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ミルクティ色の仔猫の話  作者: おーもり海岸
2. はじめての舞踏会
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2-12. 仔猫と子犬の舞踏会  その1

遅くなりました! 次はなるべく早くに投稿しますね。

陽が沈みかけてきたころ、王宮の庭に、ぼんぼりが沢山吊るされました。

布製のぼんぼりの中には、小さな魔石が入れられて、淡い光を放ちます。


やがて陽が沈むと、王宮の庭はふんわりとした明りの包まれて、まるで妖精の庭のようです。


王宮の中、東の棟の回廊が解放され、大広間と共に舞踏会の会場となります。

東の回廊と、先にある大広間にも燭台の灯りがともされて、いつもより華やかに飾り付けられた大広間は、始めて見ました。とても綺麗なんです。


「サラ、控えの間は、いつものように使えるからね。もし、はぐれたりしたら、ここへ戻っておいで」

と、カール兄ちゃまが言いました。

今は控室で、舞踏会までお茶を飲みながら、お兄ちゃま、お姉ちゃまとゆっくりしています。

今日はカール兄ちゃまが、パートナーになってエスコートくれるのですって!

サラがちっさくておとなとは踊れないから、わざわざ学校の方はお休みして、サラと踊ってくれるんですよ〜。嬉しいの〜!!


カール兄ちゃまが、パートナーになってくれることになってから、毎晩おうちの広間でダンスの練習をしました。カール兄ちゃまも、久しぶりで忘れてしまったから、アル兄ちゃまにリードの仕方を教わっておくんですって。


それでね、だんだん、みんなで交代に踊るようになって、「カールばっかり、ずるいわっ!」とアレクお姉ちゃまが言うので、アレクお姉ちゃまとも踊ったりして、とっても楽しかったんですよ~。

毎晩、お兄ちゃま、お姉ちゃまが帰ってくるのが、すごく楽しみだったんです。


舞踏会が終わっても、また一緒に踊って欲しいなぁ〜。


やがて案内が来て、大広間に移りました。王宮の大広間は、綺麗なリボンやお花で飾り付けられて、キラキラ、ひらひら。

いつも、エドと追っかけっこをしているところとは思えません。


「いや、あれは『追いかけっこ』なんじゃなくて、サラが逃げ回るのを追いかけているだけだから」

エドに言ったら、そう返されました。


だってねー、もう少し遊んでいきたいのに、帰ろうっていうんだものー。


大抵は、マディが「お茶にするよー」って呼びに来たりして終わりになっちゃうの。

もう少しエドとあそびたいのに〜。今度は、もっとちゃんと逃げますからね!



メイン会場、大広間の上座には、ナールさまがいます。

今回は、王子様方の主催なので、王様や、王妃様はお出にならないんですって。王妃さまに「略式の若者向けにした舞踏会だから、気楽に楽しんでいらっしゃい。」と言われました。


出席者に若い人が多いってことは、お兄ちゃまや、お姉ちゃまのお友達や、知り合いも多いということです。

なので、さっきから、みんなご挨拶で大忙しです。


サラは、なんとなく居づらいので、アル兄ちゃまの後ろにひっつき虫になってみました。

知らない人ばっかりは、ちょっと怖いんですもん。

でも、アル兄ちゃまにくっついていると安心で、少しだけ周りをみることができます。後ろからこっそりと覗くだけですけどね。アル兄ちゃまの後ろには、エドが控えています。


今は、アルにいちゃまと、エドにサンドされている感じです。

えへへ、ぜいたくですねっ!


ヤな人がご挨拶に来た時、即兄ちゃまの影に隠れたら、エドが他の人に解らないように、そっと頭をなでてくれるんです。・・・大人っぽいのは、一休みです。今はこどもでいいもん。


主催者のナールさまのご挨拶があり、舞踏会が始まりました。

ちっちゃい子は最初から踊って途中で退席し、その後は、社交界にデビューしている大人だけの夜会となります。


「サラ、行けるかい?」

「はいっ、アル兄ちゃま、エド、いってきまーす!」

おおっと、出番みたいです。

アル兄ちゃまと、エドのところから走り出て、カール兄ちゃまに手をとられながら、広間の中央に進み出ます。最初に特別に招待された小さい子や、未成年が踊ってその場を和ませる係りなんですよ。上手くなくてもいいから、踊ってね~、という主催からのメッセージでもあるそうです。


・・・ってお姉ちゃまが言っていました。むずかしいです。


曲が始まり、カール兄ちゃまのリードで、クルクル踊ります。

ふふ~ん♪、このところ、みんなと練習しましたからね!踊れるんですよ~!


でも、上手いの?って聞かないでくださいねっ!こ、答えられませんからっ!

今はダンスに集中ですっ!



☆彡 ☆彡 ☆彡 ☆彡 ☆彡



主催者席というのは、実につまらない。


身動きがとれない上に、人が押し寄せて、挨拶に忙殺される。

「今日は、ゆっくり楽しんでいってください」という台詞を何度言っただろうか。


流石に笑顔もひきつってきた。


とはいえ、舞踏会という餌に、例の奴らは食いついてくれた。

あとは、刺した釘に気づいて身を慎んでくれればよし。暴挙に出るようであれば、叩きのめすだけだ。


目の前の広間では、未成年の招待者に混じって、サラちゃんが、兄のカールと一緒に踊っている。

最初は一生懸命に踊っていたが、そのうち、知り合いを見つけるたびに笑顔になり、小さく手を振っては兄に苦笑されている。


今も、私が見ていることに気が付いて、小さく「ナールさま」と笑顔で呼んでくれた。

さすがに手は振らなかったようだが。


先日のダンスの練習のおかげで、母上の侍女や、侍従たちは、幼い妹の晴れ舞台を見るような緊張した面持ちで、サラちゃんを見守っている。

目があえば小さく手を振り、「サラちゃん、頑張ってっ!」と応援するものもいる。


彼らにしても、サラは「小さな妹」なのだろう。


無事、踊り終わって、ほっとした笑顔でお辞儀をし、見守っていた者たちとあいさつを交わしながら家族の待つ席へ戻ろうとしていた姿を見た。




それが、舞踏会会場で、サラちゃんを見た最後だった。



ちょっとだけ、ミステリー風味なんですが、仔猫が迷子の常習犯なんで、あまり盛り上がりません・・・自業自得か?

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