ミルクティ色の仔猫の話 お礼小話. よしよしの魔法
とうとうブックマークが400になっていました。
そして、読んで下さる皆様へのお礼です。みんな色々忙しかったり、大変なこともあるけど、サラはみんなの味方ですっ!
ほんの御礼のきもちです!
夜遅くになって、お外でガラガラと馬車の音が響きます。
これは、お姉ちゃまがお仕事から帰ってきたのでしょうか?
思わず、寝床から起き上がります。
本当ならサラは寝ていなければいけない時間なんですが、お姉ちゃまが帰って来ないかな〜って、こっそりと夜更かしして待っていたんです。
「ちょこっとだけですから、ベッドを出ちゃうの、ちょっとだけー」
もそもそと、誰もいないのに言い訳をしちゃいます。怒られるかなぁ、ちょこっとだけだから、平気だよねー。
寝間着のままで、お気に入りのふかふかのうさぎさんスリッパを履いてお姉ちゃまのところへ向かいます。
ほんわり桃色でふかふかのうさぎさんスリッパは、アル兄ちゃまが王都内の視察に行ったときのお土産です。
可愛くてお気に入りな上に、とってもあったかい優れモノなんですっ!
買ってきてくれた時、あんまり可愛いので、ベッドの中に持ち込んで一緒に寝ようとしたら、「スリッパと寝るのは止めなさい」と、アル兄ちゃまがお仕事帰りに大きなうさぎさんのぬいぐるみを買ってきてくれました。
毎日、一緒に寝ているんですよ。
ぽふぽふぽふ…
うーん、うさぎさんスリッパの足音だけでも、楽しくてあったかくなる。
階段を降りて、『お姉ちゃまのリビング』に行きます。うちには、お兄ちゃま達の使う大きなお客様用応接間と、家族で使う『お姉ちゃまのリビング』があるのです。
文字通り、お姉ちゃまが好きな家具や調度をめて、自分でデザインしたリビングです。だからここは、『お姉ちゃまのリビング』なんです。
もちろん、お姉ちゃまもとってもお気に入りなので、おうちに帰って来るといつもこのリビングで一息ついてからお部屋にあがるのです。
きっと今も、リビングでお茶をしているハズです。そおっと見に行きましょう。
暖炉の前には、ソファが囲むように並べてあります。
一番大きい濃い緑の一人掛けソファは、アル兄ちゃまのです。
サラはいつも抱っこしてもらってお膝にいます。だって、ウォル兄ちゃま達が座る大きな3人掛けのソファだと、サラは奥に沈みこんじゃうんですもん。
早くちゃんと一人で座れるようになりたいですっ!
今日は珍しくお姉ちゃまは、アル兄ちゃまのソファに座っています。すっかり体を預けるように座っているので、すごく疲れているのでしょう。
どうしよう、お姉ちゃまに話かけたらダメかなぁ、お疲れだよね…。
「サラ?」
うんうんと悩んでいたら、お姉ちゃまの方から声をかけられてしまいました。
「はい、おねえちゃまっ」
ひょこりと、扉の影から顔をだし、ソファに座るお姉ちゃまに駆け寄る。
「まあ、そんな薄着でベッドを出ては風邪をひくわ。こちらへいらっしゃい、私のストールを巻いているといいわ」
お姉ちゃまが、ソファの場所を半分空けてサラを座れるようにしてくれたので、ソファに上がり、おねえちゃまの横に座ることにしました。
流石にお兄ちゃまの時みたいにお膝に乗りませんが、お隣に座りお姉ちゃまに世話を焼いて貰って、ストールを巻いて甘やかしてくれるのも嬉しいのです。
「大丈夫、寒くない?」
「うん、へーきですっ!」
お姉ちゃまのお隣が嬉しくて、すりよってみました。
ほぼ、三日ぶりにお姉ちゃまに、会えました。やっぱり起きていてよかったですっ!
お姉ちゃまは、サラに笑いかけてくれるのですが、なんとなく疲れたように見えます。
だって、お姉ちゃまは、学院のお仕事と、伯爵家のお仕事、領地の方のお仕事と、山のようにお仕事をしているのです。その上、学院のお勉強もしているのだそうです。
アル兄ちゃまや、ウォル兄ちゃまがたくさんお手伝いをしているのですが、それでもいっぱいお仕事があるんです。お姉ちゃまだから、これだけのお仕事ができるのです。
お姉ちゃまが疲れているのに、サラは、なんにもできません。
お茶を入れてあげたくても、執事さんや、メイドさんの方が上手に美味しいお茶が淹れられます。
サラだと、お茶碗を壊さないようにするのが精一杯です。
美味しいお菓子を作ってあげるのも、ウォル兄ちゃまの方が上手です。
今日もとっても、とっても美味しいシフォンケーキを作ってくれました。
・・・美味しかったし、嬉しかったけれど、なんだか複雑です。
疲れていても、笑いかけてくれるお姉ちゃまに、サラに出来ることって・・・。
ありましたっ! 一個だけですが、ありましたよっ!
