18の君たちを守るために
「兄上は…景の気持ちに気がついておるか?」
「景の気持ち…?」
弟の口から出たのは雫のことでなく、末弟のことだった。
「兄上は景のことを構う割には、景のことを分かっていないよな。」
「痛いところ突かないでくれ。」
「そうだな、ちょっと言い過ぎた。
…景はな、雫殿に惚れておる…と思う。」
少し語尾に自信が無い。
そしてあの景にそんな感情が…そしてそれにあの春が気がつくとは…。
「だが今雫は父上の子を孕んでいる上に、その上景は今小早川家中を治めるために忙しいのであろう。景の元へ雫を送ることはできぬな。」
「それは俺も分かっている。ただ先に兄上に確認しておきたい。」
「なんだ?」
「景の敵になる覚悟はあるか?それとも父上と対立するか?」
「何故父上と景が対立する前提なんだ?」
「いや、そうなる可能性もあるだろ。雫が倒れた時の景の顔みたか?あんなに追い詰められた顔をしたのを俺は子供の頃雪合戦した時にみた以来だ。」
雪合戦…確か父上が春と景に家臣数人を連れて雪合戦をさせたと聞いた事がある。最初は春が景をフルボッコにして、次は景が戦略を練り春を返り討ちに合わせたと聞いた。
春は戦で負けたことはない。唯一景に負けたあの1回を除いて。
「景がへんな気を起こすと?」
「それは景のことだから無いだろうが、あれ(景)は父上に似てかなり執念深いだろ。」
納得した。
春は続けて
「正直俺も今回の件に関しては父上に対して思うこともある。兄上もそうじゃろ。子ができたのは仕方ない。俺は今後父上にどう言えば雫を守れるのか思い浮かばない。兄上なら何か策があるのではないか?」
「策か…。」
父上が日頃から策が多い方が勝つと言っていた。父上に叶う策など儂には…。
「兄上!出来ないかもしれないなんて思っている場合じゃないんだぞ!やるんだよ!兄上と俺で!」
あぁ…なんと情けないことだ。春にこんな事言わせるなんて…。
「正直父上に敵う自信は無い。そして子が産まれるのであれば父上が仰った"乃美の子"として育てた方が良いと儂は思う。
だがまた同じように子を産んだ後は取り上げられるような事態を起こしたくない。
儂は父上に"今後雫へ手を出さないこと"、"今後雫の身柄は儂預かりにすること"、雫のことを道具として扱わせないために"父上から未来について雫に聞かない"ことを約束いただこうと思う。
春はどう思う?」
「いいと思うぜ!景の気持ちを考えると少し複雑だが、兄上のところが一番良いだろ。俺はまだ吉田郡山城にいていつ移るか分からない。景も小早川の姫君と結婚したばかりで他の女を連れ込めないだろう。
父上に言う前に景には伝えておこう。それでいいか、兄上。」
「もちろんだ。景に話に行くか。」
スッキリした顔をした元春と共に隆景の元へ向かうことになった。




