2-13. 仔猫と子犬の舞踏会 その2
初恋風味に仕上げてみました。
まあ、彼にとって…ですが。彼女がどうかは知らない(笑
ダンスが終わって、お兄ちゃま達のところに戻ろうとしたら、見ていたみんなに「上手だったわよ!」って褒めてもらって、嬉しくって御礼を言っていたら、急に手を引かれた。
そこからは、人の間を縫って引っ張られて、走って、走って・・・気が付いたら、王宮のお庭に出ていました。息がはぁはぁ、します。
引っ張っていたのは、カール兄ちゃまではありませんでした。
もっと小さい手の男の子。
庭の柔らかな灯りの中、やっと顔を見ることができました。
「…エトガルトくん?」
そう、手を引っ張っていたのは、草原であった小さい男の子だったのです。
「おまえ、あいかわらず、けいかいしんがないんだな…」
「うぅ、急にひっぱってきたエトガルトくんに言われたくないよっ!」
だって、だって、ひっぱってくれた手は、嫌な感じがしなかったんですもの。だから、悪いことじゃないんだなーって思って、着いて来てしまいました。
えーと、それじゃダメかな?
「しょうがないか。それがサラなんだから」
「うん、しょうがないんだよ!」
エトガルトくんにやれやれと、言われましたが、納得してくれたようなので、よかったです!
今日のエトガルトくんは、真っ白な礼服に金のモールが美しく縫い取られ、胸にはサーモンピンクのバラが飾られていた。まるで王子さまみたいですよ!
「じゃあ、サラは、お姫様だな」
って言われました。…エトガルトくん、なんでしょう、この大人な発言は!
どうしちゃったんですかぁ!? 熱でもあるんでしょうか、心配でになります。
「王子さまなら、あいては、お姫さまだろう?」
「はぁ、エトガルトくんは、きっと大きくなったらモテモテの人になるんだろうねー」
「サラ、意味がわからないぞ?」
いいんだよ、お友達だと思っていたのに、実はぜんぜん違う世界の人だったと知りました。
ひとりだけ、大人になっちゃうんだねー。さみしいですう。
ぶつぶつと文句を言いながらも、エトガルトくんとお庭を歩きます。
日が落ちたばかりなので、まだ、そんなに寒くはありませんし、舞踏会が始まったばかりなので、お庭に人もいません。内緒のおでかけには最適ですね。
「サラは、おれとも踊ってくれるか?」
「うん、いいよ、ここで?」
広間から、人のさざめきと小さくですが軽快な円舞曲が流れてきます。
魔石の光が優しくて、ここで踊るのも、ステキだなー。みんなでここで踊りたいくらいです。
「ああ、おれはまだ広間では踊れないから…」
苦い微笑みで、エトガルトくんが手を差し出します。
そんなに寂しそうに笑わせているのは、サラのせいでしょうか?
ちゃんと笑ってほしくて、笑って欲しい気持ちを込めて、お姉ちゃまに教わった通りにふわりとスカートを広げて、ゆっくりと一番いい笑顔で答えます。
「よろこんで、お受けします、エトガルトくん」
広間から聞こえる音楽は、大きくはないけれど、何度も練習した曲なので、踊れます。
エトガルトくんが、ちゃんとリードしてくれて、二人でくるくると踊りました。
「すごいねエトガルトくん、ちゃんと踊れるんだ!」
「おまえと、いっしょにするなって! おい、サラ、足をふむなよ」
「あははっ! 間違えちゃった!! うん、だいじょうぶ」
「ほんとうか? 練習した甲斐がないだろうに」
だんだん楽しくなって笑顔から、本当に笑い出してしまって、おしゃべりをしながら踊りました。
エトガルトくんも笑顔です。きらきらの楽しそうな笑顔です。
「ねぇ、エトガルトくんは、サラのお友達だよね?」
「!…いきなり、どうした?」
「だってねぇ、サラは、同じくらいの歳のお友達がいないんですもん。エトガルトくんが最初にお友達だといいなーって」
「さいしょの、ともだち?」
そうなんですよ、子供の友達っていないんですよ。おうちから殆どでないですしね。子供を連れた貴族の集まりにも、両親がいないので出ませんし。友達を作る機会もなかったんです。
「だめかなぁ、エトガルトくん…」
「…サラが、そういうなら、なって、やってもいい…」
本当ですか!? わあ、嬉しい〜、あとから嫌って言ってもなしですからね!!
うふふ、初めての子供のおともだちですよ! おにいちゃまに自慢しちゃいましょう!!
あんまり嬉しくて、ぴょこぴょこ飛び跳ねていたら、エトガルトくんに、落ち着けって言われました。
…なんでしょう、エトガルトくんは、ちょっと耳が赤いです。
うーん、踊ってて暑くなったんでしょうか。
「あ、お腹も空いたねー。ごはんが食べたい! もどろうか!」
「…ああ、サラは空腹だけはわすれないタイプだな」
げんなりとしたようにエトガルトくんが言いました。
だって、お昼からずーっと、踊りの練習とご挨拶で、お茶もお菓子も食べられなかったんですもん。お腹すきましたよ! ごはんは大切ですよ!!
サンドイッチとかー、ハムと野菜のサラダとかー、コンソメ野菜のゼリー寄せもあるかなっ!
イチゴのケーキもあるといいなー♪
王宮の大広間に面したテラスの一つに向かって、二人で歩いてきます。
きっとノルちゃんとマディがいるので、ごはん食べたいなって、言いに行こうっと。おにいちゃまは、まだお仕事のご挨拶かなぁ。あ、お姉ちゃまのダンスも観たいなー。
なんて、とりとめのない話をしながら、握ったエトガルトくんの手をぶんぶん振って歩きます。小さく苦笑する気配を感じますが、さっきみたいに寂しい感じじゃない。
ちょっと元気になってくれたなら、嬉しい。
そんなことを思いながら、大広間の方向へ歩いていた時に、事件が起きたのだった。
次回、アクションシーンとなっております。
大丈夫なのか、おーもり!(汗




