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「スバ君を探しに行こうと思うんやけど」
ングがアキバの街に帰ってきて最初に言った一言がこれだった。
「探しにって言っても大災害の時いなかったんじゃ?」
大災害直前に別キャラでログインしてた自分はフレンドリストにそもそもスバ君はいなかったが、イルさん、ブラ、ングの3人はいない事を確認済みのはずだった。
「それが大災害直前の夜勤中に会社のPCからログインしてたらしいんだわアメリカサバやけど、お米さん詳しく」
隣にいたタイ米という名前のエルフでソーサラーの男が笑いながら少し枯れた声で話し出した。
「やったね、大災害直前までジャン・ドラポでムルティのギルマスとSOGって子と遊んでたんやけどな、俺とSOGだけフェアリーリングでヤマトサバまで帰ってきたのよねー」
お米(タイ米)さんとSOGさんはムルティの一部の知り合いで、お米さんとは僕とイルさんとングが仲がいいがスバ君とはあまり面識がなく、SOGさんはスバ君とイルさんとブラが仲がいい、イルさん繋がりで結成されたパーティーだったようだ。
「ジャン・ドラポがどこら辺かわからないや、ゆんちゃんどこ辺り?」
「おぉん、モントリオールだからカナダ南東の国境境かな」
「ゆんさん相変わらず世界地図強いな」
「お米さんはングと一緒に帰還呪文で帰ってきたけどツクバで何してたんだ?」
「そらイル君きまっとるやろ!お米を美味しく食べる為に大洗の養殖の技術を大地人と共同開発中なんやけどな、日の出とともに起動するマジックアイテムと召喚したサラマンダー使って自動に日の出に魚に餌をあげる回路を作る資料集めにツクバの学問ギルドの協力を得よう思ってなー」
大洗が養殖に向いているかどうかは分からないけど、アニメ効果で有名になった漁港で大災害が起こってからも魚を取るのには適してそうだ。
お米さんもイルさんと同じ炭水化物が大好きだったので、お腹がへこまないことが悩みに感じていそうだった。
「同じお米愛好家として、ぜひ開発してもらいたい」
「イルさん、お米さん話ずれてるよ」
「おぉう、ギルマスの事やったね、大災害で外国サバと連絡とれんくなったのは分かっとるから多分そのままアメリカサバにおるんやないかなー」
「ロデ研に引き抜かれそうになってたけど、やることなかったからこのままだったらロデ研でポーション作ってることになってただろうから探しに行こう」
僕が知らない間にブラはカレー味のポーションの開発などからロデリック商会から注目されていて引き抜かれそうになっていたようだ。
「ブラそんなことになってたの」
「ワロタ、俺がツクバ行ってるうちにそんなことに」
「まぁ、俺はこの事言いに来ただけなのよねー、ほいじゃ自動餌やり機の作成に行ってくるわ、まさかギルマス戻ってきてないとはねー」
「お米さんありがとう、ギルメンの19サマとゆきなによろしく」
19サマは僕が知らないメンバーだった。
僕たちはギルドホールでコタツに入りミカンを食べながら話していた。
「ング探しに行くって言ってたけどどうやって」
「フェアリーリングしかないやろ、ウェンの大地までやし」
「おぉん、今度こそヤマトサバとお別れかな」
「このキャラ初の海外サバかぁ」
「お茶は嬉しそうだな」
「もともとフェアリーリングでみんなを探し出す旅に出る予定だったからね」
「納得」
「問題は食料やな」
「米はジャポニカ米じゃないといけないから大量に買うとして、ブラカレー味のポーション以外は作れるようになった?」
「クリームシチュー味のポーションなら」
「カレーとクリームシチューか子供の頃だったら夢のような生活だったんだけどなぁ」
「せやな、料理できん料理人ならおるけど」
みんながゆんちゃんを見ている。
「おぉん・・・だ、誰の事かな・・・」
「とりあえず、保存食をリオーラのギルドで作ってもらおう」
「一応料理人のレベル上げてたのとご飯は炊けたから茹でるぐらいならできるおぉん!」
「茹るだけで食べられるもの作るのにも月の兎だな」
「せやな」
「うん」
知り合いの一番料理に強いギルドが月の兎になっていた。
僕たちは月の兎のギルドホールではなく、ラーメン屋月の兎に来ていた。
「リオーラ、俺たち海外サバ行こうと思うんだ」
「えぇ、アキバからでるの?」
「俺たちを世界が待ってるんだ」
「冗談は置いといてなんで?」
「ギルマスがアメリカサバにいるっぽいんだよねぇ」
「ギルマス探しか、海外サバにいるって根拠は?」
「スバ君とソウジとお米さんが大災害直前までアメリカサバで狩りしてたっぽくてな」
「お米さんは知らないけどSOGさんなら知ってる、そっかー」
「とりあえず、保存食作ってほしいんだけど」
