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ミルクティ色の仔猫の話  作者: おーもり海岸
1.サラちゃん はじめてのおつかい In 学院へ
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2. 仔猫はでかけます!

まだ、うろうろ。先は長いねぇ サラちゃん。

お姉さまに貰った大切なアプリコット色のリボンを握りしめて、書斎に走る。

お父様の書斎には、大きな本棚があって魔法の本もたくさん置いてあります。

私のような初めて魔法を使うような子から、お兄さまのように高位魔法を使う人用まで、幅広く集めていあって、それなら、お姉さまが読むような本は、あるの?とお兄さまに聞いたら「姉上は、レベル カンストだから比べちゃだめ。」と遠い目をして言われた。

カンストってなんだろう。すごいって事かな?


そんな本を少しずつ読んで、出来るようになったのが「変身術」なんです。

最近、猫に変身できるようになりました!

お姉さまや、お兄さまに、変身した姿を見て貰いたいのですが、まだ披露できていません。

だから、ほら、お姉さまのリボンをした、ミルクティ色の仔猫。

これが、私です!


ううう、でも、なんでしょう、こんなヨロヨロで、大丈夫なのかしら。

仔猫の体をうまく動かせません。

とりあえず、お部屋の中をくるくる回って見ます。


うん、だんだん慣れてきましたよ。椅子の上にジャンプ! 続いて、机の上にジャンプ!!

すごいです、猫の体って!! こんな高いところも、ぽんぽん上がれるようになりました。

うふふふ! さぁ、今度は、お外に行きましょう!!


窓を開けて、窓辺に出てみました。

ここで、木に飛び移りたいんですが、…こわいです。 自分の体の何倍もの距離、あんなに飛べるんでしょうか。なんだか、窓辺にいるもの、怖くなってきました。ううう。


窓辺をウロウロしていたら、向かいの木を軽快に飛び移る黒猫さんの姿がみえました。

「わあ、すごい…」

あんな風に、飛べればいいんですよね、たぶん。

メイドさんが、お買い物に出るための馬車が出る時間が近づいています。自分の足で行くのは時間がかかりすぎるので、この馬車の荷台にこっそり乗って、王立学院のある王宮近くまで行こうと思うのです。

馬車に乗れなかったら、もう、今日は辿り着けません。


えいっ!と目をつぶって飛び出して、バサバサと木を伝ったのか、落ちたのかわからないような状況でなんとか地上につきました。…こ、怖かったです! もう二度とできません。


お買い物の馬車になんとか潜り込み、やっと一息です。

今のところ、誰にも見つかっていません。気がつかれない内に帰ってくるのが目標です!

がんばりますよっ!!




ガタゴトガタゴト・・・カタカタカタ・・・


馬車の音が変わりました。細かい石畳の道です。

どうやら、王宮近くのメインストリートに入ったようです。

王立学院は、王宮の一角にあります。王宮と言っても、王族の方が住まう奥とは別で、役所などと一緒で入り口に近い出入りしやすい場所にあります。この区画だけは、人の出入りも多いので、結構自由なんです。というのは、お兄さまに教えてもらったんですけどね。


お買い物の馬車が止まったので、私もこっそり馬車から降ります。

ここからは、大きい通りをまっすぐに行けば…


ガガガガガガガ・・・・ガタガタ・・・・


ううう、馬車がいっぱいで怖いです。踏み潰されそうですぅ。

馬車が怖いので、道の端を慎重に歩きます。それでも、大きい馬さんに、迫力の馬車。こんなに怖いんだ。音だけですくみそうになります。

と、とにかく行かなきゃ!! 一生懸命走ることにしました。 こわいよう~、おねぇさまぁ!





「何故だ、なぜ、帰れないっ!」

思わずイライラと声を荒げてしまう。大体、授業にも殆ど出ないで、この生徒会室に閉じこもり、ずっと仕事をしているのに、なぜ、終わらない!!

そして、なぜ、帰れないんだ!!


「それは、姉上以外は、普通の人だからですよ」

カールが、ため息をつきながら、説明をしてくれた。

つまり、私たちの10分の1の量しか渡していない仕事を終わらせられない役員と、その仕事の内容をチェックするべき教師や、職員がその理解力やスピードについて行けなくて、すべてが滞ってしまっているという事実にだ。


「くっ、馬鹿なのか、愚鈍なのか、どっちだ!!」と聞いたら、

「姉上、両方だから、始末に終えないんですよ…」とカールにため息をつかれた。


その上、腹の立つことに、教師から

「生徒会の仕事が終わったなら、少しは授業に顔を出してくれ」と言われた。

…学院の仕事をして、その上、授業あそびに付き合えと? ふざけろ! 


「姉上! お気持ちは、わかります!! でも、今少しだけ抑えてください。

今のうちにテンプレートを作っておけば、ある程度はこの範囲で事が済みます。そうしたら、生徒会へは、週二の顔出しで終わりますよ。

授業の方は、姉上のレベルでは遊びにしかならないと、ちゃんと言っておきますから!」


うむ、持つべきものは、出来る弟だ。よし、これを仕上げてとっとと帰るぞ!


「カール、これ以上、サラを一人にしておけない…」


カールも、深く頷いて猛スピードで手持ちの書類を片付けて出した。

サラは、寂しがり屋で、私かカールがいないと、なかなか眠れないのに、もう一週間も家の者に任せてしまった。罪悪感でめまいがしそうだ。

こんな悪い姉と兄をサラは、待ってくれているだろうか。


「サラ…」


窓の外は、穏やかな午後の日差しが降り注いでいた。




そのころのサラは、なぜか、宙ぶらりんになっていた。

「に、にゃあぁぁぁぁぁ~っ!!」
















宙吊り、宙ぶらりん、どっちがよかったかしらねぇ。

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