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ある世界の出来事~光の勇者編~  作者: 山崎世界
第一章:集う王たち
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そして再び幕は上がる

 レイは風の世界で成長していく。気さくに接する風の世界の住人、バレリアやクラウド。そして、紆余曲折を経て親子の絆を手にしたウインドウとリーリア。

 世界は変わっていく。レイは剣術を極め、その思慮深さと優しさで周りの人々から信頼されていく。クラウドは、レイの真剣さを間近にして、自分に足りないものを見つけた。ウインドウとリーリアはようやくそのわだかまりを解消できた。リーリアは、自分のことをさらけ出して、明るく振舞うようになった。

 いつしか、レイがこの世界の当たり前になっていく。そして、誰もある一つの不安を恐れ、口に出さなくなっていった。

 レイが自分の正体を知る時、それは、きっと別れのときだろう。そんなことは分かりきっていた。誰もが皆、そんなときが訪れなければいいと思っていた。レイ自身も。

 しかし、その日は必ず訪れる。それが、『光の王』の宿命。


「はっ!」

 一閃。男が振るう大振りの剣は、風を孕み相手に向かっていく。

 相手の男の持つ剣はその剣に対し、素早く剣を当てる。衝撃は一瞬、しかし風を切り裂くように素早いその剣筋は確実に芯を突き、男の剣の動きを止める。

 それに対し、男も即座に構えを戻す。しかし、そこまで。相手の剣は既に首筋に向かっている。

「…やれやれだ。」

これで終わり、とでも言わんばかりにこの地の長、ウインドウは腰を下ろした。

「まだ勝負は付いていませんよ」

 審判役のバレリアは少し笑いながら言う。戦っている本人やギャラリーとしても勝敗はついているのだが、一応自分の領分として言う。

「アホ言うな。どう考えたって俺の負けだろうよ」

 ウインドウは溜息をつきながら、対戦相手を見遣る。

「俺も歳かねぇ」

「そうですかねぇ、昔よりも反応と判断が早いと私は思いますが…」

 それはその通りだ。歳とは言っても鍛え続ければそう急激に衰えたりはしないし、寧ろ経験によって動きは洗練されていく。だから、半分は負け惜しみに近い。

「いつに無く意地が悪いねお前も」

 そして半分は冗談だ。ウインドウはバレリアのことをよく信頼し、気心の知れた仲。そんな心の機微を感じ取れる間柄だ。

「ふふ、だって、評価してあげればいいじゃないですか。彼らの成長というものを」

 と、バレリアとウインドウは対戦相手を見遣る。

 寄って来たギャラリーに笑顔を浮かべて受け答えするのは金色の髪と青い瞳を持つ青年。納めた剣に何を思うか、人懐こい笑みを浮かべながらも、どこか覚悟を秘めた瞳。

「ははは、レイ、お前、また強くなったんじゃねえか?」

 その背中をどんどんと叩くのはレイの兄貴分ともいえるクラウドだ。

「そうだよなあ、クラウド兄ちゃん、ウインドウさんとバレリアさんにはいっつもぼっこぼこだもんなあ」

 見物に来ていた子供に唆されて、クラウドは顔を赤くした。

「おいこらうるせえぞそこ!」

 剣の才には非凡なものがあるが、バレリア、ウインドウには敵わない。だがその頼りがいがあって砕けた性格から、人望は厚い。バレリアやウインドウと言った大人にはちょっと話しにくいことでも話せる、そんな存在。

「ん?」

 と、レイは少しはなれたところから誰かが走ってくるのが見えた。

「おにーちゃーん…おとーさーん…みんなあー…」

 と、大きな包みを持ってかけてくるのは、ウインドウの娘、リーリア。元気に、笑顔を振りまいて近づいてくるその姿にしばし感慨を覚える。

 レイがウインドウの家に引き取られたとき、リーリアは内気で、自分のことを極力空気のような存在として振舞おうとしていた。ウインドウが、自分のことを要らない存在として見るのではないかと怖がって、「手間の掛からない子供」を心がけた。

 そして、レイがウインドウと本当の意味で親子の絆が結べたとき、リーリアとウインドウの間にも、確かに絆があって「仕方がないから面倒を見る」そんな存在ではないのだと気付いた。

 それから、リーリアはわがままを言ったり、レイやウインドウを困らせたり、要らない世話を焼いたりした。

「ご飯だよー!お腹空いたでしょう?なんと、今日は私一人で…ってわー!ダメえ!それはおにいちゃんのー!」

 配分する前に勝手に手を付け出した子供たちに注意する。そんな様子を見ながらレイは苦笑し、その子供からひょいっと他とは別にして包みを取り上げる。

 リーリアはその様子を見てにこっと笑い

「おとーさーん、バレリアさーんーー早く来て一緒に食べようよー!」

 大きく手を振って指導者二人を呼びかける。リーリアは、料理を勉強して、道場の炊き出しやその他雑用もこなせるくらいたくましくなっていた。今では、リーリアは一番感情豊かで、そして、伸び伸びとしていた。


「リーリアさんも、変わりましたね」

「ああ、そうだな」

 そんな様子を見ながら、バレリアとウインドウは少し言葉を交わす。

「あいつを見ていると、本当に相方を思い出すよ」

「そうですね。今思えば、あの人と貴方の子で、大人しい子というのもおかしい気もします。」

 落ち着いている、大人しい、それが悪いわけじゃない。それがリーリアの性格だと言うなら、それはそれで受け入れようと思った。

だが、問題なのは、自分を偽って、無理すること。そんなことも、教えてやれていなかった。その間違いに気付かなかった。

 レイが来てから、本当に、色々なことが変わったのかもしれない。

「さて、そいじゃあ行くか」

 ウインドウは腰を上げ、少し伸びをする。

「そういえば、」

 と、バレリアは思い出すように、尋ねる。

「今日は、何故、レイ君と真剣で試合を?」

 今より数年をさかのぼるが、レイが幼少の頃、唯一抱えていた剣を幼いから、という理由でウインドウが預かっている。

 それを返す条件が、一騎打ちの真剣勝負で勝利すること、だった。

「戦う理由がある、とは言ってもあなたはいつも何か調子のいい言い訳を用意してずっと避けていたではないですか」

「ははは」

 戦えばこうなるだろう、ということは分かっていた。

「どういう風の吹き回しですか?」

 改めて問われ、ウインドウは考え込みながら、答える。

「…ま、正直なところ、決着なんざつけなくていいんじゃねえか、なんてそんなことを考えていただけだよ」

「では、なぜ今になって」

「まあ、同時に、あの時こうしておけばよかった、なんて後悔を残すのは嫌だったんだ。きっと」

 そんな迷いが許されるのは―――言葉には出さずとも、

「行きましょうか」

「そうだな」

 二人は、向かう。賑やかな、談笑のもとへ。


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