3-13. ホットチョコレートは、いかがでしょうか?(2)
ジャンピング土下座でも、スライディング土下座でも間に合わないほど、遅くなりましたっ!
久々の更新です、宜しくおねがいしますっ!!
おうちに帰る途中も、まだエドにくっついていました。
でも、抱っこをされているうちにどうやら眠ってしまったようです。
気がついたら、おうちのリビングのソファにいました。
あ、お気に入りの青地に白いお花柄のひざ掛けがかけてあります。エドがかけてくれたのでしょう。
見回してもリビングにエドの姿はありませんでした。
ほかの部屋に行っているのかもしれません。
暖炉で薪がはぜる音を聞きながら、ぼんやりと頭を起こします。
何度も、エドが「このまま帰ってもいいのかい?」って聞いてくれたのに、怖くなって帰ってきてしまいました。
「弱虫かなぁ・・・」
あそこに留まっていたら何かかわったのでしょうか?
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「エド、サラはどうしているー?」
「イース! 随分早かったな。お前、仕事は?」
確か今日は魔法省に顔を出さないと、いい加減に上司である魔法士長がキレるかも、って言っていなかったっけ? てか、王都に戻ってから、ほとんど魔法省に顔出してなかっただろうよ、コイツは。
同じ王宮にいるのに、アル兄さんの部屋に入り浸っていたから・・・。
「あ、いーのいーの、どうせ大した仕事ないんだし。兄貴の仕事はきっちり終わらせているから」
・・・何となく、イースの上司に同情を感じる。
が、これは推測でなく、かなりの高確率でアル兄さんが上司とやりとりして、キッチリ話をつけてあるんだろうなあ。
そして、コイツもそれを解っているんだろう。確信犯め。
「あんまり上司に苦労をかけんなよ。 サラちゃんは、リビングで寝ているよ」
俺のため息に、イースは「失礼な、ちゃんと仕事してるぞ!」と言い張るが、アル兄さんの仕事以外も受けてやれよ。上司が泣くぞ?
とはいえ、コイツもサラちゃんが心配で早く帰ってきたのだろう。
何だかんだと言いながらも、イースはサラちゃんを可愛がっている。多少構い過ぎて嫌がられることもあるが、結構いいお兄ちゃんをやっているのだ。
戻ってきたイースの分のお茶も用意をして、リビングに戻ることにした。
ウォルが作っておいてくれたパイも一緒に出そうか、とそんな他愛もない話をしながら戻ってみる、と。
「・・・イース、すまん」
「・・・いや、こっちこそ、迷惑かけてすまん、エド」
ちょっと目を離した隙に、仔猫はとうに脱走をしていたのだった。
☆彡 ☆彡 ☆彡 ☆彡 ☆彡
少し日が陰ってきてから、おうち出たので街に向かって歩いている途中で、段々と暗くなってきてしまった。
それでも街までの道は知っているので、どんどん歩いていく。ちゃんと街まで行けるんだもん。
だって、街まで行けば街灯や、家の明かりで、周囲もきっと明るいから。
後でそのときの事を考えると、結構、意地になっていたんだと思う。
「ちゃんと一人で街に行って、神殿にも着けるもんっ!」
って、でも、それは大きな思い違いだった。
サラは仔猫の姿で夜の街道や、街中を歩いたことはなかったのです。
いつもの姿でも、滅多に夜に外出しないし、出る時は馬車かアル兄ちゃまに抱っこしてもらっていたので、すっかり様相を変えた夜の街の風景にあっという間に位置を見失い、迷子になってしまったのです。
いままで見たことのない暗くて見通しの効かず、不安にさせる街の姿。
荒々しく歩く男の人が多くて、大きな声で怒鳴ったように話すのが、怖い。
酔客の多い通りに出るのも怖くて、ようやく見つけた人のいない路地の片隅にうずくまってしまった。
「どおしよう、怖くて動けないよぉ・・・」
エドに何かあったら高いところに上りなさいって言われたけど、そこへ上る前の大きい男の人たちに捕まったら、と思うと怖くて動けない。
夜のせいなのか、普段は気にもならない音がひどく大きく聞こえる気がするのです。
徒党を組んで飲み歩く男たちの荒々しい足音だけでも、サラはすくんでしまうのだった。
「なんでぇ、酒がもう無いのか!ち、シケてんなぁ」
「空っぽの酒瓶なんぞ、捨てていけよ。次の店に行こうぜ!」
男の一人が、足元にあった空き瓶を憂さ晴らしのように蹴り、蹴られた瓶は路地の土壁に当たり大きな音を立てて割れてしまった。
