12. 仔猫は、王宮で出会う?
子守のエドさん、更に面倒ごとを背負い込みます。
サラは、まあ、叱られて下さい(笑
「にあっにぃあっ! にゅあぁぁぁぁん!!」
”何かあったら、一生懸命、叫びなさい!”ってエドさんに言われた通り、鳴いてみた。
エドさーん、サラはここなの~!!
バキバキと植木をなぎ倒す物凄い音と、「あー、クソっ!邪魔だこの木!」と叫ぶ声がします。
もしかして、まっすぐ来ようとして王宮の庭、破壊していませんか?
音がだんだん近くになってきました。
そして、
「サラちゃんっ!」
うえぇぇーーーん、エドさぁぁーーーんだあっ! 怖かったよぉ~!!
へんたいさんに捕まってしまったんですー! どおしよーー!!
「・・・ノルベルト殿下、また、あんたですかー?」
「おお、エドか、久しぶりだな。 ベルはどうした」
うぇ、エドさん、知っている人ですか? へんたいさんではないの??
エドさんは、嫌そうな顔をして体中についた木端を叩き落としながら、ズカズカとこちらへ歩いてきます。
「もー、サラちゃん、返し下さい! こんなに鳴く子じゃないんですよ、何をしたんですか!」
「おや、この迷い仔猫も、お前の管轄か。ずるいぞ、エドお前ばかり可愛い子を集めて!」
へんたいさんから、サラを取り上げて抱っこしてくれました。うわーん、エドさん!
へんたいさんは不満そうです。へんたいさんってば、前にも浚ったりしたんですか!?
「集めているワケじゃありません! ベルは詰め所にいます。前に殿下に気に入られたい貴族がベルを狙ったりしていたんで、王宮までは連れて来ていませんよ」
「はぁ、強欲貴族どもが余計なことをしたせいで、私はベルに会いにいけなくなったんだぞ。たまには、会わせてくれ!」
ベルさんが、狙われているのは、王子さまへの献上品にするためだったんだ。なんだか、別世界の話。
ベルさんなら、あるのかなー?って思うけど。
・・・あれ、へんたいさんって、王子さま?
うーん、なんだか、よくわかんない。
うんうん、唸りながらも考えていたら、エドさんのなでなでする手がとまって、エドさんのこわーい声が降ってきた。
「まあ、その件は、後でいいとして、・・・
こらっ、サラ! 勝手に離れたらダメだって言っただろうっ!」
う、うぇっ!エドさん、怒っているよう・・・。
「みぅぅ・・・『だって・・・』」
「不満そうにしても、ダメ! 近くから離れるんじゃないって、言ったよな?」
「にゅあぁぁぁぁ~ん・・・『だって、だって、嫌なのぉ・・・』」
「サーラっ!」
「みぃっ『はぁい』」
「俺は、ダメって言ったぞ?」
「みぅ『うぅ』」
「言いつけはちゃんと、守りなさいっ! いいねっ!!」
「なぉん『はぁい』」
「もー、本当に心配したんだからなっ! めっ!」
「にぃぅぅぅぅ・・・『ごめんなさぁぁい』」
ううう、怒られたよう。エドさん抱っこして目の前で怒るんだもんっ!
逃げられなくて、腕の中でちっさくなるしかないよぉ。
「さすが、警備隊の動物マイスター! そのうち、どこかの魔獣でも飼いならしそうだな。」
「だから、飼いならしていませんって! ・・・なんで魔獣まで?!」
パチパチと拍手をするへんたいさん(王子様)に、ムッとしながらエドさんが答える。
もしかして、結構仲良しさんなのかな?
「しかし、ここまで意思疎通ができていると、羨ましいな。どれ、私にも抱っこさせてくれっ!」
「ノルベルト殿下、意味がわかりません。ついでに、抱っこはダメです。サラちゃんがまた逃げたら困りますからね。」
う、サラは、もう逃げたりしませんよー。エドさんに叱られたし、へんたいさん、追いかけてきたら怖いし。とりあえず、へんたいさんに抱っこをされるのは、イヤなので、エドさんにくっついておきます!
一生懸命にくっついていたら、エドさんが、背中をなでなでしてくれました。
えへへ♪ もう怒っていないんだー。
「円滑な意思疎通は、まずコミュニケーションからだと聞いたぞ! 私に仔猫とコミュニケーションをとらせろっ!!」
「・・・嫌われたら、意思疎通以前の問題だと思いますけど?」
あ、なんか、へんたいさんが、落ち込んでいる。難しいこと言っているけれど、仲良くしたいってこと?
「何故だっ! 私はこの溢れんばかりの愛で接しているのにっ!
どうして、いつも犬も猫も私になつかないんだあっ!!」
「あー、たぶん、そういうところがダメなんだと思いますよ~」
エドさん、半分投げやりですけど、きっぱりと言いますね。
エドさん、エドさん、閉じ込めないんなら、サラはへんたいさんとお友達になってもいいですよ?
あれ、エドさんの顔が怖いです。
サラ、なんか変な事をいいましたか?!
「・・・殿下、あんた、仔猫に一体、何を言ったんですかっーーー!!」
さっきサラが叱られたより、何倍もおっきい声で、へんたいさんは、エドさんに叱られていました。
愉快な仲間追加ですー。
もう少し、王子様なんだから、丁寧に扱おうよ・・・と、少し思う(笑