「サラ?」
急にソファーの上に立ち上がったので、お姉ちゃまがびっくりしています。
「えっとね、・・・よしよし、おねえちゃまは、えらいです~」
お姉ちゃまの頭をそっと撫で撫でします。
疲れているのは、頑張ったから。
クタクタになるまで頑張れるお姉ちゃまは、すごいんです。
自分でよしよしって言えないなら、サラが言ってあげます。
「お姉ちゃまは、よくがんばりました! サラの自慢のお姉ちゃまです!」
ソファの上で背伸びをして、一生懸命にお姉ちゃまの頭を撫でます。でも、サラの手が小さいので、なでているより、髪の毛をかき混ぜているようになってしまいます~。
うう、それでも、お姉ちゃまが少しでも元気になってくれますように、幸せな気持ちになってくれますように、と思いながらなで続けます。
サラのできることって、すくないです~。
「ああ、もう、サラってばっ!」
「ひゃあっ」
なでなでしているところを、急にお姉ちゃまに抱きしめられました。
びっくりですっ、っていうか、お姉ちゃま苦しいですーーっ!
「もぉ、もぉ、可愛いっ!ウチの子は、もう天使なんじゃないかしらっ!!」
「お、お姉ちゃま~」
お姉ちゃまの方がまるで女神様みたいって言われているじゃありませんかー。サラは、せいぜいが仔猫どまりですよぉ。
「サラは、いい子! ありがとうね、元気が出たわ!!」
「よかったー、お姉ちゃまが元気だと、サラも嬉しいもん」
うふふ、って笑い合いながらお姉ちゃまに抱っこされます。いい香りがするお姉ちゃまにだっこされるのも大好きなんです。
「大好きよ、サラ!」
「だーい好きです、おねえちゃまっ!」
ぎゅうぎゅうに抱きしめられて苦しいけど、すっごい嬉しい。甘えん坊としては、抱きしめられるのは本望ですからっ!だーいすきっ!!
コンコンっと、ノックが響きます。
あれ、誰でしょう?
「アレク、まだ起きているのか?」
アルにいちゃまでした。
お姉ちゃまの応接間に灯りがついていたので、見に来てくれたようです。
「アル兄様」
サラにそっと「静かにしていてね」、と合図を送って、ソファから立ち上がってドアに向かいます。
ソファーの背もたれに隠れるので、入口からサラの姿は見えません。サラは、もう寝ていなくてはいけなくって、ここにいるのは内緒なんですもんっ。
・・・お、怒られるかな、やっぱり。
おとなしく、ソファーの上でちっちゃくなっています。
「アレク、あまり無理をするな。そして、なるべく早くに休みなさい」
「はい、アルにい様、ちょっとお茶を貰っていましたの。もう休みますわ」
アル兄ちゃまが、お姉ちゃまにやさしく語りかけます。アル兄ちゃまも、まだお仕事なのかなぁ。
くすりとアル兄ちゃまが笑った気配がしました。
「アレク、うさぎがベットで寂しそうにしていたので、仔猫に子うさぎ二匹を連れて早く戻るように言っておいてくれ。風邪をひかせないようにね」
「・・・はい、アルにい様。気をつけますわ」
そう言ってアルにいちゃまは、お部屋に戻っていきました。
うさぎ、そういえばベットにうさぎの縫ぐるみを置いてきてしまいました。うーん、後でだっこして寝ましょう!・・・つまり、アルにいちゃまは、サラがここに居ることを知っているのですね。
「うぅ、アルにいちゃま、怒ってるかなぁ・・・」
「大丈夫よ、サラ。『風邪をひかないように、なるべく早くにベットに戻りなさい』って意味でしょう」
アル兄様は、サラに甘いから、とお姉ちゃまは笑うけれど、怒るとすんごーく恐いんですよ?
「はいはい、では叱られないウチに、お部屋に戻りましょう」
「はーい」
お姉ちゃまに促されてソファーから下り、うさぎスリッパを履いて、ぽふぽふと歩きます。
「なるほど、子うさぎ二匹ね」
お姉ちゃまが楽しそうに笑います。
うさぎスリッパがそんなに面白いのでしょうか、サラは小首をかしげます。
「さ、お部屋に戻って大人しく休みましょう。」
「お姉ちゃま、少し元気でた?」
お姉ちゃまに手を繋いで貰って、少し寒い廊下を歩きます。お姉ちゃまの手があったかいです。
「サラに元気になる魔法をかけてもらったから、すごく元気よ。また頑張れるわ」
お姉ちゃまに、ありがとうって言ってもらいましたが、なんだか恥ずかしいです。
いつか、本当にお姉ちゃまを助けてあげられるようになりたいです。
ちっちゃい手ですけど、お兄ちゃまや、お姉ちゃまの役にたちたいなって思うんですもん。
それまで、待っていてくださいね、お姉ちゃま!
ピンクのうさぎの室内履き…。熊の茶色は、なんか違う。(笑
兄さん、どこで買ったんでしょうねぇ(笑




