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ミルクティ色の仔猫の話  作者: おーもり海岸
2. はじめての舞踏会
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2-17. 仔猫と、チェッカーボードクッキーに、招待状

仔猫の郵便屋さん…。可愛い、考えたら止まらないかもっ!

夜が寒くなってきて、おうちの暖炉に火が入りました。


暖炉が真っ赤な火が点くのが楽しくなって、薪を組立て火を熾すエドの作業を、近くでずーっと見ていたら笑われました。


「そんなに近づいて見ていると、顔が真っ赤になるぞ?」 

「みっ!?」

慌てて顔に手を当てます。手が冷たく感じて、確かに顔が熱いです。赤くなっているのかな?


夕ご飯の時間が近づき、おうちの中が活気づいて、にぎやかになります。お姉ちゃま、お兄ちゃまが帰ってくる時間にあわせて、色々な準備をしているからですね。みんな忙しそうです。


玄関の方が騒がしくなりました。

メイドさんがパタパタと走っていきます。

「サラちゃん、アレクさんとカールくんが帰ってきたんじゃないか?」

エドに言われて、すぐに玄関に走ります。お迎えに行かなくっちゃっ!


「ただいま、サラ!」

「ただいま戻りました」

大当たりです、アレクお姉ちゃまと、カール兄ちゃまです。


「おかえりなさいっ!」

待ちきれなくてコートを脱ぐお姉ちゃまに飛びつきます。少しのお外の匂いとお姉ちゃまの優しい香りがします。


「戻ったばかりだから、冷たいでしょう。あら、サラ顔が赤いわよ?」

「暖炉の火の近くにでも居たのかい?」

「う…うん、でも、へいき、だもん」

やっぱり顔が赤くなっていたようです。


アレクお姉ちゃまに手をつないでもらって、お部屋へ行きます。

今日あったことをお話して、お休みの日に何をしようかと、相談します。

この間みたいにピクニックに、また行きたいな!


でも、寒くなったので、もうピクニックは無理ね、とお姉ちゃまが言いました。


この間のピクニックが楽しかったので、ちょっと残念です。

しょんぼりしていたら、お姉ちゃまがにっこり笑って言いました。


「その代わりに、暖かいお部屋で、みんなでご飯をしましょう。そうね、慰労会ってものね!」


また、みんなでごはんが食べられるのは嬉しいです!

気取らないお友達だけの集まりなので、子供も参加できるようにおうちで略式の晩さん会をするのだそうです。


そうこうしているうちに、アル兄ちゃまが帰ってきました。サラはお出迎えに走ります。

「ただいま、サラ。いい子にしていたかい?」

「おかえりなさい! ちゃんと、いい子にしてたもん!」

そう、今日は何にもしていませんよ。大丈夫です、たぶん…。

平気だよねー?ってエドの方を見たら、エドとアル兄ちゃまに笑われてしまいました。


もーっ、サラは、いい子にしていましたってば!


☆彡 ☆彡 ☆彡 ☆彡 ☆彡



「では、サラが招待状を配って回るかい?」

晩ご飯の後、みんなでお茶を飲んでいる時に、アルにいちゃまが言いました。


晩餐会の招待状を、招待者へ届けて「どうぞ、いらしてください」って言うのだそうです。


「アルにいちゃま、サラ、やりたいっ!」

ナール様や、ノルちゃんのとこに、招待状を持っていきたいです!

王妃さまにも、できれば来てくださいねって、持っていくんですよ~。もちろん、マディのとこもです。


招待状の配達には、一緒にエドもついて来てくれるそうです。王宮の中だったりすると、一人では行けないですからね。


サラにも、お手伝いできることがあって、嬉しいっ!


招待状などの準備ができたので、サラは珍しく仔猫ではなく、普段のままの姿で王宮に行きました。

バスケットの中に入ってではなく、アルにいちゃまに抱っこしてもらって入る王宮はなんだかちょっと違って見えます。


「これが招待状。表に名前が書いてあるからね、渡す前に確認をしてお渡しするんだよ?」

おお、束になっている招待状は、初めて見ましたっ!

厚手の封筒は、サラの手にはちょっと大きいので、両手で持たないとね。


封筒と格闘していると、エドが肩かけの布袋を貸してくれました。

これを肩に斜め掛けにして、封筒を入れれば完璧ですねっ! まるで、本当の郵便屋さんみたいじゃないですか?


だんだん楽しくなってきました。布袋をかけてくるくる回っていたら、アル兄ちゃまに苦笑されました。


大丈夫ですよっ! サラは、ちゃんとお仕事しますからね!


