胃痛
「そのままの意味だ。景。」
「……左様ですか。では、その御子は、今後『誰の子』としてこの世に現れるおつもりで?」
一瞬の沈黙の後、父上から視線を外し、ただ一点、雫の足元を見つめたまま続けた。
「……雫殿は、既に家中では『隆元殿の小姓』として知られております。その方が今、懐妊されたとなれば、周囲の耳目はこれまで以上に厳しくなる。ましてや記憶を無くした小姓ということになっている。……父上、あなたは彼女を、女としてこの家に置くおつもりでしょうか。
その場合、どのように家中に説明するおつもりでしょうか。」
黙っている父上に重ねて尋ねる
「お腹の御子を、毛利の正統な血筋として守り抜く覚悟がおありなのか。……それとも、ただの『秘め事の証』として、御落胤としてお育てになるのか……それを、お聞かせ願いたい。」
「口を挟むようで恐縮ですが、殿(隆元)の小姓として過ごしているため、腹が出始めたら存在を隠す以外ないでしょう。いかがするおつもりでしょうか。身元も知れぬ者(雫)の子なんて。」
婿殿(隆家)も合わせてくれた。
兄上(隆元)はなんとも言えず傷ついたような顔をしていた。
そんな顔は貴方がしていい顔ではない。最初は雫殿を兄上の側に置いていたのにも関わらず、兄上は何も知らされていなかったとはいえ、こうなったのは兄上にも責任がありますよ。
そう言いたいが今は飲み込んだ。




