2-4. それぞれの支度と、準備における考察
間があいてしまって、ごめんなさい!
ようやく再開できます!
頑張りますーー!!
◆ 傍観者予定: 某男爵令嬢のつぶやき
「うーん、いい天気! このまま天気が続けば、お茶会はガーデンパーティになりそうね!」
気持ちのいい天気に、高まる気分。ああ、お茶会が楽しみだわ!
貴族の令嬢の端くれである私は15歳の社交界デビュー前ということで、昼間のお茶会か、略式の晩餐にしか出席ができない。
でも、この状況が一番気楽なのも良く解っているのよ?
家庭教師のおかげでマナーは一通り覚えたし、何度か出たお茶会で友達もできた。最近は、余裕を持ってお茶会を楽しめるの。
美味しいお茶に、可愛いお菓子、そして友達とのとりとめのないお喋り!
でも、来年社交界にデビューしてしまったら、お茶会は情報収集の場に、夜会はお見合いになってしまうんだもの。このゆるーい感じって悲しいケド、本当に今だけなのよね、きっと。
そんな中に、王太子様主催のお茶会の話が舞い込んできた。
王宮で、年頃の若者を招いて親睦を深めようということだそうだ。
・・・胡散臭いけれど、まさしく適齢期な人たちにとっては、千載一遇のチャンスよね。
そして、社交界デビュー前、対象圏外な私は、呑気にもせっせとお相手探しに奔走する人たちを見物しながら、美味しいお茶とお菓子を楽しむ事に思いを馳せていた。
王宮なんて、滅多には入れないし、王太子様主催であれば、きっと趣向も凝らしてあるのでしょう。ちょっと気後れするけど、対象圏外なんだから、後ろの方で美味しいモノ食べて見物をして帰ってこようっと!
・・・お菓子をちょっと貰ってくるって、ダメかしら。
そういえば、学院のアレクサンドラ様は、出席予定なのかしら、あの方がどんなドレスを召されるかも、楽しみよね~!
自分のワードローブを思いだしながら、食べても苦しくないドレスってあったかなー?
なんて気楽なことを考えていた。
◆ 参加予定:某伯爵令嬢のため息
天気もよく、中庭には秋の花が可憐に咲き誇っている。
応接間に面した中庭は、父が客を喜ばせる為に作ったものだ。東屋に座っていると爽やかな秋の風に乗って花の香りが漂ってくる。
「いつもだと、これで十分なのに・・・」
気持ちが塞いだ時でも、この東屋に来て外の風を感じながら植物をスケッチしていると心が穏やかになったのに、今日は効き目がない。
どうやら、自分は王太子主催のお茶会に出ることが、酷く気鬱の元になっているらしい。
「私なんか行ったって、なんにもならないのに・・・」
それでも貴族の子女の義務というもので、お茶会には参加をしなくてはならない。
なぜなら、こういった機会は、貴族の子女にとって結婚相手を見つける大切な機会であるからだ。夜会ほど真剣ではなく、まずは顔合わせといったお茶会は、私のような社交界初心者でも出やすく、とっかかりとしては有意義である。それは知っている。
でも、私のような趣味に走ったひきこもりにとって、大勢の人と会ってしゃべるだなんて、苦痛以外の何者でもない。
第一、相手だって、私となど話をしてもつまらないだけだろう。
ああ、当日、大雨にでもなってお茶会が流れてくれないものだろうか?
空を見上げるが、秋晴れのいい天気で、当分天気が崩れそうな気配もない。
家の中ではメイドたちが、お茶会に着ていくドレスや、装飾品の話で大変な盛り上がりとなっている。
もう、ため息をつくしかない。
◆ 主催者: アレクサンドラ嬢の言い分
「ああ、もう、時間が足りないったら!」
あの色ボケ王子は、なんで急にこんな事を思いつき、更に忙しいと言っている私とカールを使って準備をさせているのかしら!
折角確保したサラとの時間も、お茶会の準備にどんどん減らされている。
その分、色ボケ王子がサラと遊んでいるとか・・・なんだろう、この許せない感はっ!
