16. 仔猫は学院内見学中です!
まだまだ、新キャラ登場。
そして、サラちゃん、大活躍・・・かな?(笑
小さい扉の向こうは、農機具などを置く物置小屋の中でした。
鍬や、鋤が置いてあり、大きな台車や、リヤカーまであります。
これなら、そうっと入ってきても、物がいっぱいあるので、すぐには見つかりませんね。
エドさんに抱っこしてもらいながら、小屋から出ました。
裏庭に面していますが、学院の中です!
すごいです、ちゃんと来れましたよ!!(もちろん、一人じゃ無理でしたけど・・・)
嬉しくなって、エドさんの肩口までよじ登ってみました!
わーい、エドさん、エドさん学院ですよ! すごいですね、大きいですね!!
入学式のときに、連れてきてもらって以来です。その時は、舞台の上でお兄ちゃまが挨拶したんですよ、首席だからだそうです。凄いですよね!
嬉しくて興奮しながら、エドさんの肩口に乗って、にあにあ♪とおしゃべりします。
解っているのか、エドさんは優しく背中を撫でてくれます。
「はいはい、嬉しいのは解ったから。まずはどこから行きます?」
「そうだな、サラちゃんも喉が渇いているだろうし、学生ホールへ行ってみようか」
へんたいさんの案内で、校内にある学生ホールに行くことになりました。
学生ホールって、みんなでお茶を飲んだり、おしゃべりしたりする為にあるんですって。いいなぁ。
お友達と一緒なら楽しいよね!
「途中、食堂で仔猫ちゃんのミルクを貰っていこう。仔猫ちゃんは、苺味のミルクにするかい?」
「サラちゃん、甘いの好きだよな? それを貰っていくか」
わーい!苺味好きです。エドさん、サラ早く欲しいですっ!
嬉しくなって、エドさんの肩ではしゃいでいたら、よしよしってされました。楽しみがいっぱいです!
ウキウキしながら、廊下を進んでいると、向こうから数人のグループが歩いてきました。
仲良しグループなのか、楽しそうに話ながらやってきて、ノルベルト殿下だと気がつくと、慌てて目礼をしていきました。
うん、へんたいさんは有名人なんですねっ!
「殿下ー、また、犬や猫を探しに行ったんですかぁー?」
「おお、マディ、丁度いい。仔猫ちゃんに苺味のミルクを用意してくれ」
食堂の入口で、へんたいさんのお付きの人に会いました。マディさんはへんたいさんが小さい時からの従者なんですって。のんびりした話し方をするくせっ毛のお兄さんです。
「殿下ー、どんだけ貢いでもすぐに捨てられるのに、懲りませんねぇ」
「・・・マディ、仔猫ちゃんにミルクをやるのも、貢ぐ内に入るのか?」
口調はのんびりさんですが、手はてきぱきと動いていて、サラに苺味のミルクを用意してくれました。「飲むならお皿の方がいいねー」とお皿まで用意して、サラを撫で撫でしてくれました。
「にゃぉ~ん♪」
わー、ありがとう! マディさん、はじめましてー、サラです♪
「仔猫ちゃん、ウチの殿下が迷惑かけてるねー、でも、捨てないでねー」
「マディ、迷惑をかけているのが、前提なのか。そして捨てられるのか?」
うんうん、とっても仲良しだよね。へんたいさんにお友達がいてよかったー!
「ここは何かと煩いですからね、学生ホールの方に席を用意しますよー」
マディさんが、お茶やお菓子をトレイに載せて、移動を促してくれた。
へんたいさんは、ちょっと眉をしかめている。何かあるの?って思っていたら声をかけられた。
「これはこれは、ノルベルト殿下ではないですか!
また役にも立たない犬猫を追い掛け回しているのですか。
本当に道楽もいい加減にした方がよろしいですよ?」
なんともイヤーな感じの言い回しをする男子学生が数人でやってきた。
口調はへりくだっているのに、内容はイヤミそのもので、自分の方が優位なんですよー、って誇張しているように見える。
「私たち臣下も、心から心配しているのですよ!
