15. 仔猫は、浮かれています。
サラちゃん、殿下で暇つぶし・・・(酷
エドさんが居なくなってしまうと、なんだか、しょんぼりしてしまいました。
寂しいですし、何だか、とっても心細いんです。
本当は、一人でちゃんとお姉ちゃまや、おにいちゃまの処へ行かなくちゃいけないのに、ついついエドさんと一緒がいいなぁ、って思うんです。
一人で行けないなんて、やっぱり、ちっちゃい子と一緒なんでしょうか、サラは。
「仔猫ちゃん、元気を出して? エドはねぇ、きっと飛ぶように帰ってくるよ」
とへんたいさんが優しく笑って撫でてくれます。
「仔猫ちゃん、ほら、見てごらんお花だよ? 綺麗なピンク。ガーベラかな。」
茎の部分を揺すって、お花をふわりふわりと目の前に動かしています。
こうなると、猫の本能を刺激されてしまい、ピンクのお花に向かって猫パンチを繰り出してしまいます。お花がゆらゆらするのが嬉しくて、何度も猫パンチをしてしまいました。たのしーっ♪
「仔猫ちゃんは、なかなかのお転婆さんなのだね」
夢中になって遊んでいたら、へんたいさんがニコニコとその姿を見ていました。
あ、一人で遊んでてごめんね。へんたいさんもお花好きかな?、と
折れてしまったお花を咥えて、へんたいさんの処へ持って行ってあげました。
へんたいさんは、また手で顔を覆って、ブツブツと何か言っています。
理性の限界に挑戦って、何ですか。
たまに難しい事を言うへんたいさんですね。
具合が悪いんですか? 寝ててもいいですよ? でも、一緒には帰りませんからねー。
サラは、お姉ちゃまと、おにいちゃまに会うんですもんっ!
すぐ側には、隠し扉があります。
もう、あの扉を越えたら、学院の中なんですよね。
気にしないようにしても、チラチラ見ちゃうんです。
ああ、早く学院の中へ入りたいっ! 学院の中は、まだ行ったことがないんです!!
へんたいさん、ちょっとだけ入りましょうよぉ。サラは中が見たいですっ!
「なぁ~ぅぅん」
へんたいさんの周りをくるくる回りながら、上目遣いでお願いしてみます。
「仔猫ちゃん、だめだよ。エドを待たないと」
背中をなでなでしてくれるのですが、するりと躱して抗議してみます。
「なあーーーうっ!」
だって、だって、先に入っていたっていいじゃないですかぁ! サラは行きたーーいっ!
改めて、へんたいさんの手に、頭をすりつけてみます。
ぐりぐりと押し当てて、お願い~!って。
「仔猫ちゃん、・・・だから、ダメだと・・・」
サラはお願いしているだけだもんっ! ねー、ダメですか?
「にゃおん♪」
「末恐ろしいお嬢さんだね、仔猫ちゃん・・・」
上目遣いでの、すりすり攻撃に負けそうになったへんたいさんがサラを抱っこしてくれたので、更に甘え攻撃をしてみます。
仔猫の肉球で、ふにふにとお顔をもみもみです!
「みゅぅ~・・・」
ねー、ちょっとだけでも、いいからーっ!
へんたいさん、ぷるぷるしています。
そして・・・
「仔猫ちゃん、キミは、小悪魔かいっ!」
へんたいさん、撃沈~。
orz になっている人を初めてみました。
とはいえ、ちゃんと片手でサラを抱っこしていてくれていますが。うーん、へんたいさん恐るべし!
サラは、小悪魔じゃありませんよ~。今は、仔猫ですもん!
学院を目の前にして、ちょっと浮かれていたのかもしれません。
ごめんね、へんたいさん。調子に乗りすぎました。
「ああ、もう至福のひとときだったよ、仔猫ちゃんっ!
やはり、ウチの子にならないかねっ、不自由はさせないよっ!!」
「うみゃっ!」
興奮したへんたいさんに、ぎゅっと抱きしめられました。
苦しいよ、へんたいさんっ!
「・・・人が走り回って、許可貰ってきたというのに、何をやっているんですか」
「おお、エド!よく戻った。仔猫ちゃんがお待ちかねだぞ」
わーい、エドさんっ! お帰りなさい!待っていましたよ!!
改めて、へんたいさんからエドさんに抱っこしてもらい、すりすりして、ようやく安心しました。
これで、なんの心配もない気がする!
うん、サラは無敵状態ですっ!
「サラちゃん、ノルベルト殿下に何したの? 連れて帰る気マンマンだよ、あの人」
え、いや、暇だったから、ちょっとお願いをしていただけですよ?
なんにも悪いことしていませんよー。
「サラちゃんはね、可愛いんだから。無闇にスリスリしないようにね。でないと拐われるよ?」
エドさんの「可愛い」は、多分に優しさから来ている気がするけど。
お義兄ちゃま達にも、知らない人についていっちゃダメって言われてたので、あんまりスリスリしないようにしますね。
「それと、ノルベルト殿下で、遊んじゃダメっ! いいね、サラちゃんっ!」
遊んでなんかいませんよー。サラは甘甘攻撃しただけだもーん。
・・・わかってますよう。
だって、つまんなかったんだもん。遊んでくれるのへんたいさんだけだし。
あ、お花を猫パンチしても遊びましたよ。
お花はへんたいさんにあげましたけど。
「無意識で、翻弄しているなぁ。こりゃ末恐ろしいお嬢さんだね。」
エドさんが、くすくす笑いながら、頭を撫で撫でしてくれます。ほんろーって何ですか?
末恐ろしいは、さっき、へんたいさんにも言われましたよ。
「それじゃ、行こうか」
小さい花壇を横切って、植え込みの影にある小さな扉をそっと開けます。
さあ、もう、ここからは王立学院です。
ここまで、読んでいただいて、ありがとうございます!
小悪魔ちゃん、降臨。
うーん、殿下は踏みとどまりましたが、こんな攻撃をされたら、堕ちます(笑
さあ、お姉ちゃまを探しましょうっ!