まずは、一人目のお仕事です。

「クレマンさん、どうぞ、いらしてください」

宛名を確認した招待状を差し出して、笑顔で言います。笑顔、大切です。ちょっとつっかえたとしても、ご愛嬌・・・ですよね。


「私を招待してくださるのですか?」

「はい!」

クレマンさんが驚いています。お疲れ様会ですからね、いつもアルにいちゃまと一緒に忙しくしている人を呼ばない訳がありません。


「それとね、これは『おまけ』なの、です。」

もしも、招待した人が来れなくても、気分だけおすそ分けしましょう、ってお姉ちゃまが言ったので、料理人さんにお願いして、お菓子を作ってもらいました。

バニラ味とチョコレートの味、白と黒が交互になったチェッカーボードクッキーです。

これを、小さな紙袋に少しずつ詰めて、リボンを結んでおめかしです。


クレマンさんに屈んでもらって、ちょっとだけ内緒話です。

「あのね、これは舞踏会の時に、サラを見ていてくれたお兄さんたちの分です」


小さな紙袋が5個。こっそりとクレマンさんに渡します。

あれ、ちょっと驚いた顔ですよ? うん、知っています。物陰からそっと見てた人たちですよ。


「内緒だから、こっそり、なんです」

「はい、ありがとうございます」

真面目に言ったら、クレマンさんがにっこり笑って、小さい声でお礼を言いました。


アル兄ちゃまは、お仕事をしながら見ないフリをしてくれます。

だって、内緒のおはなしですからねっ!


招待状を入れた布袋を斜めに肩掛けして、お菓子も持って準備完了です。

「いってきまーすっ!」


二人目の招待客さんのところへ行くんです。お仕事がんばりますよっ!


☆彡 ☆彡 ☆彡 ☆彡 ☆彡



「どうぞ、いらしてくださいねっ」

王妃さまのお部屋に行って、招待状を渡します。

王妃さまの招待状は、お姉ちゃまが大切にしていたペールピンク色で、うっすらとお花の模様が入った綺麗なカードにしました。サラが選ばせてもらったんですよ!

よろこんでくれるといいんだけどー。


「まあ、サラちゃん、嬉しいわっ!」

王妃さまの文机を見ると、招待状が山のようになっています。うーん、さすがは王妃さまです。

それでも、サラのおうちの招待状を嬉しいって言ってくれる王妃さまって、すごく優しいのです。


「あんなに沢山の招待状があっても、本当に私に来てほしいと思っているものは、一つもないのよ。

 王妃が列席することで、その場に箔をつけたいだけでね…。

 つまり、全然楽しくないのよ。サラちゃん」

招待状の山を見ていたサラを見て、王妃様が溜息をつきます。王妃さまもお疲れなんですね。


「だからね、アレクやサラちゃんが用意してくれた招待状はとっても嬉しいわ。

 ペールピンクのカードも、可愛いお花の模様も、私の為に用意してくれたのね」

そっと招待状を撫でながら、嬉しそうに王妃さまが笑います。よろこんでもらえたら、何よりですっ!

お姉ちゃまもお気に入りのカードなんですよ〜。


「色々あって、お疲れ様の晩さん会にうかがうことはできないけれど、お誘いはとても嬉しかったわ。ありがとう、サラちゃん」

来てもらえないのは、残念ですけど、サラがその分、遊びにきますからねっ!着せ替えごっこも、お付き合いしますよっ!…5着までなら。

王妃さま、元気だしてくださいねー。


王妃さまにも、チェッカーボード・クッキーを渡します。王妃さまのは、ピンクのイチゴ味と白のバニラ味のなんです! いちごミルクの味がするんですよ〜。

これは、ウォル兄ちゃまがレシピを考えて、うちの料理人さんが作ってくれたんです。

サラ用に作ってくれたのですが、王妃さまには、特別ですっ!


「まああ、可愛いわあ、食べてしまうのが勿体ないくらいよ!」

王妃さまがよろこんでくれて、よかったですー♪


お茶をしていらっしゃいな、と言われたけれど、サラはまだ配達があるんですもんっ!

頑張りますよーっ!!


※ 幕間  執務室にて> その後 ※


「なんというか、油断のならないお嬢さんですね」

「まあ、サラだからな…」

サラを送り出した後、お菓子の包みを見ながらクレマンが溜息混じりに呟く。

一番のんびりしているようで、気配には敏感。自分に敵意のない人間かどうかを的確に見抜くのがサラだ。


「それにしても、付いていた人数まで判るとは。…君たち、少しは反省して下さいよ?」

クレマンが、いつの間にか戻ってきている影たちに小言を言う。


「我らは、ちゃんと気配を消していましたぞ」

「お嬢は、気づかれたようですが…不覚です」

「あんな、ちっちゃい子がねぇ」

「信じられませんよー」

「あ、ちゃんと人数分あるぞ」

わらわらと菓子袋に群がる黒装束。それはそれで不思議な光景だった。

個別認識されることの少ない上に、御礼を言われることなど、まるで無かった彼らにとって、サラは珍しい保護対象だった。


「これからも、サラが誰かにかどわかされない様に、注意を払ってくれ」

書類から顔を上げないままに、頼み事をする上司を見ながら、全員が本当に大切にしているよなぁ、と心の中でつぶやく。


「それは、もちろん」

「でも…」

「お嬢の方から」

「うん、犯人の方へ」

「突っ込んでいきそうですよねー」

サラを知っていると、否定はできない。興味があると何処でも首を突っ込んでしまうのがウチの仔猫の習性だ。止められるとは、思わないが。


「…極力、気をつけておいてくれ、以上だ」

「「「「「承知しました!」」」」」


影全員に意見が一致したあたり、やはり、仔猫には鈴でもつけておくべきだろうか、と兄は真剣に悩んでいたのだった。


幕間ー End

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