男たちを隠れてやり過ごすつもりでいたのに、その瓶の壊れる音にびっくりして、サラは隠れていた廃材の陰から飛び出してしまったのだった。
「お、仔猫だ」
「なんだ、このちっこいの!」
音に驚いて飛び出してはみたものの、大きな男たちを前にして、サラは完全に固まってしまった。
「みぃ」
逃げなきゃっ!と思うけれど、どこへどうやって逃げればいいのか思いつかない。
このままでは、まずいと思いながらも、頭は真っ白でサラは身動きすることもできず、伸びてくる男の手に強く目をつぶってしまう。
『このバカっ!』
不意に、体がグンっと浮かび上がった。聞き覚えのある声のする方を見ようとするが、首の後ろを咥えられているようで、プラプラと揺れることしかできなかった。
「うぉっ」
「なんだ? このチビの親猫か?」
「アレは、猫っていうよりも…」
突然現れた大きな獣に、男たちは驚いたようだが、酔いも手伝って「きっと親猫が迎えに来たんだろう」と簡単に納得してしまい、呑みの続きへと出かけていった。
素面の人間みたら、どう見てもその亜麻色の毛並みの獣は、猫には見えない。
猫というより、大型の犬。もしくは狼に近いのではないだろうか。周囲を警戒しながら人気の裏路地を通り、軽々と荷箱を駆け上がって屋根の上を駆けていく亜麻色の長い毛並みは、その姿を見るものいないのが残念なほど夜の月に映えて美しいかった。
サラの首根っこを捕まえて走りだした獣は、盛り場から離れた人気のない小さな空き地に着くと、地面が柔らかい事を確認してから、サラをそっと降ろした。
咥えられてプラプラとゆられて移動したせいで、まだ揺れるように感じる頭を振り払うように、仔猫はふるふると身震いをした。ようやく感覚が戻ってきたところで、助けてくれた存在を確認する。
『助けてくれたのって・・・』
月の光に輝くその大きな獣は見たことがなかったけれど、その亜麻色の柔らかな髪色には覚えがある。
『イーちゃん?』
眉間に縦皺のある狼って初めてみたかも、なんて呑気な事を考えながら淡く輝く亜麻色の毛並みを見ていたら、大型種に特有の大きな前足で背中を踏まれてしまった!
「みぃっ!みぃっ!みぃっ!」
やだやだ、痛いよう、イーちゃんっ!と抗議の声をあげてみるが、聞いて貰えないらしい。
それどころか低い唸り声とともに、噛みつかんばかりの迫力で怒鳴られてしまった。
『このバカがっ! こんな時間の繁華街にフラフラ出たら危ないに決まっているだろうがっ!!』
やーっ! イーちゃんの意地悪っ! 放してようっ!!
大きな前足から逃れようと、じたばたとしてみますが、びくともしません。
イーちゃんに悪態をついていたのは、頭ごなしに叱られて、ちょっぴり反抗したくなったんです。
だって、だって、どうして出かけたかったんですもん。
でも、これって地雷でした。
「サラ、俺は一人で出かけるなって言った筈だよな?」
月明りを背に地を這うようなひくーい声が聞こえてきます。
エドも探しに来てくれたんだ!と喜んだのもつかの間、これって、絶対すっごく怒っているよね、エド。
普段は、あんまり怒らないのですが、お兄ちゃまの言いつけを守らなかった時にエドは怖いんです。そして、ちゃんとごめんなさいをしなかった時は、もっと怖いの。
「みぃ・・・」
余りの迫力にイーちゃんも、ちょっとの間硬直してサラを抑えていた前足を外してしまう程でした。
こ、怖いよぉ。前足が外れたにも拘らず、思わずイーちゃんの体の影に回って隠れます。サラサラでモコモコの毛並みの中に顔を突っ込んで、サラを見えないようにしちゃいたいっ!
『ばーか、逃げ隠れしているんじゃねーよ。ほら、エドに叱られて来い』
イーちゃんは隠れようとしているサラの首を軽く咥えて、ぽんっとエドの前に放りだしたのです。
ひどいよぉ、イーちゃんの意地悪ぅ・・・。
エドとイーちゃんに挟まれたサラは、居心地が悪い事この上ありません。二人とも怒っているし。
怒らせるようなことをしたのは、サラですが・・・。
『ごめんなさぁい・・・』
ちっちゃい声で、謝ります。
今日だけで、いっぱい言いつけを破ってしまって、いっぱい心配させて、探しに来てもらって・・・。
うう、なんかもう、今日は怒られる事しかしていない気がするっ!
「サラ、それは何に対してのごめんなさいだ?
俺も兄さんたちもサラが一人で夜に外出するのを許した覚えは無いぞ。それに、イースに叱られて、ごめんなさいもしなかっただろう」
「にぃ・・・」
はい、まったくもってそのとーりですっ!
