2-20. 仔猫の晩餐会
更新が遅くなりまして、申し訳ありません。
この後は、なるべく早くしますー!!
「今日はようこそ、いらっしゃいませ!」
玄関ホールでお客様をお迎えをして、メインダイニングへお客様をご案内します。
サラの着ている深い茶色に、黒いベロアのリボンがついたドレスは、お姉ちゃまが選んでくれました。胸元にはピンクの薔薇のコサージュ。
お姉ちゃまは、深い紅色のバラでお揃いなんですよ!
そして、この素敵なドレス姿でサラは、ご案内係りするのですよぉ!
執事さんと一緒にお客様をお迎えして、お客様を応接間へご案内。そして、メイドさんにお願いしてお客様に飲み物を出してもらうのが「ご案内係りさん」のお仕事です。
サラは、もう大きいですからね、ご案内係りだってできてしまうのですよっ!
「やあ、サラちゃん、今日も可愛いね」
ノルちゃんが、ニコニコの笑顔で、やってきました。今日はキラキラした王子さま仕様の格好じゃありません。普通にエドたちが着ているような毛織のジャケットにシャツ、仕立てのよさそうなベストを着た格好です。「お忍び仕様」なんだそうです。
まあ、お忍び仕様にしても、ノルちゃんは、ノルちゃんなんですけどね。キラキラしているの。
「お招きいただきまして、ありがとうございます。はい、これはお土産ね。後で食べてね~」
マディもニコニコです。やっぱり「お忍び仕様」で、普通の格好です。手にはバスケット。焼き菓子を沢山詰めてあるのでしょう。わーい、楽しみです!
嬉しくなって、ノルちゃんと、マディの手を一生懸命に引っ張ってメインダイニングへ連れていきます。
あんまりお客様を急かしてはいけませんよって、執事さんに笑われてしまいました。
うーん、失敗です。
今回は、お席を特に作らないで、大きなテーブルにたくさんのお料理を並べて、自分で好きにとってもらうビュッフェ形式です。
大きなテーブルに、真っ白なテーブルクロスがかけられて所狭しとごちそうが並べられています。
大きな白い深皿に入ったサラダは、色とりどりのお野菜がぴかぴかしています。「ゆで卵が入っているのが好きなの」と言ったら、入れてくれたみたい。美味しそう〜!
保存用の燻製肉や、ハムやムース、セリー寄せなどの冷たいお料理は、銀のお皿にまるでお花の様に盛り付けられています。
料理長のお得意なそば粉入りの薄いパンケーキが山のように置かれ、その横には、濃い真っ白なサワークリームと、真っ黒なキャビアと、真っ赤なイクラがガラス皿に盛られています。
そば粉のパンケーキに、サワークリームと魚卵を盛り付けて、レモンをさっと絞って食べる、ウチでも滅多に出ないもっと北の国のごちそうなんですって! サラは初めてみますっ!!
ちなみに、この魚卵たちだけで、普通に四人家族が、一か月暮らせる位のお値段になるそうです。
エドが溜息と共に教えてくれました。すんごく贅沢なんですねっ!
メインディッシュの大きなお肉の塊は、あとで料理長さんが来てみんなに切り分けてくれるそうです。
テーブルの上のごちそうに気をとられていたら、お兄ちゃまも、お姉ちゃまも、もうメインダイニングに集まってきていました。
お客様に笑顔であいさつをしています。サラが、ちゃんとご案内してきたんですからねー。
ちょっとだけ、自慢させてください。
今日はダイニングとはいえ、ビュッフェ形式な上に、用意されているのも椅子ではなく、座り心地のいいソファ椅子を暖炉を囲むように置かれ、床には暖かいラグを敷いてあります。
おうちに居ながら、どこかの別荘や狩小屋に遊びに行ったような雰囲気なんです。
サラはご案内も終わったので、大好きなゆで卵とハムのサラダを貰って、アルお兄ちゃまのところへ行きます。
「サラ、お客様の案内をありがとう。」
そういってアル兄ちゃまが、サラを抱っこしてお膝にのせてくれます。
お兄ちゃまのお膝にのると、みんなのお顔が見えるので、普通にお椅子の座るより好きなんです。
エドに甘えん坊って言われますけど、いいんですもんっ! お兄ちゃまがいいって言ったんだもん〜!
ナール様も遊びに来てくれました。
鎧の人たちは、今日はお留守番なんですって、今度は遊びに来てほしいなぁ、って言ったらアル兄ちゃまが、嫌な顔をしていました。
むぅ、ダメですかー。
ナール様も、やっぱりお忍び仕様なんですが、騎士さんの恰好をしてきていました。
これで帽子とマントがあれば、騎士さんに紛れて結構解らないものだよって、言いました。
そ、そんなもの?
いっぱいの騎士さんが居ても、たぶん、ナール様はわかる気がする。
もちろん、仔猫のカンですけどね!
「サラちゃん、これはもう食べた? せっかくだから食べておきな」
エドが新しいお皿を持ってきてくれます。橙色のスモークサーモンにレモンのジュレを添えたものです。
もちろん、お膝にサラを乗っけていて動けないアル兄ちゃまの分も。
「わーい、これ、好きっ!」
「ありがとう、エド。エドもちゃんと食べてくれ。あと酒も飲んでいいんだぞ」
アル兄ちゃまがお皿を受け取りながら、エドにお礼をいっています。そういえば、エドのお酒飲んでるとこ、見たことないかもっ!
「飯は食わせてもらいますが、一応、まだ仕事中なんで、飲酒は遠慮します」
空いたお皿を下げながら、にっこりとエドが笑います。
エドのお仕事は、みんなの警護でもあるのです。皆が楽しんでいる時もエドはお仕事中なんですね。
ちょっと、さみしいかも、です。
「…気にしなくて、いいんだぞ」
「後で、アル兄さん秘蔵のたっかい酒、飲ませてください」
アル兄ちゃまの言葉に、エドがニヤリと笑って答える。高いお酒、美味しいのかな?
思わず興味深々でアル兄ちゃまの顔をのぞき込んだら、「サラに酒はまだ早い」って、ぺちっておでこを叩かれた。
う〜、大人ってズルい〜。
「わかった、終わったら良い酒を用意しよう」
「感謝します!」
なんとなーく、二人だけでいろいろわかっているような、サラは入れなくってつまんないですよっ!
「サラちゃん、ハンナ夫人ご自慢のケーキも出るよ、持って来ようか?」
「…う、欲しいっ!」
ちょっと拗ねたい気分だったんですけど、ケーキには勝てませんでした。ハンナ夫人のケーキってほ
んとうに美味しいんですよ。
今日のケーキは、ふわっふわで、真っ白なシフォンケーキなんです!
大好きな人達と、おいしいごはん、ニコニコとする幸せな夜でした。
その影で一生懸命に、お仕事をしていた人たちがいたのを知ったのは、後になってから。
お仕事、お疲れ様でした。
お疲れ様の晩さん会も終わったら、もう、冬は目の前です。
頑張ってお仕事していた人たちのお話は、この後で。
サラちゃん、ちょっと幸せな日でした。




