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ある世界の出来事~光の勇者編~  作者: 山崎世界
第一章:集う王たち
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今はまだ

 一瞬、暗闇に包まれたこの世界を、まだ戻っていないのかと勘違いしかけたが、月明かりに照らされた淡い光に照らされ、木々に囲まれていることを確認して、安堵した。

四人が帰還した地点はレイが最初に現れ、バトウと出会った地点である。クラウドは恐らくウインドウたちと合流したのだろう、そこにはいなかった。

「疲れたね~」

 リーリアが完全に緩みきった表情で、レイの方に寄り掛かる。レイは、それを胸で受け止めて、しかし自分も立っていられなくて、一緒に倒れこむ。

「そういえば、二人は兄妹なのか?」

 バトウも腰を下ろして、外套を脱ぎ、尋ねる。

「自慢の妹です」

「自慢のお兄ちゃんです!」

 疲れながらもはっきりとした声で応える二人に、絆の深さを感じた。

「ウインドウさんが自慢の息子だと話していたが、ふむ、リーリアがウインドウさんの実のむす…」

「て、おいグレイス!」

 と、バトウの指摘でグレイスは自分の失言に気付く。レイも、そのことに気付く。自分は、この世界の人間ではない。『異世界人か?』と、バトウに尋ねられた時、パズルのピースがはまるような、妙に納得した自分がいた。だから、自分はこの世界の誰とも血縁は存在しない。誰に言われることもなく、ウインドウが本当の親でないことを、リーリアが本当の妹でないことを、鏡を見るだけで分かるのだ。

「…?どうかしたんですか?」

 リーリアは、ぽかんと尋ねた。分かっていない。そうか、これがこの世界なのだ、と、三人は悟った。

「あー…」

 グレイスは、何か言おうとしたところで

「謝らないで、くれますか?」

 レイはそれを遮る。グレイスは、何故なのかを考えて、思い至る。リーリアにはその謝罪は何の意味もない。謝罪、というのは罪の意識を軽くする、という意味合いもあり、もし済まないと思うのなら、その感情を忘れないでほしい、という思い。

 無論、罪の意識など感じず、形だけの謝罪にはそんなもの意味はないが、グレイスを見込んでレイは提案した。グレイスは、それにゆっくり首を縦に振る。

「とにかく下山するかって言ってもまた山に逆戻りする体力は無いな」

 バトウは右肩の応急処置をしながら溜息を吐く。最悪、バトウとグレイスの二人のことを敵として認識された場合、追撃を逃げ切り、野宿しなければならない。

「大丈夫だとは思うんだが」

 グレイスは考える。ウインドウとバレリア、リーリアも含めれば三人だけだが、この世界の人間は異質な存在に対する抵抗は少ない、というかそもそも概念としてないらしい。

「それに、中々に懐の広い人間ばかりみたいではあるし、ね」

「そうですねー」

 遠い過去を思い出し、レイは逡巡する。来た当初、随分と物珍しげに見られはしたが、そこに悪意はなかった。懐かしいな、なんて思う。

「それじゃ、とっとと下るか…てか暗いな、レイがさっきみたいにパーって照らしてくんないかね?」

 バトウは立ち上がり、暗くて迷いそうな、足を滑らせそうな山道を見ながらそんなことを冗談交じりに言う。

「あの世界での話ですよね?」

 レイは少し困惑しながら答える。世界の光を司る、あの力は、所詮、ある世界の出来事だ。わかってるって、とバトウは笑いかけようとしたが

「いや、無理じゃないかもしれない」

 真面目に考えたグレイスが先に答えた。

「あの世界にいると、世界に対する干渉力…魔力を生み出す器官が活性化していく。だから、簡単な光の魔法…照明代わり位なら使えるかもしれない」

 ふむ、とグレイスはレイの全身を集中して見遣る。魔力、というのは一概に計測したり優劣をつけたりできるものでもないのだが、『どの程度脅威となりうるか』という指標は彼の中ではある。と、言う視点で彼の中でみなぎる魔力を見てみたのだが、どうやら想像以上、流石に自分には及ばなくとも、バトウのそれを超えている。

 複雑だな、なんて思いながらも、逆に力のコントロールを教えておいた方が安全か、ともグレイスは思う。

 とは言え、掌に光を集束するのは意外に難易度が高いし、そもそも照明代わりとしては不安すぎる。と、グレイスは先ほどの世界での戦いを思い出す。

「レイ君、剣を抜いてくれないか?」

 そう言われて、リーリアを少し離れさせて剣を抜くレイ。

「それで、光が剣に留まる光景をイメージしてくれ…そうだな、蛍が止まるように、光それ自体が生き物のように留まるイメージだ」

 魔法、というのは世界を変える技術。世界の法則それ自体に介入し、自らの思いのままに変える秘術。

 変化後のイメージを掴んだ後、吐息のように魔力を吹かせ、行き渡らせていくイメージを掴み、魔法は完成する。

 レイは、その言葉に忠実に従い、やがて月光の淡い光が徐々に溜め込まれ、四人の周りが昼間のように、とまではいかなくとも安全を確保するのに十分なほどに照らされる。

 成功した。が、レイとグレイスは思った。余りにも上手く行き過ぎている。まるで、その為に生まれた様に、光の魔法はその剣を媒体にしてスムーズに発動した。

 何かがある。この剣は、魔法と関連がある何かであって、つまりそれは、異世界人であるレイの故郷と、ここに来ることができた理由、そして、自分の正体、それに深く関係しているのだ、と。

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