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ミルクティ色の仔猫の話  作者: おーもり海岸
1.サラちゃん はじめてのおつかい In 学院へ
3/72

3. 仔猫は、飛んだ?

まだまだ、サラちゃん、ぶらり旅中。

生まれて初めて、宙ぶらりん状態になっています、サラです。


これは、決して遊んでいるわけではないんですっ!

猫の本能に従ったら、こんな風に~!!


馬車の多い大通りを駆け抜けて、なんとか馬車より人が多い道にでました。

ちょっとお休みしたくて、お店の木箱の上がりました。少しでも高いところでお休みする方が安心ですからね。

ふう、っと一息ついたら、目の前にふわりと白いものが…。

気がついた時には手がでていました。猫の本能って、すごい。


次の瞬間、グンっと体が持ち上がりました。

「ふにあぁぁぁぁぁぁぁっ!」


目の前に来た白いものは騎士さんのマントで、どうやら私はそのマントを引っかいてしまったようです。爪が、ひっかかってとれません! そのせいで体ごと、マントと一緒に翻っているのです~!

ど、どおしよおっ!! 爪、とれないよおおっ!!!


大きなマントに包まれて、ぶわりぶわりと宙に放り出されそうです。

こ、怖いよう~! お、おねぇちゃまあぁぁぁぁぁ!!


「んん? 副隊長、なんか、マントに引っ付いてますよ? あれ、仔猫!?」

「に、にあぁぁっぁにあぁぁぁぁ~!」

後ろを歩く栗色の髪の騎士さんが気づいて駆け寄ってくれました。

とれないのですよ、どおしよおぉぉぉぉ!と鳴きつきます。


「ああ、爪がひっかかっているのか。よしよし、今とってやるからな。

落ち着け、落ち着け、大丈夫だから」

栗色の髪の騎士さんは、ジタバタする仔猫サラをよしよしと撫でながら抱っこをして、そっとマントから爪をはずしてくれた。

だというのに、サラときたら慌てて手を抜いたので、ご恩のある騎士さんの手をひっかいてしまったっ!


「っつ…、おお、怖かったな、もう平気だぞ~」

うわあぁぁ、ごめんなさい、ごめんなさい、爪たてちゃって、痛かったよね、騎士さん。

どうしていいかわからないので、傷が早く治るように祈りながら、さりさりと手を舐めてみた。


「うぉ!、なんだ、傷の心配をしているのか? いい子だな~、大丈夫、かすり傷だよ」

と、にこにこと撫でてくれる茶色の髪の騎士さん。うう、優しいですぅ。


「おや、可愛い仔猫だね。 まだ小さいな、どこから来たのかな?」

私が爪をひっかけてしまったマントの持ち主の副隊長さんも、よしよしと撫でてくれる優しい人でした。

銀の髪を後ろで一つに結わえてなんだか恐そうに見えましたが、青い瞳で微笑んでくれます。

マント、引っかいちゃってごめんなさいね、副隊長さん。


「あれ、マントを気にしていたのかい? ふふふ、平気だよ。 軍服は丈夫に出来ているからね」

マントの汚れを、気にしてウロウロしていたら、副隊長さんが、抱っこしてくれた。


「可愛いリボンだね、刺繍がしてある…“SARA”

そうか、きみはサラちゃんなんだね。贈り主は、随分と君を可愛がっているようだな、丁寧な刺繍だ」

うふふ、副隊長さん、刺繍はね、お姉さまがしてくれたんですよっ!きれいでしょう、自慢なんですっ!


「えー、残念、飼い主がいるのかぁ。迷子なら、部隊うちで飼いたかったのになぁ。」

騎士さん、サラは迷子じゃありませんよっ! ちゃんとお姉さまと、お兄さまのところへ…。


あれ、騎士さん、ここは、ドコでしょう?

ま、迷子じゃありませんよっ! …この道を知らないだけで。




○~○~○~○~○~○~○~○~○~○~○~○~○~○~○~○~○~○~○~○~○~

キスリング執事 視点>


バタバタバタバタバタ・・・!

「た、大変です、執事さんっ!!」

メイドのジェシカが駆け込んで来ました。幾ら主人不在とはいえ、これはいけません。

「騒々しいですよ、ジェシカ。お屋敷内をそのように走るものではありません。」

ため息まじりに、小言をいうと、ジェシカは、しまったっ!というように頭を下げた。

「も、申し訳ありませんっ!慌てていたもので、つい・・・」

いい子なんですが、落ち着きがなくて困ります。まあ、もう少したてば、成長してくれるでしょうが。


「今度から気をつけてください。それで、どうしたんです?」

「あ、あのっ、お嬢様が、サラお嬢様がお部屋にいらっしゃらないのですっ!」


はて、今日はお庭にも出ておられない筈ですが、

「よく探しましたか? 図書室の方に行かれているのでは?」

先日も、図書室で本を読みながら、眠ってしまわれた事がありますしね。

当家のお子様方は、皆様 読書好きで、物心つかれるとすぐに本を読み、図書室に入り浸る事もしばしばで、そのままお昼寝してしまう事もあるのです。なので、私ども使用人は、お子様方がいらっしゃらない時は、一番に図書室を探すのが、お約束となっています。


「もちろん、探しました! でも、いらっしゃらなくて・・・魔法書が読みかけで置いてあるだけでした」

サラ様はまだお小さいので、一人で出かける事はありません。

しかし、このところ、なかなかお戻りになられないアレク様や、カール様をお待ちになっていて、

とうとう、待ちきれず、お迎えに出られたのかもしれません。


「外に出られたとしたら、大変です。 

屋敷のみんなに声をかけて、室内、庭園、その周りなどを探すように言ってください!

私は、アレク様の許婚者のウォルフ様に連絡をとります。」


「執事さん、アレク様への連絡は・・・」

執事見習いのシルヴァが、心配そうに私を見上げてきます。

「このところ、お屋敷へお戻りになれず、かなり苛立っておられる様子ですからね。

 そんな時に、直接報告を出すのは、火に油を注ぐようなものです。

 まずは、ウォルフ様より、話していただきましょう。

 でないと、最悪の場合・・・」

「最悪、ですか?」ジェシカが目を見開く。

「ええ、最悪、学院が、アレクお嬢様のお力で氷の城となることでしょう。」

淡々と話す、執事キスリングには、もうそれは決定事項であったらしい。




サラちゃん、どう見ても、迷子だね。 次回、ウォル義兄さま、登場です。


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