法がありヴセヴォロドさんの話はオカルトダブラーのレベル上げにぴったりだったようだ。
「それだけやないで、ハートビートヒーリングだけ初伝だったのが中伝まで使えるようになったん」
オカルトダブラーは他の魔法攻撃職または回復職のスキルを一部だけ使えるが設定上初伝までしか使えないはずだが、大災害後エルダーテイルが現実となった今はその常識は通用しないようだった。
「マニアックな話やけどな、ヴセヴォルトさんの言ってた魔法力学の波動が少しわかった気がするわ、中二病やな」
最初は全然聞いていなかったがしっかり聞いて原理もある程度理解しているようだった。
「してお主ら確かワシの研究の材料集めを手伝ってくれるんじゃったな?」
「せやで、魔道炉の欠片取ってくるのはまかせてな」
「ならお主らにこれをやろう、今日は久々に冒険者がきたからのう帰りはこれを使うといい、キーエまでは冒険者のお主らは確か帰還呪文が使えるのじゃったのう?」
ヴセヴォロドさんはローブの袖から転送石を取り出した。
「転送魔法は苦手じゃがこれぐらいならいつでも作れるのでな、持っていくとよい」
「今までに見たことないアイテムやな、ありがたく使わせてもらうで」
「それでは行ってくるのじゃ、楽しみにしておるからのう」
俺たちは帰還呪文でヴセヴォロドの家をあとにした。