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ミルクティ色の仔猫の話  作者: おーもり海岸
1.サラちゃん はじめてのおつかい In 学院へ
23/72

22. 仔猫は、覚醒します!(希望)

お疲れ様です、保護者さん。

まだまだ、頑張ってください。今回は、追いかけっこです!

平和だった中庭の東屋をでて、ウォルフと相談した場所を目指すことにした。

本当は、出たくなかったんだけどね。


とはいえ、いつまでも、ここにいるわけにはいかないので、動きますヨ。

サラちゃんは、まだ眠っているな。目的地までは目を覚まさない方がいいかも。


さて、コソコソと中央通路を抜けて、中央の中庭の方へ。

ここは、生徒会室の真下になるので、

「ここからサラに呼ばせればいいよ!」と、ウォルフは言う。

出来れば生徒会役員室まで連れて行き、サラちゃんにおねーさんと会わせて、まとめて撤収させたいのが本音。


「そう簡単には行かないと、知っているけどさぁ」

なんだ、この警備の人数の多さは。

さっきからどんどん増え続けているじゃないか! その上、なんか緊迫しているし。

避けて進むにしても限界があるぞ。


「こっちにはいないっ!」

「西棟はどうした? 」

「まだ報告がきていません!」

張り詰めた雰囲気の中、隊員の声が響く。


「かなり凶暴な魔猫らしいぞ・・・、この人数で平気かなぁ」

「なんでも人も操るらしい。近寄らない方がいいって!」

バタバタと足音を響かせて、警備の連中が慌しく校内を走り回っている。

その中で聴き捨てならない事を聞いた気がするぞ。


…はい? 魔猫まびょうって何ですか?


ウチのサラちゃんは、多少いたずらはしますが、そりゃあ可愛い、とってもいい子ですよ?

なんで、そんな話に…


懐で、すやすやと眠っている仔猫サラを見ながら、溜息をついてみる。

「これが、魔猫・・・ですかねぇ?」

上着の上から、よしよしと撫でてやると、ゴロゴロと嬉しそうに喉を鳴らしている。


「魔猫設定は、無理がありすぎるだろうよ…」

それにしても、次々と騒ぎが起きるなぁ。

サラちゃんは、ウチに返したら当分、外出禁止にして貰うことにしよう。こんな騒ぎを毎回起こされては、この担当地区の警備隊の身が保たない。

こっそりと、「外出禁止令」を出す算段をしながら、様子をうかがった。まだまだ人が多い。


「あの噂はねー、イヤミ貴族が流したらしいですよー」

「うわぁっ、急に後ろから話しかけるなよっ! びっくりするだろっ、マディ!」

いつの間にか背後に忍び寄ってきたマディが、解説をしてくれたところによると、あのイヤミ貴族はかなり壮大なファンタジー作り話をしたらしい。


曰く、ふつうの仔猫のふりをして、ノルベルト殿下に近寄った憎っくき魔猫の正体を見破り、敬愛する殿下をお救いすべく、自らの危機も省みずに、茶器を投げて自分が魔猫を退けたのだと。


「あー、うん、すごいねー…、魔猫ってティーポットで倒せるんだー…」

「エディさん、思いっきし棒読みですよー。 俺も奇想天外だとは思いますがねー」

「それで、殿下はよ?」

「えーと、『魔猫に毒されているかもしれないっ!』って言われて、今は医務室に軟禁されていますー」

「それなのに、なんで、マディは、ここに?」

「いちおー、連絡係と、道案内要員で行って来いと、殿下がー」

こっそりと医務室から出してくれたそうだ。

ノルベルト殿下、こういうことは気が効くんだよな。

素直に言えば、助かります。

マジでありがとうございます!


「来てくれて助かった。

サラちゃんのおねーさんがいる生徒会役員の近くまでは来ているんだけど、

この騒ぎだからさ。できれば、ここまで連れてこれないかな、おねーさん」

「…我が校の『冬の女王』を呼びつけるとは、大胆不敵ですねぇー。

 いいですよ、パシリしますよー!」

にやにや笑いながら、マディが応じる。

そうかなー、多分、サラちゃんが来てますよって言ったら、ダッシュで来てくれると思うよ?

普段の溺愛っぷりを聞く限り、それは間違っていないはずだ。


「サラちゃんのおねーさん、怒っているんだろうなぁ」

「ですよねー、自分の最愛の妹が『魔猫』呼ばわりなんかされて、冬の女王様の気性から考えても、コレを言い出した奴、氷詰めにして出荷されても文句言えないですよー」

「…そんなに怖いのか、おねーさん」

氷詰めかい! 溶けるまで大分かかりそうだなぁ。…じゃなくて!

危うく現実逃避を図るとこだったぜ!


「マディが、中庭におねーさんを呼び出してくれるまで、俺はとりあえず逃げ回っておく。

 20分後に、もう一度ここに集合な!」

「りょーかいですー。 楽しみにしてくださいねー、我が校 屈指の美女ですからー」

「美女だって、旦那付きだろー。いらんいらん。」

「あれ、知っているんですか? アレク様の婚約者。」

「ああ、最近知り合った。今はヤツがサポートしてくれている」

「なーるほどーぉ! 仔猫ちゃんを預けるなんて、凄い信頼されてますねー!」

信頼、されている…のかなぁ。うまく騙されている気もするが。


「んじゃ、行きますねー。うまく隠れていて下さいよー!」

「おう、よろしくな!」

マディが軽やかに駆け去っていったので、俺も少し場所を動くことにした。

校内を警備担当が巡回している時に、長時間同じ場所にいるのは、危険だ。


空き教室や、空き部屋を探しながら、歩いていく。

警備の連中も混乱している。意味もなく走っているヤツもいるしな…って、ヤベっ!


「おいっ!そこの男、止まれっ!!」

さっと踵を返して、走り出す。

やだなぁ、止まれと言われて止まったら捕まっちゃうじゃないですか。

走るスピードを上げて距離を保つ。その上で、窓などを使って、ショートカット移動する。

これで、振り切れるはず・・・。


あいつらは、なんとか、撒けたらしい。

そろそろ、待ち合わせの場所に行かないと。マディを心配させてしまう。

とはいえ、結構走ってしまったので、中庭のある中央棟からは少し離れてしまった。


…また、戻るのか~、そうか~。

この納得のいかない追いかけっこの責任は、あのイヤミ貴族にとってもらおう。

サラちゃんのおねーさんに、がっつり氷付けにしてもらって、王宮の噴水で晒し者にしてやるっ!


不機嫌オーラを撒き散らし、警備を避けながら、それでもなんとか中央棟にたどり着いた。

やれやれ、だなと、壁にもたれかかって休憩をしていた。


ふと、下げた目線の先、廊下に影が差す。

「マディ?」

「エディさん、ごめーんー」

わあ、マディ、なんでソイツを連れて来た…。


「さあっ!観念するがいい、悪の使途よっ!! 魔猫を私に差し出すのだっっ!!!」

あー、イヤミ貴族のペラペラなんとかさんだよなー、活き活きとポーズとってる場合じゃないし、

うーん、どう考えても、悪役のセリフだって、それは。


それじゃ、ウチの仔猫サラちゃんを魔猫呼ばわりした責任、とってもらいましょうか!



ここまで読んでいただき、ありがとうございます。

全年齢対象(サラ向け)にしたので、乱闘シーンは避けました。エディさんがね(笑


次回、反撃なのか、ワンサイドになりそうな気配。

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