2-1. 王宮にて
第二章、開始です。
サラちゃん、少し大きくなったかなぁ。甘えん坊は、そのままです。
よろしくお願いします!
事の始まりは、ナサニエル第一王子のふと漏らした一言だった。
「仔猫ちゃんが、居たら後宮も楽しかろうに・・・」
先日、お茶会で会って以来、サラや、アレクが気に入ったナサニエル王子は、年下の友人として彼女たちを認識しており、後宮に住まわすというわけではなく、自分の妻となる人の可愛い友人として慰めになればと考えていたのだが・・・
当然といえば、当然。
後宮の侍従たちを筆頭に、「ナサニエル王子には、意中の女性がいるのではないか?」という憶測が疑惑を呼び、それはもう、王宮内をひっくり返したような騒ぎになっていた。
当のご本人はと言えば、のんびりとお茶を飲みながら、
「そんなに騒ぐほどの事か?」
と静観の構えだった。
大体、王子とはいえ、成人もしたいい大人である。好きになった女性がいたとしても問題はないだろう。
だだし、結婚となれば別だ。
王族としての責任、王族としての結婚というものがあるというのは、理解している。
が、ここまで、周りが騒ぐと、ちょっとした悪戯心がわいてきた。
「折角だから、この状況に乗ってみようじゃないか♪」
…王子様は、みんなが思っているより、ずっと酔狂だったのでした。
○〜○〜○〜○〜○〜
「にぁ?」
「あ、こら、サラちゃん、バスケットから顔を出しちゃダメだって」
お姉ちゃま特製の仔猫の時用バスケットに入って移動中のサラです。
最近は、週に何度か王宮に連れて来てもらっています。
建前としては「王妃さまをお慰めする為に、シェンブルク家の仔猫をお貸しする」んだそうです。
仔猫って、サラのことですよー。
ちっちゃい子が、王宮に来ると目立つので、仔猫で参内する事になりました。
仔猫の姿を見られないように、一応バスケットの中に入って・・・。
でもね、周りが見えなくってつまらないんですー!
ちょっと位お外が見たいのに、エドが、ダメって言うんです。
「アル兄さんの執務室に入ったら、外に出してあげるから。今は大人しくしておいで」
エドがバスケットに向かって小声で教えてくれました。
アルにい様の所に行けるのは、すっごく嬉しい!
普段はとっても優しいんだけど、怒ると一番怖いのは、アルにい様なの。
この間のお出かけの事がアルにい様にもバレていて、すっごい叱られました・・・。
「勝手に出かけてはいけないと言ってあっただろう。みんな心配したんだぞ!」
って、こわーい顔で怒るんだもの~っ!
んで、エドの言付け守らないで、色々逃げ回ったのもバレていて、怒ったアルにい様に、うんとお仕置きされました。いっぱいゴメンなさいって言って、やっと許してもらったの。
ほ、ほんっとーに怖かったですっ!!(ぷるぷる)
あれから、アルにい様はお仕事以外はサラと一緒に居てくれます。エドもウチに下宿してくれているので、寂しくありません。朝は、おねえちゃまが学校に行かれる前、髪を梳いてくれました! 自慢です!
えへへ、おうちにみんながいると嬉しいっ!
甘えん坊って言われてもいいもん! お部屋に行ったら、アルにい様に抱っこしてもらうんだー♪
なんだか楽しくなってきました。
あとで、ノル殿下と、ナディのところに行ってお茶もしちゃおうっと。それから、それから…
楽しい計画をたくさんたてながら、バスケットの中でまあるくなっていたのでした。
アルにい様のお部屋は、王宮の左翼、執務棟の二階一番奥にあります。
ちゃんと覚えたんですよー。
王宮で迷子になったときに、「どこへ行きたいの?」って聞かれたら答えられるように!
…迷子にならなきゃいいのでは?とか言わないでくださいねっ!
備えあれば憂いなしっ! なんですから。
これは、家の執事さんが言っていました。
…そして、今、その備えを使う時がきている気がします。
サラは、迷子になったしまったんでしょうか?
アルにい様のお部屋に行って、アルにい様に抱っこしてもらって、王妃さまにごあいさつをして…
ふかふかの絨毯を歩きながら、いっしょうけんめいに考えます。
赤い絨毯って、なんだか、見ているだけで暖かくなる気がして好きです。
えーと、考えが逸れてしまった。
王妃さまのお部屋から、お庭に出てお花がきれいだなって遊んでいて、おなかが空いたので戻ろうと開いている窓から入ったお部屋は、知らないお部屋でした。
知らない男の人と女の人がお話をしていたので、そっと廊下へ出て、みんなのところへ戻ろうと、あちこちのお部屋を見て回ったのですが、何処にいるのか、わからなくなりました。
そして、今、ここの廊下には、人もいません。
「…にぁぅ」
どうしよう、サラは、ほんとーに迷子みたいです。
エドぉ…サラ、どうしよう。
いつもは、どこに行ってもエドが見つけてくれます。でも、ここは後宮です。本来、男の人は入っちゃいけないんだそうです。そんなところでは、エドだって、来れないよね。
サラ、帰れないよう…。
「…にぃ、にぃ、にゃぅー」
なんだか心細くて、鳴いていました。うぇぇん、エドぉ~、アルにいちゃまぁ~
「おや、迷子の仔猫だね。 保護者はどうした?」
やさしい涼やかな声がして、コツコツと足音が近づいてきます。
あ、この人は知っています。
へんたいさんのお兄さんで、おねえちゃまが、”この色ボケっ!!”って呼んでいた
「ナサニエル殿下、どうなさいました?」
ナールさまだっ!
今度こそは、構成に気をつけて間延びしないように頑張りますっ!(笑




