取り戻す光
「二人で来るとは随分と殊勝だねぇ」
すぐに姿を現したナリム。しかし、二人を見て少し満足げな表情を見せた。
「いいねいいねぇ!覚悟が決まってきたみたいだ」
「レイさん…私を信じてください」
「ああ。それじゃあ…」
レイは真っ直ぐに海の中へと飛び込んだ。
「!?」
それに対し、少なからずナリムは驚いた。水中での戦いを挑むのは無謀、と分かりそうなものだと。
しかし、認識が甘かったのはナリムの方だった。
「…おっと…忘れてたね今代のエトワールは水の王だったか」
水の概念すら変える王の力。当然のようにレイは水の中を息継ぎもせず、抵抗も無いように動く。
「だが!武器もなくこの世界で魔法も使えない君が何をす…」
「あるさ!」
レイの手には、光があった。光を剣の形へと変換し、武器とする。その剣筋は常人をあざ笑うかのように鋭く伸び、切り裂く。
「…そうか…力を貰ったってわけだね」
無理矢理に魔力をねじ込み、失われた自分を再現する。
それは、きっと過去の記憶にあった自分自身の技。それを、魔力を無理矢理供給することで満たし、呼び覚まさせた。
(ああ…分かる)
これは過去の記憶。クラウドと戦った時、刹那に発動した戦い方。自分は確かにこの力を使いこなしていて、けれど記憶と同時に失ったのだろうと、分かった。
非常に効率も悪い方法だ。けれど、
「ふ…そうかそうか…」
これは、紛れもない勝利だと。自らの懐から剣を取り返したのを目で追いながら、そうナリムは素直に賞賛した。
「さあてレイ!お前らのリベンジはこれで十分だろう!」
「バトウさん!」
「お兄ちゃん!みんな!さあ…行こうよ」
「おう!」
集いし王たちが、一斉に止めを刺し、ナリムはついに絶命した。
「…ぁ…つぅ…」
翌日、レイは全身の痛みに悩まされていた。しかし、どこか刺激が心地いいような、そんな気もする。
「ふむ…余程無茶な使い方をしたんだな。まあ…元々君のものだったものが急に目覚めただけだから大丈夫だとは思うのだけれど…。全く、事前に相談くらいはしてほしかったな」
過ぎたる魔力は身を滅ぼす。今回はレイの閉じていた魔力の器官を活性化させることに繋がって、結果的に良かったが無理に魔力を供給すれば破裂して最悪死ぬ恐れもあっただろう、と冷静にグレイスは説教した。
「ご、ごめんなさい…」
アリアは謝る。知識は無く、ただ力を分け与えれば強くなるのではないか、という発想で、また無鉄砲だったかな、と。ただ、彼の力になると決めた。そのことに後悔はない。
「まあいいじゃねえか。おかげであの軟体野郎も倒せたことだし、な」
「あの…リーリアさん」
「ありがとね。アリアちゃん」
「え?」
素直に礼を述べたその言葉に、アリアは少なからず驚いた。
「きっと、私じゃ、私達じゃできないことがお兄ちゃんにはあったの。こうして、またお兄ちゃんが一歩前に進めたなら、それはアリアちゃんのお陰。だから…ありがとう」
「リーリアさん…」
「これから仲良く、お兄ちゃんのことさ冴えようね!」
「はは…良かったなレイ」
記憶がない自分でも、こうして満たしてくれる仲間がいる。だから、自分自身のことすら分からない今でも、光の王でいられる。
それが分かった。そして、何かを知って、困難にぶつかっても、力を貸してくれる仲間がいるから、貫ける。この時は、そう信じていた。