一人で外出するのも、夜にお出かけするのも、ダメって言われました。
小さい子が出かける時間じゃありませんって言われたので、仔猫になってみたんですが、逆効果だったみたいです。小さい分、攫いやすくなってしまうんですかね。
すごーく怒っている二人のお説教を聞きながら、だんだん、眠くなってきてしまいました。
叱られているんですが、エドとイーちゃんがいる安心感からか、眠くって、眠くって。。。
「あ、こら。サラっ!」
もー、だめです。
後で叱られますので、今は寝かせて〜・・・。
ゆらりと体がかしいで、まるくなって眠りに落ちてしまいます。
「やれやれ、お説教の最中に寝るとは、大物だな、サラちゃんは。」
エドが優しく抱っこしてくれているのを感じます。仔猫のサラの指定席である内ポケットの中にそっと入れてくれます。ここは温かくって、安心で。。。どんどん眠りに落ちていきます。
起きたら、うんっとお仕置きだからなーって言っています。
ううう、お仕置きは、やなんですが、もう、サラは起きていられないんですー。
起きたら、ちゃんとごめんなさいってするから、エド、怒らないでね?
☆彡 ☆彡 ☆彡 ☆彡 ☆彡
お出かけした緊張と、変身魔術を使った疲れとで、気が付かない内にフラフラだったみたい。
エドとイーちゃんに会えたと思ったら緊張の糸がぷっつりと切れてしまったようです。
気が付いたら、おうちのベットの中でした。
その上目が覚めたのは、翌日のお昼近く・・・いや、寝すぎだと思う、自分でも。
目が覚めた時、直ぐ側にはエドが居てくれてました。
痛いところや気分が悪くないかと細かく質問をされましたが、目覚めもすっきりですし、もう大丈夫って答えたら・・・
「うん、よし。
じゃあサラちゃんは罰として当分の間、外出禁止な!」
って笑顔で言われました。
「えええっ!?」
そ、それは困りますっ!今度こそリンちゃんのところへ行きたいんですもん。
この間は、逃げちゃったけど、少しずつサラを知ってもらって、お友達になりたいと・・・
「サーラー、少しは反省していなさいっ!」
わたわたしながら、反論しようとしたのですが、エドにこわーい顔でにらまれてしまいました。
ううう、は、はんせーしてますよ?
そんなに怖いお顔をしないでくださいー。
「でも・・・」
リンちゃんとお友達になりたいんです。だから・・・。
「慌てる事はないだろう? ゆっくり友達になればいいんだから」
少し呆れたように小さなため息をつきながらも、エドが頭を撫でてくれます。
よしよし、って、大丈夫だよって。
「リンちゃん、お友達になってくれるかなぁ」
「きっとなってくれるよ。こんにちはって挨拶して、一緒に遊ぼうって誘えばいい。」
・・・エドは簡単に言うけれど、それってかなり勇気が要りますよ。
だって、相手は神殿の歌巫女の頂点に立つ、当代さまなんですよ。失礼だって言われたら、それどころか、嫌いって言われたら立ち直れません。
「イヤって言われたら、どうしよう・・・エドぉ」
「それは、ナイね!」
即答ですか!
だって、リンちゃんは、巫女姫さまで、当代さまで。サラは出来損ないで、ちっちゃくって何にもできないんですよ? 伯母さま達みたいに、こんなみすぼらしい子は近寄らせられませんって言うかもしれない。
「・・・あのババア、ごほん、あの人達の言うことなんて信じなくていいから!
サラちゃんは、可愛くっていい子だよ。アル兄さん達もサラが大好きだって、言ってくれるだろ?」
そ、それは、なんと言うか、身内の贔屓目というものでしょう。
どう見てもみそっかすなのは、サラにだって、その位解りますもん!
でも、ちょっとだけ、希望を持ってしまったんです。
リンちゃん、サラなんかでも、お友達になってくれないかなぁって。
「サラとなんかって、ワケないだろう? サラと!友達になりたいって思ってくれていると思うよ」
エドに頭を撫でてもらいながら、慰められて、ちょっぴり気分が浮上しました。
エドも随分身びいきだとは思うんですが、えへへ、嬉しいです!
思わず、エドに抱き着いてしまいましたよ~。
エドもニコニコと笑いながら、抱っこしてくれましたし。
「さて、と。後は、昨日の分のお仕置きだな。
アル兄さんとこで、うんっと叱って貰おうな~!」
・・・え、なになに、なんでーっ!
じたばたとしましたが抵抗も空しく、エドに軽々と抱っこされて、アル兄さんのお部屋に強制連行です。
そ、そのあと、どれだけ叱られたかについては、・・・聞かないでください。
・・・怒ったアルにいちゃまは、すごくこわかったんです。
アルにいちゃまに叱られて、べそべそと泣きながら、またエドにひっつき虫になっているサラの為にエドがホットチョコレートをいれてくれました。
お部屋の暖炉で、小鍋を使っていれてくれます。
火を使っている時に、邪魔しちゃいけないんですが、エドから離れたくないので、背中にくっつき虫です。
エドは笑いながら「好きなだけくっついてな」と言います。
小鍋の中からあまーい香りが上がって部屋に満ちていきます。
「ほら、熱いからやけどしないようになー」
うん、やっぱり、エドはサラに甘いんだなって思います!
いつもより少し長めにしているのですが、まだ、この章が終わっていません。
申し訳ありません! 何としても終わらせられるように頑張りますので、宜しくお願いしますっ!!




