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鼓星  作者: 吉川元景
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兄または父/叔父となる者たち

元就公が「入れ」と短く一言残して去ったあと。

廊下で息を潜めていた男たちが、堰を切ったように……けれど、産室の静寂を乱さぬよう、慎重に足を踏み入れてきた。

先頭に立ったのは隆元様。そのすぐ後ろに、大きな体を縮めるようにして元春様が続く。

一週間ぶりに見る雫殿の姿に、二人は言葉を失ったようだった。

「……雫」

隆元様が、搾り出すような声で名を呼んだ。

その瞳は赤く充血し、これまでの心労の深さを物語っていたが、ただ、雫殿の枕元に膝をつき、安堵のあまり、深く、深く頭を下げた。

「……よくぞ。……よくぞ、無事で。……ああ、本当によかった……」

何度も繰り返される「よかった」という言葉。

その後ろで、元春様が気恥ずかしそうに、けれどどこかそわそわとした様子で赤子を覗き込んでいる。

「良かったしか言えてないぞ、兄上。雫よく頑張ったな!景も心配しておって、『雫殿はどうなった』と毎日うるさかったのだぞ。」

元春様らしい、照れ隠しの言い草。けれど、その指先が赤子の小さな手に触れようとして、壊しはしまいかと慌てて引っ込める様子に、私は思わず口元がほころぶのを禁じ得なかった。

「不吉な双子」などという言葉は、この男たちの頭にはもう微塵もないようだった。

私は、二人の男たちの背中を見ながら、そっと部屋の隅へ下がった。

……やれやれ。あのように強がっておられますが、お二人とも、昨晩までどれほど青い顔をされていたことか。

隆元様の手が、まだ微かに震えているのを私は見逃さなかった。

雫殿は、そんな二人の様子を、先ほどの「ふわりとした笑顔」のまま、眩しそうに見つめていた。

「隆元様、元春様。……お騒がせいたしました。……景様にもお伝え下さい。」

雫様の声はまだ細い。けれど、この部屋を満たす空気は、もう死の色を帯びてはいない。

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