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ミルクティ色の仔猫の話  作者: おーもり海岸
2. はじめての舞踏会
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2-5. 花いっぱいのお茶会 その1 (策略風味)

お待たせしました、でも、お茶会の準備中だけどね(笑

エドさん Side>


朝から雲ひとつない晴天だった。

中庭に面した1階の応接室の窓を全開にして、外の風の感じられるようにセッティングする。


室内の装飾は最低限にして、中庭の花々を見てもらうことにした。お茶会とはいえ、中にずっと閉じ込められていては、気が塞いでしまうだろうという配慮だ。



お茶会の基本コンセプトは、ナサニエル殿下によるもので、それを王妃様からお借りした侍女たちと、アレク様たちが実際に動いてくれた。

こういう時の男というのは、まるで役に立たない。せいぜいが、テーブルや椅子を並べたり、天窓を開けたりと女子には大変そうな力仕事しかするやることがない。


俺たちみたいな力仕事専門にテーブルウェアの選定について聞かれてもなぁ。


「茶器は、マディウス様が手配してくれましたので、王妃さまのものをお借りできましたの。

季節にあった秋用のテーブルウェアがセットでありましたので。こちらをセット済みです。

ティースタンドを10台も準備済みで、軽食とプチフール、果実をセット致します。」

「ありがとう、マリア。茶葉の方はどうかしら?」

「王妃様が、セカンドフラッシュは、如何かと。

その他にミルクティにあう茶葉と、ハーブティも用意させていただきました」

「王妃様にお礼をお願い。茶葉はありがたく使わせていただきますとお伝えくださいな。

 今回は、成人前の子女も多いので、お酒は少しにしましょう。念のため、香り付けのブランデーと、ラムを少々に用意しておいて」

「はい、アレクサンドラ様」


…何のことやら、ぜんぜん解らないが、アレク様はさくさくと指示を出し決めていく。


うん、ウチの女王さまは、今日も絶好調だ。


「マディ、よくこんなの解るなー」

「あー、慣れだと思うよー。毎日のことだと、なんとなく覚えちゃうもんだからー」

にこにこと笑いながら、口調はのんびりなのに、手元はすばやく銀食器を磨き、セットしている。

…さすが、王子さまの従者は伊達じゃない。

手が空いてしまった俺は、マディと一緒にせっせと銀食器磨きだ。これがなかなか重労働。思ったより力仕事だった。


最後の最後に、人の口に入るものに何か仕込まれていないか、自分でさりげなくチェックしているのだ。

特に、王子たちのカトラリーは絶対に他人に触らせない。マディは、とても慎重で細やかだ。


「…銀食器、でも? か、マディ」

「んー、銀食器、だから、かなー」

銀食器は、毒物に反応するといわれている。だが、それを過信して銀食器自体を摺り返られたり、何か仕込まれていたら意味がない。マディは、一人でさりげなく問題はないか、確認をしているのだ。


今回、少人数で準備をしているもの、不特定多数に紛れて害するものが入って来れないように、だ。


「ヤツラは、一体なにがしたいんだろうな…」

「何かしたいんじゃなく、何かして欲しいんだよー、あの人たちは」


何でもまずは「自分」に目をかけて欲しい。夜会では誰より先に「自分」に声をかけて欲しい。

功績が上げられないのは自分が悪いのではなく、チャンスをくれないのが悪い。目をかけて貰っているシェンブルク家の連中など、たまたま、お茶会で気に入られただけ。

あいつらの仕事がうまくいっているのは、実力なんかじゃない、運がよかっただけだ。


そうやって、僻んで何もしないでいる間に、どんどん実力のある人たちから離されていくのも解らないで…。


「結局、バスケットを盗ませようとしたヤツも、サラちゃんを迷子にさせたヤツも解らなかったな」

「あー、目星はついていても、証拠はないしねー」

お茶会までに、捕まえておきたかったんだけどなぁ。


「多分、今日、何か仕掛けるおつもりでしょう、ナサニエル殿下は」

いつの間にか銀食器を磨く俺たちの横にアレク様が立っていた。

どうやら、犯人候補も招待をしてあるらしい。


「特に教えてはくださらないけれど、どうも、そんな気がするの。だから二人とも、注意してね」

お茶会の会場を見つめてアレク様がささやく。


俺とマディは、軽く会釈をすることで、了解を伝えた。


もう少ししたら、この庭に客が集まりだす。

王子さまは、一体、何を仕掛けるつもりなんだろう?



