18. 仔猫は、縦ロールがお好き?
そんなに好きだとは知りませんでしたよ。
憧れていたらしいです。(笑
出会ってからお互いに30秒以上はゆうに見詰め合ったと思う。
「・・・・・・なぜ、学院に仔猫が?」
「にゃあ♪」
ここは、王立学院 西校舎の裏庭に面した薄暗い廊下。サラは、期待に目を輝かせ、おねーさんは困惑で固まりながら、見詰め合っていたんです。
サラは今、きれいなストロベリーブロンドに、深い緑色の瞳を持つお姉さんの足元にいます。
ちょっときつめの目元を彩る、長いまつ毛。 うん、とっても美人さんですよっ!
そして、何よりも特筆すべきは、
縦ロールっ!!
このお姉さんの髪がね、コロネみたいにぐりんぐりんした縦ロールが、何本も巻かれているんですよ!
廊下で姿を見かけて、あんまり凄いので、その後をくっついて来たんです。
すごい、すごい、話には聞いていましたが、初めて見ましたよ~!
そして、その縦ロールが、物凄く似合っているんですよ。
まるで、本で読んだお姫様みたいです、おねーさん!
お目当てのお姉さんの足元をくるくる回ります。
おねーさん、サラを抱っこしてくださーい! その縦ロールを間近で見たいんです!
できれば、触ってもいいですか? その巻髪は、ひっぱると元に戻るのかしら?
わくわくしながら、おねーさんの足元でウロウロしてみます。
「・・・え? あら、まあ、仔猫ちゃん、ちょっとお待ちになって?
えーと、抱っこしてほしいのかしら・・・」
「にゃう~ん♪」
はい、そうなんです、おねーさん、抱っこ~!
「そうですわね、仔猫をお廊下に、置いておくわけにもいきませんし、
さ、いらっしゃい、ふわふわの仔猫ちゃん。」
「にゃう!」
優しい手つきで、おねーさんはサラを抱き上げてくれました。
お姉ちゃまみたいに、甘い いい香りがします。さすが、女の子は違いますね。
「ここのお廊下は、日が差さないので昼間でも結構肌寒いのですよ、
寒くないですか、仔猫ちゃん?」
「なうーん」
おねーさんは、淡いピンクのストールを肩から外して、サラを包み込んでくれました。うう、優しいー!
嬉しくなって、おねーさんにすりすりしてみました。
あんまり、すりすりしちゃダメって言われたけど、女の子には、いいですよね! おねーさん、好きっ!
…あれ、ダメって言われて。
えーと、エドさんに、ダメって…
これは、そのぉ…
「サ ラっ!」
後ろから低~い声で呼ぶのは、間違いなく怒っている声のエドさんだっ!
○~○~○~○~○~○~
「まったく! さっき気を付けるように、言ったばかりだよなっ!」
「…みぃう」
「学院の中だからといって、ふらふらしていいわけじゃないんだぞ!
浚われたらどうするんだ!」
「なぁぅ〜ん…」
でも、だってっ! 縦ロールのおねーさんにご挨拶していただけだもんっ!
おねーさん、とってもやさしいのよ!
危なくなんか、ないもんっ!
「シェライラ・アクリーガル嬢、うちの仔猫がご迷惑をおかけして申し訳ありませんでした。
というか、現在進行形で、…その申し訳ございませんー」
マディさんが、学生ホールで縦ロールのおねーさんに手早くお茶を出しながら、謝っています。
さっき廊下で、エドさんに見つかり「他の学生に見られたらまずいから!」と縦ロールのおねーさん毎、もう一度、学生ホールの個室に入れられたところです。
おねーさん、巻き込んでごめんねー。
「い、いいえ、わたくしが不用意に仔猫ちゃんを抱き上げたからいけないのです。
びっくりしてしまったのよね、仔猫ちゃん」
そう、サラはまだ縦ロールのおねーさんに抱っこしてもらっているんです。
折角抱っこして貰えたので、はがされないように、がっちり、しがみついてみました!
エドさんと、マディさんの目が
「あれは、わざとだろう」
「だねー」
と言っている。
でも、知らないフリしますけどねっ!
折角、縦ルールのおねーさんに抱っこして貰えたんだもの!
すぐになんか降りませんよ。
それに、怒っているエドさんに抱っこしてもらうより、おねーさんの方がいいもん!
「アクリーガル様、ご迷惑をおかけして申し訳ありません。
どこかへ行かれる予定だったのでは?」
「いいえ、私の授業はもう終わりましたので、今日はもう帰宅しようと思っていたところですの」
マディさんの問いに、サラの背中をなでながら答えてくれる縦ロールちゃん。
(縦ロールのおねーさんって言うのが長いので、命名『縦ロールちゃん』ね!)
「サラ、いい加減に降りなさい。これ以上はご迷惑だよ?」
「ぅにゃーん!」
やーん、折角抱っこしてもらったのにー。
「サーラ!」
「なぁう・・・」
うーん、残念ですが、これ以上はダメですよねー。でも、まだ帰らないでほしいんですけど。
一緒に学院見学、しましょうよう~!
今回は、少し短め。 次回こそは!