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鼓星  作者: 吉川元景
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閉ざされる道

「この書簡は隆元には見せられないのぅ。」

元春が持ってきたのは陶隆房(すえたかふさ)からの書簡であった。

簡単に言うと大内義隆を廃し、大内義隆の嫡子である大内義尊おおうちよしたかに跡目を継がせるため協力をしてほしいとのことだ。

ただでさえ身内(井上氏)のことで手一杯の時に。

まさかあれだけ可愛がられていた隆房が謀反に近しいことを企んでいるとは思わなかった。

「いかがいたしますか。父上。」

「今は動くときではない。」

「はっ。兄上には本当に伝えずにいますか。」

「もちろんじゃ。あの義隆殿を敬愛している隆元にこれを見せれば何をしでかすか分かったものでは無い。」

「御意。」


元春が去ったあと、深くため息をついた。

隆元は大内義隆殿に感化され芸事ばかりになっているように感じる。

元春のように武芸にすぐれている訳でもなく、隆景のように謀事が上手いわけでもない。

謀が多い方が生き延びる世の中で本当に毛利家は安泰であろうか。

まだ子も出来ぬし、我が家の将来が不安で仕方ない。

もう一度深く息を吐き、家を支える家臣や家族を増やさなければと思った。

雫殿が来て隆元も尾崎局との子作り励むかと思えばそんなこともないしの。

雫殿が未来に帰る気が無さそうであるし、いっその事隆元の側室として雫殿に産んでもらうというのも手か。

いや、雫殿は害なす人間には思えないが、それでも身元知れぬ者をさすがに当主の側室には迎えられぬ。

いっそ儂の側室にすれば毛利家も安泰かの。


未来から来たと言う景と同い年の彼女のことを考える。

18歳はもう成人した大人である。

それでもまだまだ幼さが残る彼女は果たして未来に帰りたいのかの。

もしかしたらこれは神からの褒美かも知れぬ。

今までは未来へ帰すことを考えていた。

未来へ返すのではなく、この世で雫殿

に役に立ってもらう方が良いのではないか。

そうするために送られたのではないか。

未来へ戻れなくなるかも知れないと分かっているのに、毛利家のため雫殿にはこの世にいてもらおうなんて我ながら嫌な性格をしているものだ。

自虐的に空を見上げると、眩しすぎるくらいの太陽が儂を照らした。

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