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ミルクティ色の仔猫の話  作者: おーもり海岸
2. はじめての舞踏会
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2-19. 甘い栗のケーキと、甘酸っぱい林檎のケーキ、どっちが好みか?

王妃さまは、初恋推進派だったようです。

果たして結果は?

皆さんに招待状を渡して、晩さん会の準備が始まりました。

といっても、お姉ちゃまとお兄ちゃまがみんな手配をするので、サラは待っているだけなんですけどね。


今回の招待を出した人の中でも、色々な問題があって王妃さまは来られません。

ウチに遊びに来ると、他のおうちにも遊びに行かなくてはいけなくなるんですって。

平等に接する事が大切だから、だそうです。


大人って大変です。


このままでは王妃さまが可愛そうなので、お姉ちゃまと王妃様へお菓子をもっていくことになりました。


ウォルフ兄ちゃまが、せっかくだからって、季節でもある栗のケーキを作ってくれました!

栗を甘く煮て、洋酒に漬け込んだものをケーキの中に入れるのですが、今回はサラも食べるので、お酒は控えめなんです。

いつもは、大人用のお菓子なので食べたことがないの。だから今日はすごーい楽しみなんです。

おうちでも食べたいなー♪


「いらっしゃい、アレク、サラちゃん! 待っていたわ!」

王妃さまが、ニコニコの笑顔で迎えてくれました。


今日は、お姉ちゃまとお揃いで、赤葡萄酒色のドレスなんです。サラの分にはお姉ちゃまが、襟と袖口にフワフワの毛皮を付けてくれました。真っ白で可愛いんです。

お姉ちゃまのドレスには、少し濃い色の糸でバラの刺繍がしてあります。とても大人っぽくて綺麗なんです。


暖炉の近くのソファに座ってお茶をいただきます。

持っていった栗のケーキだけでなく、王妃さまがアップルケーキを用意してくれていました。

なんと、小さい姫りんごが埋め込まれたケーキで、まるで焼きリンゴをケーキにしたような形です。

ケーキの上には、香りのいい赤砂糖をたっぷりと掛けてオーブンでじっくりと焼いた為、表面はパリパリで中はしっとりとした食感になっています。

ケーキを切るとじゅわっと果汁が溢れて、食べると甘酸っぱい香りが口いっぱいに広がります。


「新しいお菓子係が入ってね、その子が作ったのよ、どうかしら?」

「・・・すっごい美味しいですっ!いっぱい食べてしまいそう」

王妃さまが、切り分けてくれたケーキを食べながら、あまりの美味しさに礼儀を忘れてしまいそうです。

うん、お口の中にものが入っている時は、お喋りしちゃダメなのよね。


「うふふ、褒めてもらえて嬉しいわ。どうぞ気楽にしてね。折角の女の子だけのお茶会ですもの、楽しく過ごしましょう」

「もう、王妃さまが、そうやってサラを甘やかすから、後で困ることになりますわ」

「あら、一番甘やかしているのは、アレクでしょう?」

お姉ちゃまと王妃さまは、とても仲良しです。ウチにはお母様がいないので、お母様に似た王妃さまがとても慕わしいのだと思います。


お姉ちゃまがこんな風にお喋りをできる年上の女性って、少ないですから。サラでは、頼りにならないですもん。


でもいつかは、ちゃんとお姉ちゃまに頼って貰えるようになりますからねっ!


ウォル兄ちゃまの作った栗のケーキは、王妃さまに大好評で、ホクホクの栗の甘煮が入ったパウンドケーキを侍女さんたちもご相伴してくれました。

みんなが美味しいって言ってくれました。嬉しい〜!!


いっぱい食べて、おなかがパンパンですよ〜。

優しい香りのお茶を飲みながら、ゆっくりとおしゃべりです。


「ねぇ、女の子がこれだけいるのだから、恋バナって出るものでしょう?」

「…王妃さま、婚約者がいる私と、まだ小さいサラに、どんな恋バナをしろと?」

王妃さまが、ニコニコと笑顔で問いかけてきます。コイバナってなんでしょう? 新しいお花でしょうか? うーん、わかりませんが、王妃さまの笑顔からすると、楽しいものみたいです。


「そうね、アレクは、ウォルフとラブラブだから、今更かしらねー。彼女出かける時にケーキを作って持たせる彼ってそうそうはいないわよねぇ」

可愛らしく小首をかしげる王妃さまに同意するように侍女さんたちが参戦する。


「お優しいのですわ、ウォルフ様。騎士学校でも、人気だそうですし」

「こういったステキなお菓子も作られて、でも剣の腕も素晴らしいとか」

「こういうのを、ギャップ萌えというのでしょうか、王妃様!」

キラキラと目を輝かせ、もっと聞きたーいオーラ全開で、アレクお姉ちゃまに迫ってきます。侍女さんたち、怖いですよぉ~。


「そうか、この宮自体が、今恋バナがブームなのね…」

アレクお姉ちゃまが、諦めたようにため息をつきます。こうなっては、女の子って止まらないのよねーって、小さくつぶやいています。


「妹の前で、恋バナをしろって、なんのイジメかしら・・・」

えー、ウォル兄ちゃまとアレクお姉ちゃまは、いつだって仲良しですよ、いじめじゃないですよ?

だって、この間だって・・・。


「サラ、そのお話はおうちに帰ってからねー」

・・・はい、言いません。

お口にチャックなんですね。サラは、空気の読める子ですっ!