殿下のお心が国の大事や、将来についてではなく、
いつも市井の者共にあるということに。寛大なのは結構ですがけじめというものがですねぇ」
洗濯係のおばさんが言ってた。ペラペラと口の軽い男にロクなのはいないんだからね!って。
うーん、こうしてみると、おばさんが正しい。サラもそう思います。命名「ペラペラ男」
「ペルベランド様、貴重なご意見をありがとうございます。
ノルベルト殿下におかれましては、この後、お約束が入っていらっしゃいますので」
マディさんは、さっさとお茶の準備を済ませていたので、この場から移動しようと話を逸らしてくれた。それなのに、
「っ! 従者風情が生意気なっ! 身分を弁えろ!!」
自分の演説に酔っていたペラペラ男は、マディさんに演説を中断されてカッとなり、マディさんの持っていた持っている茶器をトレイ毎ひっくり返した。
綺麗な茶器は割れて、けたたましい音が食堂に響く。
そんな中、マディさんは、お茶がへんたいさんやサラにかからないように、その場から動かなかった。
お茶のお湯は熱いんだもの、マディさん、やけどしちゃうよ!?
「ペルベランド、私の従者に対して、それこそ無礼であろう」
「・・・殿下が、従者風情の身を心配する事はございません。それよりも、今日は」
やりすぎたと思ったのか、ペラペラ男の目が泳いでいる。へんたいさんも静かにだけど怒っているみたいだ。
割れた茶器や、マディさんにかかったお茶の後始末をエドさんも手伝っていた。
サラも、マディさんのところへ行って、周りをウロウロしていたら「破片が危ないから、ここにいてねー」と、マディさんの頭の上に乗せられた。
もしゃもちゃのマディさんの頭の上は、案外居心地がいいので、上から片付けを見守ることにした。
一方、あんな騒ぎを起こしておきながら、ペラペラ男は自分の妹とへんたいさんを引き合わせようとしていたらいい。食堂で無理やり、へんたいさんに妹さんを紹介していた。
「あいつ、本気で馬鹿ー?」
「うーん、この状況で紹介されていい印象を持てると思う方がどうかしているよ」
「自分が紹介して上手くいかないワケがない、って思っているんだろうねー」
「うわ、それこそ、ありえないだろうに・・・頭が気の毒なタイプだな」
マディさんとエドさんは片付けをしながら、コソコソと話をしていました。サラもダメだと思います!
へんたいさんが困った顔をしているのに、ペラペラ男は、どんどんしゃべり続けます。
「おい、何をしている! 早く、殿下にお茶を差し上げないか!」
って偉そうに言うのですよ。自分が茶器を割ったクセにっ!
後片付けは、エドさんが引き受けてくれて、マディさんは、苦笑いしながらも、お茶を用意しています。マディさん、左手のとこ、赤くなってますよ。やっぱり火傷しちゃったんじゃないですか?
頭の上からテーブルに降り、マディさんの左手首のところに鼻を寄せていたら、鼻をちょんとつつかれ、少し笑って自分の唇に人差し指をあてて小声で「シー、ね」と、言われました。
きちんと整えた茶器と、マディさんの給仕は完璧で、これで文句はないだろうと思ったら、またもやアレコレ言い出した。
「茶葉が安いのを使っているのではないか?」とか、
「茶器が安っぽいんじゃないか?」とか、とか・・・
じゃぼっ!
ミルク壺に手を突っ込んで、ミルクを舐めてみた。
うん、流石マディさん、いいミルクをちゃんと温めている。美味しい!
「きゃーーーっ!!」
「なんだ、この薄汚い猫はっ!?」
阿鼻叫喚。こんな時に使うものなんですねー。あ、これはおにいちゃまに教わりました。
サラは怒ったので、テーブルをめちゃくちゃにする事にしました!
声に驚いたように、茶碗をひっくり返し、砂糖壺もひっくり返します。
ティースプーンは宙を舞い、仕上げにテーブルクロスに爪を引っ掛けて、テーブルから飛び降りました。うん、綺麗に全部ペラペラ男の方に落っこちましたね!!
ふーんだ、へんたいさんや、マディさんを困らせるからですよー!
ミルクまみれになった前足を舐めていると、エドさんが後ろから、すくい取るように抱っこして、その場から素早く廊下へ移動してくれました。
「ああ、私の仔猫が失礼した。お茶はまたの機会にでも!」
笑顔で言いながら、へんたいさんが席を立ち、その後にマディさんが続く。
三人は廊下を同じ方向へ、早足で歩いていく。
三人とも、無言だ。・・・ちょっとやりすぎたかな、折角マディさんが用意したお茶なのに。
エドさんの腕の中で、しょんぼりしていたら、
「仔猫ちゃん」
「殿下の仔猫ちゃん」
「サラちゃん」
三人に声をかけられ、顔を上げると
「「「よくやったっ!」」」
て、声をかけられた。
三人とも、声が笑っている。
よかったー、怒ってない!
この後、エドさんからは「危ないことするんじゃないっ」って、少し怒られました。
撫で撫でしながらって、怒っていないよねー♪