☆彡 ☆彡 ☆彡 ☆彡 ☆彡 ☆彡


サラは、今、ナールさまに抱っこしてもらっています。


みんな、準備で忙しいんですって。

だからね、サラは一番暇はナールさまと一緒に居なさいって言われました。


「一番、暇なのは、否定しないけれど、なんとなく納得いかないねぇ」

サラをお膝にのせて、撫でてくれているナールさまは、なんとなく、浮かない顔です。


「サラちゃんも、ドレスを来てお茶会に出たかったかい?」

仔猫の姿でおいで、と言われたので、今回サラはドレスは着ません。

でもね、お姉ちゃまが、サラにもドレスを作ってくれたんですよ! ベビーピンクの可愛いドレスです。


「今回のお茶会には着ないけれど、おうちで、お疲れ様のお茶会をする時に着ましょうね」

とお姉ちゃまが言いました。


まだ暖かい日が続くなら、ピクニックもいいね、ってウォル兄ちゃまが言いました。

アル兄ちゃまが、お休みをとってくれるって言うし、みんなでお出かけは久しぶりなんです!

だからね、すっごく楽しみなんですよ!


ナールさまに、一生懸命に説明をしたら、更に眉間に皺が寄りました。


「ずるい・・・、お疲れ様会なのに、私は喚ばれないのか?」

あれ、ナールさま、知らなかったんですか? でも、いいよね、一緒に行きましょう!


えーっとね、サラは、森に行って木の実を拾いたいんです。

飾りを作るのにね、蔓もほしいんです。あと、綺麗な落ち葉も、赤や、黄色の実もあるといいな!

だからねぇ、お姉ちゃまと一緒に森に行きたいんです。

楽しみにしている計画を話します。ナールさまは、微笑みながら聞いてくれました。


お姉ちゃまが、お休みがとれるといいんだけどなぁ。


今回も、お茶会の準備と学校で忙しくて、なかなか一緒にいてもらえません。

アル兄ちゃまや、エドが一緒にいてくれますが、ちょっと寂しいんです。


「アレクを忙しくさせてしまって、ごめんね、サラちゃん。」

少ししょんぼりしたサラを見て、ナールさまが優しく撫でてくれます。


「コレが終われば、少しは、アレク達の負担も減るから、もう少しだけ我慢していてね」

ナール様が、少し困ったような笑顔をします。


大丈夫ですよ、サラは、ちゃんと待ってますから。

寂しくなったら、アル兄ちゃまのとこに行って、抱っこしてもらいます!

お仕事中なら、傍にくっついてご本を読んでいるんです。アル兄ちゃまのお仕事が休憩になって、マディのトコに行くと、美味しいお茶とお菓子を出してくれるんです。

たまにエドが見に来てくれて、肩車でお庭を散歩します。エドの肩車は高くって、楽しいんです。


「・・・アーノルド、羨ましい、仕事の最中でも、傍らに癒しがあるとか、ずるいだろう」

ナール様、頭が痛いんですか?

頭を抱えていますよ、大丈夫ですかー。


「今度、寂しくなったら、私の処においで。抱っこしてあげるから!」

ナールさま、目が怖いです・・・。

エドに、お姉ちゃまや、お兄ちゃま達以外に、スリスリしちゃ、ダメって言われたので、行きません!

お姉ちゃまが、色ボケには、注意って言うし!


「アレクには、やはりもっと仕事をして貰うか・・・」

ナールさま、目の怖さに加えて、笑顔が黒いですー!

お姉ちゃまに何かしたら、嫌いになりますからねっ!ほんとーに、ホントーですからねっ!!


「はいはい、サラちゃんには、敵いません。大丈夫ですよ」

サラがお膝から下りて上目遣いで睨んでいたら、ナールさまが笑いながら抱き寄せた。


もお、本当に、ナールさまは、わかんないっ!


「拗ねないで、サラちゃん。お茶会が始まったらね、会場を見て回ってほしいんだ。そしてね・・・」

ナールさまの内緒話です。

お茶会の時に、会場の中を見て回るのは、楽しいからいいんですが。


エドに、言っちゃダメですか?

アル兄ちゃまにも、言っちゃダメ?


「内緒だよ」

にっこり笑って唇に人差し指をそっと近づけたナールさまは、今までに見たことのない笑顔。

肖像画の王子さまのように、きっちりと作られた笑顔です。


これは、王子さまとしてのナールさまのお願いごとなんですね。


「にゃうん」

いいですよ、ナールさまのお願いごと、きいてあげます。


・・・エドに、怒られないと、いいなぁ。


次回、お茶会突入です!

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