表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ミルクティ色の仔猫の話  作者: おーもり海岸
2. はじめての舞踏会
41/72

2-13. 仔猫と子犬の舞踏会  その2

初恋風味に仕上げてみました。

まあ、彼にとって…ですが。彼女がどうかは知らない(笑

ダンスが終わって、お兄ちゃま達のところに戻ろうとしたら、見ていたみんなに「上手だったわよ!」って褒めてもらって、嬉しくって御礼を言っていたら、急に手を引かれた。


そこからは、人の間を縫って引っ張られて、走って、走って・・・気が付いたら、王宮のお庭に出ていました。息がはぁはぁ、します。


引っ張っていたのは、カール兄ちゃまではありませんでした。

もっと小さい手の男の子。


庭の柔らかな灯りの中、やっと顔を見ることができました。


「…エトガルトくん?」


そう、手を引っ張っていたのは、草原であった小さい男の子だったのです。



「おまえ、あいかわらず、けいかいしんがないんだな…」

「うぅ、急にひっぱってきたエトガルトくんに言われたくないよっ!」

だって、だって、ひっぱってくれた手は、嫌な感じがしなかったんですもの。だから、悪いことじゃないんだなーって思って、着いて来てしまいました。


えーと、それじゃダメかな?


「しょうがないか。それがサラなんだから」

「うん、しょうがないんだよ!」

エトガルトくんにやれやれと、言われましたが、納得してくれたようなので、よかったです!


今日のエトガルトくんは、真っ白な礼服に金のモールが美しく縫い取られ、胸にはサーモンピンクのバラが飾られていた。まるで王子さまみたいですよ!


「じゃあ、サラは、お姫様だな」

って言われました。…エトガルトくん、なんでしょう、この大人な発言は!

どうしちゃったんですかぁ!? 熱でもあるんでしょうか、心配でになります。


「王子さまなら、あいては、お姫さまだろう?」

「はぁ、エトガルトくんは、きっと大きくなったらモテモテの人になるんだろうねー」

「サラ、意味がわからないぞ?」

いいんだよ、お友達だと思っていたのに、実はぜんぜん違う世界の人だったと知りました。

ひとりだけ、大人になっちゃうんだねー。さみしいですう。


ぶつぶつと文句を言いながらも、エトガルトくんとお庭を歩きます。

日が落ちたばかりなので、まだ、そんなに寒くはありませんし、舞踏会が始まったばかりなので、お庭に人もいません。内緒のおでかけには最適ですね。


「サラは、おれとも踊ってくれるか?」

「うん、いいよ、ここで?」

広間から、人のさざめきと小さくですが軽快な円舞曲が流れてきます。

魔石の光が優しくて、ここで踊るのも、ステキだなー。みんなでここで踊りたいくらいです。


「ああ、おれはまだ広間では踊れないから…」


苦い微笑みで、エトガルトくんが手を差し出します。

そんなに寂しそうに笑わせているのは、サラのせいでしょうか? 

ちゃんと笑ってほしくて、笑って欲しい気持ちを込めて、お姉ちゃまに教わった通りにふわりとスカートを広げて、ゆっくりと一番いい笑顔で答えます。


「よろこんで、お受けします、エトガルトくん」


広間から聞こえる音楽は、大きくはないけれど、何度も練習した曲なので、踊れます。

エトガルトくんが、ちゃんとリードしてくれて、二人でくるくると踊りました。


「すごいねエトガルトくん、ちゃんと踊れるんだ!」

「おまえと、いっしょにするなって! おい、サラ、足をふむなよ」

「あははっ! 間違えちゃった!! うん、だいじょうぶ」

「ほんとうか? 練習した甲斐がないだろうに」


だんだん楽しくなって笑顔から、本当に笑い出してしまって、おしゃべりをしながら踊りました。

エトガルトくんも笑顔です。きらきらの楽しそうな笑顔です。


「ねぇ、エトガルトくんは、サラのお友達だよね?」

「!…いきなり、どうした?」

「だってねぇ、サラは、同じくらいの歳のお友達がいないんですもん。エトガルトくんが最初にお友達だといいなーって」

「さいしょの、ともだち?」

そうなんですよ、子供の友達っていないんですよ。おうちから殆どでないですしね。子供を連れた貴族の集まりにも、両親がいないので出ませんし。友達を作る機会もなかったんです。


「だめかなぁ、エトガルトくん…」

「…サラが、そういうなら、なって、やってもいい…」

本当ですか!? わあ、嬉しい〜、あとから嫌って言ってもなしですからね!!

うふふ、初めての子供のおともだちですよ! おにいちゃまに自慢しちゃいましょう!!


あんまり嬉しくて、ぴょこぴょこ飛び跳ねていたら、エトガルトくんに、落ち着けって言われました。

…なんでしょう、エトガルトくんは、ちょっと耳が赤いです。

うーん、踊ってて暑くなったんでしょうか。


「あ、お腹も空いたねー。ごはんが食べたい! もどろうか!」

「…ああ、サラは空腹だけはわすれないタイプだな」

げんなりとしたようにエトガルトくんが言いました。


だって、お昼からずーっと、踊りの練習とご挨拶で、お茶もお菓子も食べられなかったんですもん。お腹すきましたよ! ごはんは大切ですよ!!


サンドイッチとかー、ハムと野菜のサラダとかー、コンソメ野菜のゼリー寄せもあるかなっ!

イチゴのケーキもあるといいなー♪


王宮の大広間に面したテラスの一つに向かって、二人で歩いてきます。

きっとノルちゃんとマディがいるので、ごはん食べたいなって、言いに行こうっと。おにいちゃまは、まだお仕事のご挨拶かなぁ。あ、お姉ちゃまのダンスも観たいなー。


なんて、とりとめのない話をしながら、握ったエトガルトくんの手をぶんぶん振って歩きます。小さく苦笑する気配を感じますが、さっきみたいに寂しい感じじゃない。


ちょっと元気になってくれたなら、嬉しい。



そんなことを思いながら、大広間の方向へ歩いていた時に、事件が起きたのだった。



次回、アクションシーンとなっております。

大丈夫なのか、おーもり!(汗

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