「もぅ~、アレクってば、固いんだからー。」

「普通です!」

「じゃあ、サラちゃん、この間の彼氏はどうしたのかしら?」

「はい?」

カレシってなんでしょう。男の人のことですか?・・・誰のことでしょうかー?


「夜会の時に、一緒に抜け出した彼氏、居たのでしょう?」

「あ、エトガルトくんですねっ! サラの初めてのお友達なんです!」

エトガルトくんには、あれ以来あっていないのですが、お友達になったんですよ。あのね、お庭でちょこっとだけですが、一緒に踊ったんです。


「お友達、なの?」

「はいっ! お友達だって、言ってくれました」

王妃さまが残念そうなのは、なぜでしょうか? サラにとっては、初めてのお友達なんですよー。


「エトガルト殿下は、先日5つになられたばかりだから、サラちゃんと同い年かしらね」えー、サラはもうすぐ6歳になるんですもん。

年下かぁ、ちょっぴり残念ですー。同い年かもと思ったのに~。


・・・でも、サラより、ちっちゃいのに、エトガルトくんって、しっかりしていたよねー。うう、なんでしょう、サラがダメっぽい感じがします。サラの方がお姉さんなのにー!


「エトガルト殿下? 隣国の王子様なのですか・・・」

「ええ、第二王子ですけれどね、隣国ホワイエも今は大変だから、我が国の貴族を頼って一時避難をさせていたみたいね」

本当に王子さまだったんだー。すごいなー、エトガルトくん、ナールさまみたいになるのかなぁ~。


「で、サラちゃん、彼が初恋になった?」

「はつこい?」

「そう、なかなか素敵な王子さまだったでしょう?彼に恋してしまったかしら?」

・・・恋をしたかって言われても、解りません。

おしゃべりしたり、ダンスするのは、楽しかったですけどね。


「王妃さま、恋ってなんですか?」

「う・・・、サラちゃん、本質的な問題に切り込んできたわねっ!」

なかなかやるわねっ!って王妃さまは言いますけど、恋ってわかりません。


どうなると恋なんでしょうか。

どうしたら、恋になるのでしょうか?


「サラ、恋は人によって違うのよ。だから、サラは、サラの恋をみつけなさいね」

お姉ちゃまが、頭を撫でながら、にっこり笑っていいました。


なんだかとっても難しいのです。

サラは恋を見つけられるのでしょうか?


「ざんねーん、隣国の彼は、サラちゃんの初恋相手にはならなかったみたいね。」

「・・・王妃様、一体何を期待していらしたのですか?」

「だってねぇ、初恋の瞬間を見たかったのよぉ~。ウチって男の子ばっかりの上に、味気ない位に何も教えてくれないのですもの~」

「ウチので遊ぶのは、止めてくださいね」

うーん、恋って結局、わかりません。今度お兄ちゃまに聞いてみたいと思います。きっとお兄ちゃまならわかりますよね。難しいことをいっぱい知っているのですから!


そう言ったら、王妃さまとお姉ちゃまが、苦笑いしました。


「多分、義兄上にお聞きするのは可哀想だと思うわ、サラ」

「そうねぇ、このテの相談相手としては・・・不適格ダ メ、ね」

そうなんですか、うーん、他に相談できるのは、エドと、マディと、ノルちゃん位なんですけれど。


「・・・サラちゃんには、女の子の友達が必要ねぇ」

「そうかもしれません」

なんで、二人でため息をつくんですかー!?

でも、お友達は、もっと欲しいですね。学校に行ったらお友達もできるでしょうか。


「初恋は、リンゴみたいな甘酸っぱい恋の味~なんて言う人もいたわね。サラちゃんがどんな恋をするのか楽しみだわ~」

「栗の甘煮のように甘くって、洋酒のように強烈な恋に絡め取られるかもしれませんよ」

「あら、経験者かしら?」

「ノーコメントですわ」

王妃さまと、お姉ちゃまは、優雅にお茶を楽しみながら、おしゃべりを続けます。



サラは恋について、考えます。


いつか、恋をする為に。



☆彡 ☆彡 ☆彡 ☆彡 ☆彡


もっともっと、サラが、ちっさかった時の事。

どうしてだか覚えていませんが、かくれんぼをしていたのです。


暗いところに、じっと隠れていました。

「きっと、見つけてくれますからね。隠れていてくださいね」って言われた気がします。


どれだけ居たのかは、わかりません。

いつの間にか眠ってしまいましたが、目が覚めても周りはまだ、暗いままでした。


いつまで、ここで隠れていなくてはいけないのでしょうか。どうすることもできなくて、毛布にくるまって、お姉ちゃまや、おにいちゃまを小さく呼んでみました。


カタリと音がして、扉が開きました。

すると、急に光が射して、周囲が明るくなります。

「ああ、ここに居たね。」

優しい声がして、差し出された手がサラをふわりと、抱き上げてくれます。さしてくる光が強くて、お顔がよく見えません。でも、その姿を見てとても安心したのは、覚えています。


「いい子だね、長い時間で不安だったろう? よく我慢したね」

抱っこしてくれて、背中をぽんぽんと軽く叩いてくれました。頭をなでてくれる手が優しい。優しい手が温かくって嬉しくてそのまま眠ってしまいました。


ここは、安心。ここは、大丈夫。ここは、サラを大切にしてくれる人の手があるところ。

ここは、あったかいところです。



サラの中の大好きの基準は、ここで決まったのかもしれません。


「恋とはどんなものかしら?」なんて曲がありましたねぇ。

5歳には、まだ難しいかもしれません。でも「恋せよ乙女」ですからね!

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