3-1. イアン兄ちゃま、お帰りなさい!
第三章の開始です。
イアン兄さん登場ですね。仔猫は、少し大きくなりました。
「サラーっ、元気だったかーー!?」
おうちのソファでお昼寝をしていたら、急にぎゅって抱きしめられました。
この感触には、覚えがあります・・・え、でも、まさか。
「イーちゃん!?」
「こらー、にい様って呼べよー」
ぐりぐりと少し乱暴に頭をなでるこの感触、間違いありません!二番目のイアンにいちゃまです。
「イーちゃん、なんでいるのぉー?」
ゴチン☆彡
もぉ、ひどぉい。なんで拳骨なのぉ~?
拳骨ゴチンされて、痛む頭を涙目になりまがら、さすります。
イーちゃん・・・って、イアンにいちゃまは、魔法使いです。
ほんとうは決められた学校をちゃんと出て、試験に受からないと魔法使いとは認められないのだそうですが、イアンにいちゃまは、すっごく魔法が上手だから学校に行っている時から特例で試験を受けさせてくれたそうです。
魔法使いになったイアンにいちゃまは、国のなかの色々なところへ行ってお仕事をしているのだそうです。とはいっても、ほとんどがアルにいちゃまがお願いしたおしごとだそうです。
アルにいちゃまのおしごと以外は、「やる気がしねー」なんだそうです。
それなので、このところお仕事のお出かけばっかりで、おうちに居なかったのに、急に帰ってきているからびっくりしたのです。
「まったくもう、折角帰ってきてやったのに、このセリフかよ~」
イーちゃんが、ぶつくさ文句を言っています。
イーちゃんって、ずっと呼んで来たのに、最近は「イアンにいちゃまって呼べ」っていいます。
それは多分、もうすぐ開催される『樹木祭』と、もうひとつ・・・。
「イーちゃん、サラのお誕生会のために帰ってきてくれたの?」
「・・・イーちゃんは、やめろって。もう6歳になるんだろ?」
そうなんです、もうすぐサラは誕生日で、今度6歳になるんですよー!
貴族のおうちでは、子供が6歳になるとお祝いに身内や親しい人を呼んでお誕生会を開くのだそうです。
7歳になった時には、王宮に上がって正式に貴族の子供として、みんなにお披露目のご挨拶をするのだそうです。とは言っても、子供なので、夜会や、舞踏会には出ませんが、貴族の家の一員として認識されるのです。
アルにいちゃまが言うには、
「何故そんな面倒な事をするかというと、「七歳までは、神の手の内」と言われている理由、そう幼児の死亡率が大変に高かったからだ。
最近は、少しよくなってきたが、昔は子供が生まれても7歳まで生き残るのは、半分か、それ以下だったから、その為、親族にお披露目をするのは、6歳になってから。王家へ目通りをするのは、7歳になってからという習慣となったんだよ。」
と説明をしてくれたのです。
・・・よくわからないんけど、お誕生会をやってくれるということはわかりました。
そして、イーちゃんが、そのために遠いところからわざわざ帰ってきてくれたのも!
えへへ、嬉しい~! でも、イーちゃんに言うのは、ちょっぴり悔しいので。言いません。
イーちゃんは、アルにいちゃまの弟です。
イーちゃんは、アルにいちゃまが大好きです。なので、おうちにいる時は、サラとイーちゃんでアルにいちゃまの取り合いっこになるんです。だからね、イーちゃんはライバルなんですよっ!
「アル兄は、仕事いってんのかー」
「うん、お仕事だって。でも、夕方には帰って来るって言ってたの」
朝のお出かけの時に、アルにいちゃまが、おうちでごはんを食べるよって、言っていたしね。
すると、イーちゃんがにやりと笑って立ち上がりました。身長が高いのですが、ふわりと動いて重さを感じさせません。そんなところも魔法使いっぽいんです。
「へぇ、じゃあ、俺迎えに行ってこよ♪」
「イーちゃん、ずるーい! サラもー!!」
お迎えって、なんか羨ましいです。サラも行きたいですっ!!
「馬で行きたいから、ダメー」
「イーちゃんの意地悪~っ!!」
ニヤニヤ笑いを貼り付けてイーちゃんは、軽やかにお部屋を出て行きました。
ずーるーいーっ! サラだって、お迎えに行きたいのにっ!
移動の場合、馬か馬車。たまに騎獣を使います。魔法使いさん達は、要所に移動魔法陣を作りますが、それは決まったところだけなので、どこかの途中まで行きたい時は使えません。一般的には歩いての移動が主です。
「つーまんなーい!」
ほっぺたを膨らまして、抗議です。・・・だれもいないけどね。
アルにいちゃまと一緒にエドも帰ってくるので、うんっと文句を言って甘やかしてもらうことにします。
本当なら、一緒に飛び出して行ってお迎えしたいんですが、この間、エドに叱られたところなんで、ちょっと反省モードなんですー。
「今日はアル兄さんも、俺も居ないんだから、一人で家から出ないこと! いいねっ!」って言われたので、実行中なんですもんっ! サラ、いい子にしているんだもんっ!!
それでも、それでもっ!ちょっぴり羨ましくて、にいちゃま達の帰りが待ち遠しかったりします。
「イーちゃんの、バカぁ」
帰ってきたアルにいちゃまと、イーちゃん、エドを見て、こっそりついていけばよかったなー、って思ったのは、内緒の秘密っ!
イアンは、いじめて可愛がるタイプ。殆どその好意は伝わらないよ~(笑
でも、サラちゃんは、イーちゃんが大好きです。いじめっ子だけど、ガキ大将についていくちっちゃい子みたいですね。




