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ミルクティ色の仔猫の話  作者: おーもり海岸
2. はじめての舞踏会
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2-11. 仔猫は、くるくると踊ります

舞踏会と言えば、ダンスですね。

仔猫のダンス教室です♪

楽しかったピクニックから戻って、また、王宮へ通う日が続きます。


なんでも今度は、舞踏会があるんですって!

ナールさま、忙しくって大変ですねっ!


今回は、アレクお姉ちゃまも手伝わなくていいそうです。王宮の人が『威信いしんをかけて』準備するものだから、だそうです。

いしんってなんでしょう。ちょっと難しくてわかりません。


でも、今度はみんな自分の準備をしないといけないので、また大忙しです。

アレクお姉ちゃまも夜会用のドレスを新調するそうです。一緒にサラのも作ってくれましたっ!


本当はね、夜会には、ちっちゃい子は出てはいけないんですって。

でも、今回は夕方から未成年の人も呼ぶから、お兄様と一緒に出てもいいよって、ナール様が言ってくれました。

そして「私ともに踊っておくれ」って言われたのですが、サラはちゃんと踊れるのでしょうか?


うーん、心配ですっ!


仔猫の姿でいいのなら踊る必要もなくて楽なんですが、折角お姉ちゃまが作ってくれたフワフワでヒラヒラで、キラキラのドレスが着られないのは、悲しいです。


「綺麗なドレスも作ってもらったし、ご挨拶も練習したんだろう? 何が心配なんだ?」

て、エドが聞いてくれました。


「だってね、サラ、ダンスってちゃんとやったことがないんですもん。

 踊ってねって言われても、できないの~。」

口がへの字になってしまいます。

遊びでお兄ちゃま達に、踊ってもらいますが、殆ど抱っこして振り回してもらうようなものです。

多分、あれはダンスじゃないハズ・・・。


「それじゃあ、練習しよう! 折角王宮にいるんだから、ダンスの相手には事欠かないしな!」

と、エドが楽しそうに言って、王妃様のところへ連れて行ってくれました。


「まあ、サラちゃん、ダンスがしたいの? じゃあ、一緒に踊ってみましょうっ!」

事情を聞いた王妃さまがノリノリで、練習相手になってくれました。


王妃様の言うとおりに足を動かしてくるくると回ります。

サラが小さいから、王妃様、踊りにくいですよねー。


「サラちゃん、上手よ! あとは、どんどん踊って覚えていくだけね」

「本当に、どんどん上手になりましたよ!」

王妃さまと、王妃さまの侍女さん達に褒められて、ちょっと得意になっています。


サラは、おだてに弱いんです~。


王妃様が、休憩をしている間は、侍女のお姉さん達にお願いして踊ってもらいました。


「サラちゃん、早いステップですよ!頑張ってください!」

「はいっ!」

侍女のお姉さんたちは、とってもダンスが上手で、交代で相手をしてくれます。


ぴょんぴょん跳ねるようなステップや、足をはね上げるようなステップもいっぱい教えてもらいました。すごく楽し~ですっ♪



☆彡 ☆彡 ☆彡 ☆彡 ☆彡



王宮の個人的な客を迎える為の小さな応接室から、楽しそうな音楽が流れ、開かれたその扉から中を眺める人々の顔には笑が溢れている。


侍女たちは、我先にと応接室へ入っていく。

侍従たちは、その姿を笑顔で見守る。


アーノルドとエドは、入口付近に陣取って、男子の出入りと牽制していた。

中ではサラが、王妃様と侍女たちと、ダンスのレッスンという名のお遊戯に興じている最中だ。


王妃様や、サラと踊るのは、侍女たちだけで、男子は応接室に入ることもできない。

侍女たちの新しいダンスを教わる事に夢中のサラは、全然気づいていないが。


「おやおや、番犬付きでダンスのお稽古とは、サラちゃんも大変だね」

「何とでも。妙な害虫が入り込んで来るよりマシですからね」

人だかりの原因を見て笑顔になったナサニエル殿下は、入口の守護者を見つけて冷やかしてみたが、返ってきたのは、来るべき害虫の駆除宣言だった。


「・・・サラちゃんも、大変だ。こんな心配性のお兄さん達がいては、恋人なんて作れないだろうに」

「サラは、まだ5歳です。まだまだそういう話は早い、そう思いませんか?」

冷え冷えとした笑顔でアーノルドが威圧する。

この兄に認めてもらうのは至難の技だろう。


「あいつ・・・、サラ?」

幼い少年の声がする。

王宮に挨拶に来ていた、ホワイエ王国のエトガルト第二王子だ。


先日、草原であった少女が目の前で、この国の王妃さまと楽しそうにくるくると踊っている。

その楽しそうな笑顔を見て、もう一度、話してみたいと思ってしまった。


好きなのかも解らない、ただ、もう一度話してみたい。


「あのものは、こんどの舞踏会にでるのですか? ナサニエルさま」

「ん? サラちゃんかい? 出るよ。小さいから最初だけだけれどね」

どうやら、思わぬ伏兵が出てきてしまったようだ、とナサニエル殿下は思った。とはいえ、まだまだ彼では役者不足だ。


「サラちゃんに、ダンスを申し込みたいのなら、まずは、彼女の家族に許可をとるべきだろう?

 ああ、そこにいるのが、お兄さんのアーノルドだよ。」

にこやかに、今気がついたかのように、アーノルドを紹介してみせ、そして軽やかな口調で話を続ける。


「しかし、まずは自分の問題を片付けてからにするべきだとは思わないかい?

 公の場で彼女に話しかけたり、ダンスに誘うことによって、彼女まで危険が及ぶ・・・

 そんな風には思わないかね?」

「・・・~っ!」

遠まわしに、サラに近づくには、当分、早いと釘を刺した形だ。


悔しそうに俯くエトガルトを見下ろしながら、サラの姿は見せてやっているのだから、かなりの譲歩だと思っている辺り、ナサニエル殿下も兄達に負けない位に過保護だった。


結局、兄たちだけでなく、殿下たちも、サラには甘いらしい。


音楽に合わせて楽しそうに侍女たちと踊るサラを見ながら、今回の舞踏会は荒れるだろうが、それはサラが十分にダンスを楽しんだ後にしよう、と大人たちは決意するのだった。





あー、もう、この大人たちと来たら!

初恋計画が台無しですよー・・・。


ナール様まで邪魔するとは、想定外でした!(笑


次回は、大人たちの舞踏会協奏曲です。

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