何の為に
「私と戦う、だと」
闇の王の前に立ち、宣戦布告する。
「死にたいのであれば一人で勝手に死ね」
「俺は見極めたいだけだ。本当に世界に光を取り戻すべきなのか。その為に、あなたと戦う」
「…?」
闇の王は怪訝そうに光の王を見遣る。そこには何かが無い。ゼロスや、かつてのレイ自身を確かに支えていた何かが。
しかし、そこに立つのは紛れもない王だった。堂々と並び立ち、世界を震わせ、導くその在り様は、何一つとして欠けてはいない。
「お兄ちゃん…」
「…ま、大丈夫とは言ってやれんが…あとは信じるしかない、か」
王達は静かに見守る。ここから先の戦いは、そうでなければならないのだと。誰が言うまでも無く悟っていた。
そこにあるのは永遠の闇。
無限闇界―闇の王の作り出す結界。独りでに無限に膨張する世界。広大過ぎるその世界では人など呑みこまれるちっぽけな存在に過ぎず、けして抜け出すことは出来ない。
しかし、そこに光が差し込む。光の道。全てを照らすことは出来ずとも、世界が膨張するよりも速く駆け抜け、そこを脱出する。
「中々あがく」
声が響く。しかしその姿は見えない。一方的に告げる言葉でしかなく、闇の王は事実、この世界の支配者である。
(やはり…闇の王は強大だ…)
何かがレイの体を貫く。何かを確認するまでも無く、どんどんと差し迫る攻撃。
(これは…魔力の塊、か…)
エトワール。世界を守る役割を持つ巫女として生まれ、王達の力を食らった世界の支配者。それは強大な容量。押し潰されるような絶望を、確かに覚える。
「けれど…」
それでも辿り着かなければならない、と。レイは剣を構え、闇を払う。
「はぁ…はぁ…」
「…」
少なからずの衝撃を以て、闇の王は光の王と対峙した。無限対有限。勝負にならぬ戦いに光の王は果敢に挑んだ。
レイは確かに力を取り戻した。自らの根源を、自らの力に最も適した戦い方を思い出し、見失いかけた王道も起こした。
けれどそれらを以ても、余りにもか細い道だった。けして闇の王と光の王は同等ではなく辛うじて届いたに過ぎない。
「…何が望みだというのだ」
苛立ち。それは闇の王の感情。強大で、その姿すら見渡すことが出来なかった闇の王。今、その真実へと届く場所に、ようやくたどり着いたのだ。
「自らの世界を救えば満足か。それは、そうだろうな。その為には、他の世界を、他の存在を押し退け、否定し、自らを肯定するしかないのだ。だから、知らなくていい…世界の真実の姿など…」
それは叫び。そして、闇の王の真実の一端。
「そう…か。やはりあなたは世界を…」
「…黙れ…」
「そして分かった…俺は確かに紛れも無く敗北していた。だから、今度こそ俺は、俺として、光の王として勝ってみせる」
「お前などに…世界を…!」
「闇の王ダルク!」
あなたに、光を取り戻してみせる―――光の王レイは。そう告げた。