とはいえ、今回はノルベルト殿下の従者のマディが手伝ってくれているので、かなり助かっている。マディが王子の従者でなければ、絶対に生徒会の方へスカウトしたものを。
「アレク様、茶器の準備は済みました。
王妃様がご自分のコレクションから季節に合わせた茶器をお貸しくださいましたので、全て点検して準備にまわしてあります。
カトラリーも、王宮のものを借りられるように手配済みです。ケーキスタンドは、念のため10台確保しました。」
「ありがとう、マディ。すごく助かったわ。
あなたが手伝ってくれなければ、きっと準備が間に合わなかったわ」
心からそう思ってお礼を言うのだけれど、マディは苦笑してとりあってくれない。
「アレク様以外、この短期間でナサニエル殿下のご希望に添ったお茶会を準備することはできなかったと思います。私は、ほんの少しお手伝いをしただけですから」
マディ自身も今回のお茶会への参加予定者なのだが、準備を手伝うというのと、殿下のお世話という大義名分を駆使してさらりと躱している。
むぅ、なかなか上手いな。
王宮に長くいるだけあって、のらりくらりと逃げるのが上手い。
言質をとられるような受け答えはしないし、礼儀正しく、控えめで目立たないようにする術ももっている。そして、普段は絶対に見せないが、かなりの遣い手であること。
サラや、エドから聞くマディの姿とはまるで違う目の前の彼。
「ふぅん、主からの言葉でなければ素直には、受けられない?」
少し意地悪な気分で切り込んでみた。
すると、彼は少し驚いたように目を見開いたが、すぐに人好きする笑顔を浮かべてこう言った。
「いいえー、ウチの殿下は、褒めるなんてことないので、対応に困っただけですよー」
・・・・狸め!
でも、一応、気は許してくれたのだろうか、微笑んだ彼は、サラの言う優しくて強い世話好きな従者の顔をしていた。
王宮に居ることが増えたからには、王宮側の頼りになる味方が欲しい。
ウチの天才児たちの才能は、ある種の取引材料となりやすい。国家レベルでの「ご贈答品」に使われても遜色ない人材なのだ。
天才数学者に、新しい魔具をぽんぽん生み出す天才。どこの国でも欲しいに決まっている。
今の王家に、シェンブルクの子供たちを使って国家レベルの取引をしようという気持ちがないとは思うが、どこから秘密が漏れ、狙ってくる者がいるか解らない。
今は切実に味方が欲しいのだ。
彼とノルベルト殿下は、ウチの子達を守る協力者になってくれるかしら。
疲れだけではないため息を漏らしてしまうのだった。
◆ お手伝い要員: マディの心配
我が王立学院が誇る「冬の女王」さまのお手伝い要員に派遣された。
ナール殿下に急に発注されたであろうこの件を、速やかにかつ、最小限の人員で成し遂げていく手腕は流石で、感心しきりだった。
アレク様は、とにかく人の使い方が上手い。
その人の得手不得手を感じ取って、仕事の配分をしていく。元々得意な事を頼まれているし、上手くいけば褒めて貰えるので、働いた方も上機嫌だ。
でも、本当にアレク様の下で働いた場合、望まれる成果は、かなりハードルが高いはずだ。
今は周りに合わせて動いているが、彼女が本気で動いた場合、ついていけるのは、ごく僅かだろう。
まあ、女王様はそんなことを感じさせもせず、準備に邁進しているが。
一通りの準備が済んで、アレク様からはお褒めの言葉をいただいた。
お約束の返事を返したら、ツッコミを入れられた。
うーん、女王さま、手厳しいなぁ。決して嫌っているワケじゃないですよ。だって、サラちゃんのお姉さまですしね。
でも、今はお互いにまだ警戒中ですねー。
手の内を見せないのはお互い様ですし、今まで幾人もの天才を輩出してきたシェンブルク家は、王家にとって驚異でもありますし。
シェンブルク家は、当代を筆頭に、王国の頭脳と言われる人材を多く輩出し、新しい技術の開発、魔法に関しても新しい理論や、利用法などを多く発表している。
ある意味、国家の財産となる人々が連なる一族だ。
この家の者たちの国外流失は、国家的損失を意味する。
国家的戦略として、シェンブルク家の人間を他国へ出される心配をされているようだが、どう考えても、国外へ出した場合のデメリットの方が大きい。
ちなみに、アレク様も、大切にされている対象なんですが、ご自分ではどうも気がついていないらしい。自分を普通とか言われると、すごい違和感ですよ、アレク様!
まあ、少しずつ歩み寄ってみましょうかねー。
今回の件で、あのアレク様や、アーノルド様を相手にして、飄々としているエドさんは、やっぱり凄いと思いました。今度、どうやって対応しているのか聞いてみよっとー。
お茶会参加者、各視点からー。でした。
次回は、お茶会だ! お菓子、何にしようかしら・・・




