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ミルクティ色の仔猫の話  作者: おーもり海岸
2. はじめての舞踏会
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2-10. チョコレートの秘密

可愛い娘さんに、彼氏ができそうになったとき、とある方がとった行動を真似してみました。

・・・心、せまっ!(笑

エドと一緒にみんなのところへ戻ったら、もうすでに食事の準備が出来ていて、美味しそうな香りが満ちています。

あったかい湯気と、じゅわじゅわ焼ける音で、もう、お腹が空いてきました!


今回は、ウォル兄様が、いっぱいごはんを作ってくれました。


大きなベーコンの塊を持ってきていて、これを焚き火で炙ってスライスしていき、表面を焼いたチーズを切り分けてパンに乗せてくれました。

これにたくさんの野菜サラダを添えてあります。

エドの大好物なので、一緒に料理しているところを見ながら、ニコニコしています。


近くの農家で分けてもらった鶏肉は、ダッチオーブンで香草と一緒に蒸し焼きにしたそうです。

鉄のお鍋の中には、鶏が一羽分入っているんですよ! すごいなぁ。


ジャガイモは、大きな鍋でゆでて、ホクホクのものをお皿に盛ってある。バターが乗せられ、とろりと溶けたところが美味しそう!


サラのリクエストである「焼きリンゴ」も準備してあった。

芯の部分をくり抜き、砂糖や、ハチミツ、バターを入れ、大人用には、ラム酒をたらしてある。


さて、準備万端整ったので、各自好きな場所に座ってご馳走を食べることにした。

サラは、アル兄様のお膝の上にいるのですが、さっきの事を思い出して、ちょっと考えてしまいました。


「アルにいちゃま、これって子供っぽい?」

「急に、どうした?」

そうなんですよ、今までは気にしていなかったんですが、さっきの男の子、エトガルトくんに「子供っぽい」と言われて、にわかに心配になってきました。


「サラって、子供っぽいのかなって思って…」

「…また、どうしてそんなことを思ったんだ」

アル兄様は、困惑顔です。答えに困るって感じですよ?

エドとウォルにい様が、ぶはっと、吹き出して苦しそうになっています。なんでー!

アレクお姉さまは、よしよしって頭なでてくれるのですが、なんでしょう、苦笑い?


子供なんだから、子供っぽくてもいいじゃないって言いたいのでしょうが、サラだって、ちょっとばっかり、ちっちゃい子扱いは嫌なんですよっ!

・・・甘やかしてもらうのは、好きなんですが、自分よりちっちゃい子に「子供」って言われると、その、少し悔しいんですもんっ!


「やぁ、仔猫ちゃん、どうしたのだね、ほっぺたが膨れているよ?」

「遅くなりましたー。ナサニエルさまも間もなくいらっしゃいますよー」

笑顔のノル様と、従者のマディがやってきました。


「ノルちゃん、嫌いっ!」

「なぜ!?」

子供っぽいと言われて拗ねているところを見られて思わず八つ当たりです。ツーンだ!

あ、ノルちゃんって言っちゃった・・・。

マディが横で肩を震わせている。もぉ、笑いすぎですよー。


「子供っぽいと言われたくないなら、八つ当たりはやめなさい、サラ」

「はぁーい」

アルにい様に、ため息混じりにお小言をもらいました。

むぅ、大人っぽくする道は遠いですー。



☆彡 ☆彡 ☆彡 ☆彡 ☆彡



「知らない男の子?」

さっき会ったエトガルトくんの話を、お兄様達にしました。

ちっちゃい男の子がこの辺りにいるって珍しいですよね。保養地でもあるので、住んでいるお年寄りは多いんですが、子供ってあんまりいないんです。


あの子も、家族とピクニックに来たのかしら。ってアルにい様に言ったら、エドが笑顔で目をそらしていました。・・・なぜ?


「・・・それで、その子と何を話したんだい?」

「木苺を摘みに行こうとして手を踏んだみたいだったから、ごめんねって言って、ハンカチで巻いてあげたの。そしたらね、はじめましてのご挨拶をしてくれたの。チョコレートももらったのよ!」

結局、木苺は、少ししか摘めなかったけれど、チョコレートをもらってきたのです。

なんだか、美味しそうなチョコレートなんです。嬉しいなぁっ!


でも、なんでしょう。お姉ちゃまも、おにいちゃま達も笑顔なのに、なんだかひんやりします。

おっかしいなぁ・・・。


「サラ、そのチョコレート、見せてくれるかい?」

「はい、これなのー」

綺麗な紙に包まれたチョコレートを、アルにい様に見せました。ね、綺麗でしょう?

ウォルにい様も、カールにい様も見ています。


あれ、なんで眉間に縦ジワなんですか?


そっとアルにい様から、ウォルにい様にチョコレートが渡され、それをナールさまと、ノルちゃんにも見せています。

みんな、そんなに好きなんですか、チョコレート。


うーん、みんなで食べるには、少ないんですよねー。どうしましょう。


「サラ、折角だから、ウォルに頼んで、ここで食べられるようにしてもらおうか?」

「え? 普通に食べるのじゃないの、アルにいちゃま」

「焼きリンゴもあるしね。デザートに出してあげるよ。これ、貰うよ、サラ」

「はーい、ウォルにいちゃま」

笑顔でチョコレートを持って、ウォルにい様は調理場へ行きました。


「お姉ちゃま、ウォルにいちゃま、何でも作れるのね、すごいねっ!」

「そうねぇ、ちょっと大人気ないけどねー」

おとなげってなんでしょう? ウォルにい様が何を作ってくれるのか楽しみです!