「チャーシューと味付け卵なら余ってるけど、長時間持ち運べるものかぁチーズとか?」
「チーズは素材アイテムだから買い出し行けば普通に手に入るやろ」
「そっか、んじゃどうしようかなぁ」
「月の兎ラーメンのスープが欲しいおぉん、料理人レベル足りないかもしれないけど温めることはできる多分」
「それじゃ温めてみようか?」
月の兎では多少の調理スキルがあれば持ち帰っても月の兎の味を楽しめるキットも販売中である。
「この汁を温めて、この瓶の中身を汁に入れて混ぜると完成するように調合してあるんだけど、麺は別で茹でてね」
「おぉん、できた茹でるのは任せて」
麺は黒いドロドロになった。
「スープ温めるのはできるみたいだね、麺は茹でれなかったけど・・・・」
スキル的な意味で僕たちの中で一番料理できるゆんちゃんはスープまでは温められた、これはラーメンライスフラグ。
「ゆんちゃん茹でれなくてもご飯炊けるからラーメンライスでいいんじゃないかな」
「おぉん!そうする」
「なんでや!お米炊くほうが難しいやろ!」
「リアルで炊いてたしお米のほうが楽だにゃん」
「マジか」
「とりあえず、カレーにクリームシチューにラーメンライスにチャーシューに味付き卵がそろったわけだけど、あとは何もってこう?」
「おぉん、干物」
「それなら長期保存が効くな、次はお米さんのギルドかな」
「大洗まで行くんか?」
「保存食も美味しいほうがいいしな」
1日後、港町オオアライ。
「来る途中梅干し買えて良かったね」
「ミトによって正解だったわ」
「おーい、まっとったよー」
先にお米さんに念話していたのでお米さんが出迎えてくれた。
「お米さん、自動餌やり機うまくいったん?」
「おぉう!ングのおかげでうまくいったわ」
移動中にングに聞いたがお米さんのギルドの保有する自動餌やり機の日照時間の調整はングがやったらしい。
「とりあえずしらす干しとかスルメとかホッケの一夜干しとか用意できたけど、保存食はあんまり作られてないんだよね」
「買えるだけ買わせてもらうわ」
「それにしてもアメリカサバ行くんか、思い切ったことするなぁフェアリーリングどこと飛ぶかもわからんのに」
「何しでかすかわからんのがうちのギルドやしな」
「特にゆんちゃんが何しでかすかわからんからな」
「おぉん、未だに動画UPしたの根に持ってる非公開だったのに」
確か前に歌詞の頭だけ声が大きくなってすぐ声が小さくなるイルさんの歌をサイトにUPしたのがゆんちゃんだ・・・・。
「それでも接続数30人いったわ」
「やったね!接続数30人、大災害前やったら俺もみとったのに」
「見ないで結構です」
「そういやフェアリーリング入る前にこっちで魚食べてかん?魚の養殖は機械が整ったばかりでまだ始まっとらんけど牡蠣にマダコにイカにフグ色々あるで」
「なにそれ寿司食えるやん」
「さっすがングようわかっとる!実はうちのギルドで寿司屋さんもやっててなアキバじゃ食えへんで」
僕たちはお米さんのお店で晩御飯を食べてからフェアリーリングに向かった。
ついにこの時が来た。
大災害後フェアリーリングに飛び込むのはこの中で僕が初めてになる。
「・・・・・・・ そうじ、元気でな」
イルさんの多すぎる友人への最後の念話が終わると僕たちはフェアリーリングに入った。
夜に僕たちはフェアリーリングを通ったが行先は対応が南のほうを向いておりお昼辺りになっていた。
場所はロンデニウム。
「飛行機より時差がはっきりしてて時差ぼけ凄そうだなぁ・・・・ゆんちゃんここどこらへん?」
「ロンデニウムだからロンドンだと思うけど、ロンドンってことはイギリスだね、北欧サバだお」
世界地図をゆんちゃんが指さしながら答えた。
「世界一料理がまずい国やと・・・・SAN値さがるわー」
「サーバー内の国は行き来楽だからいろんな料理があると思うし大丈夫っしょ」
それにしてもアメリカサバに行こうとしている僕たちにとってアメリカサバの東に出たのは幸運だった。
「おぉん!まっすぐ西に進めるなら楽だけど南によりすぎてデビルズトライアングルに行かないといいけど」
「流石にバミューダトライアングルまではいかないだろ川じゃなくて海なんだし荒れててもそんな日本1個分も南は行かないって」
「ちょっとまって、これ海を直線で渡ると北海道から沖縄まで足した日本2個か3個分あるじゃん」
僕が指で地図に合わせて図ったが日本2個より大きい。
「普通に考えて北やろ!11月やし、ある程度北にいけば北極に上陸できるやろ!あ、北極の範囲しらんからアイスランド目指した方が早いかもしれんけど」
「アイスランドに入ったら一応北欧サバから北米サバに移るお」
「アイスランド、グリーンランド、アメリカ大陸でファイナルアンサーだな」
「スバ君が移動してなかったらね」
僕たちのギルマス探しの旅が始まる。