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「…では自己紹介をしてください。ほら、お面とってみんなに顔を見せて」
「…」
妙な沈黙が、教室に流れる。
お面の転入生が全く反応しなかったため、担任のその言葉は別の者に言われたのではないかと感じてしまってもおかしくないくらいだった。もちろん、そんな筈はなかった。
改めて自己紹介が必要な者はクラスメイトの中にいるとは思えなかったし、何よりお面をしている者など一人もいなかったからだ。
「…」
今まで感じたことのないような空気が、教室を包んでいる。
多くの者の視線が、お面の転入生に注がれていた。
転校生は何も言わずに教室内を見回した。
海の後ろに空席を見つけると、制止する教師の声が届いていないかのようにその席めがけて歩き出す。
腰かけると、窓の外に顔を向けていた。
まるで教室の中の事になど、なんの興味もないと言わんかのように。
「…キヒヒ」
海の後ろから、不穏な笑い声が聞こえた。