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ミルクティ色の仔猫の話  作者: おーもり海岸
1.サラちゃん はじめてのおつかい In 学院へ
8/72

7. 仔猫は、まだまだ、お昼寝中です!

仔猫が寝ている為、保護者会談となりました。

エドさんSide>>>>>


「うちの義妹サラが、お世話になったようで、ありがとうございます」

サラちゃんが眠るのを待っていたように現れた榛色の髪の少年が、深々と頭を下げてきた。

この西区の庶民街ではあまり見かけない、どう見ても貴族のいい家の坊ちゃんで、更に言えば彼が着ている制服は、我が国一の騎士学校のものだ。

僻みを承知で言わせてもらえば、ジャラジャラついた勲章は、優等生にのみ与えられるものだろう。一体幾つ付けていやがる!


「いや、俺が好きでやってるんで、気にしないでください。

 あと、連れて帰るのは、ちょっと待ってやってもらえますか?

 どうしても、自分で学院まで行きたいって言っているんで・・・」

うーん、余計な事かな、とも思ったけど、この小さい仔猫がここまで意地を張っているんだし、その位の手助けはしてやってもいいだろう。


「ありがとうございます、私もそう思います。

 できれば、私もサラが自分で学院まで行き、少し自信をつけても貰いたいんです。」

深い緑色の瞳がふわりと微笑んで、眠っている仔猫サラを優しく見つめる。・・・なんというか、随分と出来た人だな、サラちゃんの飼い主さんは。


「ああ、サラが会いに行きたいのは、私の許婚者いいなずけです。

 彼女は、サラが会いに来てくれるのを、ジリジリしながら待っていますよ」

その姿を思い出したのか、ふふっと笑って見せる。なんだか、貫禄負けしている気がするなぁ、俺。


「そういう事であれば、ここから先は・・・」

「あのっ、大変に不躾なお願いなのですが、もう少し、サラに付き合っては貰えませんか?」

保護者が来たことだし、ここは交代かな?と思ったら、思わぬ依頼を受けてしまった。

うーん、それは構わないんだが、どうも、すっきりしない。


「あの、さ。無礼を承知で言うんだけど、随分と作ってないか、あんた?

 俺みたいのに、そんな態度、要らないから。」

挑発行為ととられても仕方がない。でも、俺はサラちゃんをこのままコイツに返しても大丈夫なのか、それが知りたいんだ。

すると、彼は少し目を見張ったあと、柔らかな笑顔で俺の余計な心配に応えてくれた。


「そっか、悪い。

 余所行きの態度だし、名乗ってもいないなんて、不審に思ってもしょうがないよな。

 俺は、ウォルフ・アーティファクト。

 これが、俺の普通。サラにも、このままで接している。少しは安心してもらえたか?」

「ああ、こっちこそ、悪かったな。 

 西区警備隊のエドアルド・ラングだ。エドって呼んでくれ。

 途中、サラちゃんが親戚に色々言われて凹んだ話をしていたもんで、心配になったんだ。」

この兄さんとは、サラちゃん上手くやっているようだ。とすると、別の親族かー、でかい家って、大変だよなぁ。

サラを落ち込ませた親戚の話を聞くと、ウォルフは眉をしかめた。


「それは、俺たちのミスだ。

 殆どが学校や職場に出ているせいで、家にいるサラが割りを食っちまったんだ。

 本来であれば、その嫌な思いは俺たちがしなきゃいけないのに、な。

 年長者失格だ」

苦しそうに言う彼の横顔を見ながら、年長者にとってもこれは苦い経験だったんだと思う。

ああいう連中の事は、俺にもわかる。子供だけになった家や、弱っている奴を見つけては、ここぞとばかりに親族を騙って付け込んで来る。 親戚は助け合うものだと思っていた子供たちには、キツイだろう。


「でも、もう二度とあの連中をうちの者には近づけない。ウチの兄貴が本気になったからね。

 たぶん、今日の夕方にはちゃんとカタがつく。」

……えーと、何をしたのかは、聞かない方がいいですよね? 合法、非合法どっちでも、知らない方が幸せな気がする。怖いわ、サラちゃんのお義兄さん達。


サラちゃん、守られてるなぁ、よかったよ。

起きたら、もう遠く学校に行かなくてもいいんだって、わかるよ。

きっと、学院にたどり着いたら、大好きなお姉さんに教えてもらえるよ。


「よかったな、サラちゃん」

寝ている仔猫の背中をなでていたら、気持ちよさそうに喉をならした。



○~○~○~○~○~○~○~○~○~


ウォルフSide>>>>>


サラは、本当に運がいい。


今回、仔猫の姿で出かけたせいもあるが、変な奴に捕まるようなこともなく、警備隊の騎士に保護してもらえるなんて。


うちの義妹サラは、可愛い。

はっきり言おう、幼女好きなら絶対に食いついてくるし、その気はなくても、構いたくなるタイプだ。

実際、今回の親戚もどきも、サラのことを僻地の寄宿学校に入れて、そのままどこかの変態貴族に売り飛ばそうとまでしていた。 この事は、俺と兄貴だけの秘密だ。こんな事をアレクが知ったら、相手をくびり殺しかねないからな。

だから、この先、サラの護衛が絶対に必要だと思っていたし、探してもいた。なのに、


「自分で、ちゃんと見つけてくるんだもんなぁ」

思わず、笑みがこぼれる。


サラのことを、護衛してくれているエドは、警備隊でもなかなかの手練らしい。

年齢は、18歳。まだ警備隊に入って間もないが、期待の若手だと聞いた。度胸もあるし、機転もきく。

なにより、サラが懐いている。


「折角の使える人材を、持っていってしまうおつもりですか? ウォルフ様」

副隊長のサーライルは、苦笑いだ。

そういいながらも、エドの情報をくれたのは、副隊長自身だ。それは彼の身柄をこちらにくれるという意味だろう?


「エドには、悪いな!って言っておいてくれ。近々、迎えを寄越す。」

西地区の詰め所から、アル兄貴に連絡をしたら、その護衛のプロファイルを寄越せといわれた。

兄貴が動けば、数日で辞令が降りて、西地区の警備から、王宮の警備へ配置換えになるだろう。


「…そっか、今の俺の趣味は、人材集めだって言っておけばよかったな♪」

「いくらエドでも、それは引くと思いますよ?」

副隊長の引きつった笑顔に、そんなもんかな?と、返した。


「とりあえず、逃がす気はないから。わりーな、エド。付き合ってもらうぜ!」

悪いといいながら、ニヤニヤ笑いが止まらない。

今度あったら、なんて言うかな、奴は。


○~○~○~○~○~○~○~○~○~


エドさんSide 再び>>>>>


…ぞくっときた。

なんだ、風邪でもひいたのか、俺?


「サラちゃん、そろそろ起きな。 学院に行くんだろ?」

日が陰る前に、学院につかなくてはならないので、サラを起こすことにした。

足元に寝そべったエルも、大きく伸びをする。


「……ぅにゃぁあ」

お昼寝は、終わりだ、さ、学院へ行こう!



あれ、エドさん、すまない。なんか、フラグ立ったみたい…。

やっと、仔猫が起きました。 これで最後の主要人物が出せます!


えーと10話で終わらせる予定だったんですが、延びます。

いつまでたっても話の長さをコントロールできないワタクシ。

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