☆彡 ☆彡 ☆彡 ☆彡 ☆彡


「ウォルフ様、手伝いますよー」

「ああ、私も、どんなものを作るのか、見せてもらおう。」

さりげなく立ち上がったマディに、ノルベルト殿下が続いた。


十分の距離の離れたところで、エドと、ウォルフが話始めた。


「なんだって、こんなもん、サラが持っているんだ? これはホワイエ王国のチョコレートだろう!」

「その男の子が持っていたんだよ。ってことは、彼は他国の子か?」

ウォルフは、チョコレートを見せてもらった途端に、ホワイエ王国の王室御用達もチョコレートであるとわかった。不審に思って、その場から離れてじっくりと確認してみることにしたのだ。


紙に包まれたチョコレートを開きながら、マディがそっと手をかざす。通常であれば、試薬を使って薬物の有無を確認するのだが、今回は、マディが実際に魔力を使って感知することにしたのだ。

手をかざして10秒後くらいに、六個のうち、二つのチョコレートがドロリと溶けた。


「・・・睡眠薬ですね。子供に与えるには多すぎです。そして、この手法は子供では無理です」

「つまり、狙わてているのは、その子か、その周辺ということか。」

やれやれといった感じのエドは、やたらと身分にこだわり、小さい割に口の達者だった男の子の姿を思い浮かべる。こんな小さい頃から、色々な危険に晒されているなんて、周りの大人は何をしているのか。


「その男の子だが、黒髪に緑の瞳のサラちゃん位の年頃の子ではかなっただろうか?」

「ええ、その通りですが、ノルベルト殿下、お心当たりが?」

ノルベルト殿下は、ここまでの話で思い当たり節があったらしい。


少し困ったように、腕組みをしながら、ポツリと・・・


「その小生意気そうな男の子は、多分、ホワイエ王国のエトガルト第二王子だ」


ノルベルト殿下とマディは、その場からすぐにホワイエ王国の一行がお忍びで訪れている某公爵邸へと急ぐことにした。

睡眠薬を飲ませようとしているのであれば、王子をどこかへさらおうとしている可能性も高い。

下手に国内で他の王族の誘拐などがあったら、外交問題に発展しかねない。


「サラちゃんには、礼を言っておいてくれ。おかげであの子も助かるだろう」

「あー、多分、お二人とも言わないと思いますよ~。あの子にあった記憶を消す気マンマンですからー」

ノルベルト殿下が礼を言えば、マディが的確に兄たちの企みを暴いた。


「やだなぁ、マディ。俺たちがそんな酷いことするわけないだろう?」

「そーだよなー、ウォルがサラちゃんに美味しいデザートを用意するだけなんだし!」

「わー、あんた方の敵だけには、なりたくないですねー」

マディは、サラの未来の恋人も間違いなく兄たちに撃退されることを予感していた。

そして、その兄たちを乗り越えなければ、サラの恋人にはなりえない事も。



☆彡 ☆彡 ☆彡 ☆彡 ☆彡


「ほら、サラ、『パンケーキのリンゴとチョコレートソース』だぞ~」

「わぁぁっ、おいしそ~っ!!」

ウォルにい様が作ってくれたのは、ふわふわで、キツネ色のパンケーキに、焼きリンゴで作ったリンゴソースと、溶けたチョコレートをかけた、素敵なデザートでした!


甘酸っぱいリンゴソースに、塩味の効いたバターとちょっと苦味のあるチョコレートを乗せたパンケーキは、何枚でも食べられそうですっ! うわーん、美味しい~っ!!


「よかったな、『ウォルの作ったデザート』は、美味しかったか?」

「うんっ! すっごーく美味しいの。これ、大好きっ!!」

アルにい様も、にっこりと満足そうに笑って頭を撫でてくれました。


「そうかー、それは良かったな、『ウォルが作ったお菓子』は美味しいからなぁ

 ちゃんと、お礼言うんだぞ」

「うん、エド! ウォルにいちゃま、ありがとうーっ!」

「気に入ってよかったよ。また作ってやるからな」

「わーい♪」

みんなで、にこにこしながら、パンケーキを食べました、焼きたてであったかいソースのかかったパンケーキを食べたら、お腹の中からホカホカして、食べているうちに眠くなってきてしまいました。


「うー、寝たくないのにぃ~」

まだまだ、みんなと一緒に居たいのに、もう眠たくて・・・そういえば、ナールさまとしゃべっていない。ノルちゃんもいなかったし。

そして、なんだか、お礼を言わないといけない人がもうひとりいたような。


「抱っこしてあげるから、寝なさい」

アルにい様に、抱っこしてもらって、よしよしってされたら、すぐに寝入ってしまいました。


「本当に、みんなして大人気ないんだから」

眠ってしまう前に、お姉ちゃまの声が聞こえたような気がします。


起きたら、聞いてみようっと。


出会ったばかりの彼、なかった事にされていますよっ!


お兄様かた、笑顔で排除していますねぇ。

サラちゃんの将来の彼が心配です。 兄達が本気を出さないといいんですが。

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